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84 プリンの歌

「プ・プ・プ、プリン♪ たまごのプリン♪」


 予想通り、肩の上ではコパン作詞作曲のプリンの歌が絶好調だ。


「コパンはプリンは食べた事があるの?」

「ありません! でもおいしそうです!」

「そうだね。どんな味だと思う?」

「……材料に卵とお砂糖がありました。牛乳も。だからきっと甘くておいしいのだと思います!」


 すごい。ちゃんと材料チェックしている。

 あ、でもそうだよね。食べたいって付箋貼っていたのは収納であまり使われていないものが多かった。本当にしっかりチェックをしているんだな。


「すごいなぁ、コパンて。さすが『お助け妖精』だよ」

「うふふふ、でもすごいのはアラタ様ですよ。不思議な【アイテム】の魔法を使って色々なものを作れるのですから! 今日は良い事があるような気がします」


 肩の上で嬉しそうにそう言うコパンに、俺は噴き出しそうになりながら「そうだね」って答えた。

 こんなに期待をされているんだもの、なんとしてもプリンを成功させたいよね。

 とりあえず、今日は進めそうな所まで行って、拠点に戻ったらプリン型を作ろう。

 それにしても俺はどうしてもっとデザートの本を買っておかなかったんだろうなぁ。でもまさか異世界に来て魔法でデザートを作る事になるなんて思ってもみなかったもんなぁ。

 キャンプ料理にはあんまりスイーツってないんだよね。あっても鉄板で出来るクレープ系のものくらいでさ。

 もう一度今まではあまり見ていなかったけど、スイーツ系に絞って本を見直してみようかな。

 そんな事を考えていたら、肩の上のコパンが少しだけ緊張したように立ち上がった。


「…………アラタ様、この奥から水の音がします」

「水?」


 水と聞いて思い出すのはサハギンだ。

 川魚も色々獲れたけど、やっぱり水っていうとサハギンを思い出す。


「またサハギンがいるかな」

「分かりませんが、もしサハギンだとしたら、今度は<はぐれ>ではないと思います」

「あ~~~~」

 

 俺は思わずがっかりした声を出していた。

 そうだよね。あれはイレギュラーだったから一匹だけだったんだ。二足歩行の半魚人が沢山現れたら、そしてそれぞれにあの銛を持っていたら、それは中々面倒だ。

 勿論あの時と比べて、使える魔法も増えたし、応用も利くようになったと思うけど、絶対に勝てるという自信があるかと言われれば分からないとしか答えようがないのだ。

 沢山の半魚人。う~ん。見た目はシュールな感じだね。


「う~~~~ん。川だったら川魚はもう獲っているしなあ。かといってこんな森の中に海があるわけはないし」


 考える基準が新しい食材になっている事に気づいて、俺は思わず苦笑してしまった。


「今日はもう少し進んで拠点に戻ってプリン型を作る予定だったしなぁ」


 そう言うと、コパンがハッとしたような表情を浮かべた。


「! そうですね! そうでした! ではこのまま進みましょう!」


 潔い切り替えだ! でも何かありそうと思う度に森に入っていたら、この『神気(低)』のエリアではまともに進めなくなる可能性がある。

 なんたって道を逸れると高確率で魔物に遭遇する気がするんだ。

 自分自身での確認のために繰り返すけど、俺がしたいのはスローライフであって、冒険者でもなければ、殺られるか殺るかみたいなサバイバル的な生活でもない。

 あくまでも今後の事を考えるために、この世界の街というものを見てみたい。だから進んでいる。


「よし、前に進もう」


 そう決めた途端、森の中がザワザワとした感じがして、道に自分では身を守る術のない小さな動物達が飛び出してきた。


「…………マジか、強制参加かよ」


 もしかしてこのエリアって、俺は魔物ホイホイ的な感じ?

 神気が強いから、ある程度魔力の強い奴らには敵認定される感じなのか? いやいやそれはおかしいよね。

 自分の仮説にウンザリとしていると本日の対戦相手が見えてきた。


「え? サハギンじゃない……」


 思わずこぼれ落ちた言葉と共に、俺は全力で逃げ出したくなっていた。

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ご覧いただきありがとうございます。

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ストックがなくなるまでは0時・12時の2回更新でいきます!


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