8 え?
いつまでも座って話をしていては日が暮れてしまう。
俺達は歩きながら、この世界の事や魔法の事、そして疑問点のすり合わせのような事もしてみた。
この身体はやっぱり女神が修復? したらしく、この世界の成人にあたる十五歳の設定になっているらしい。
未成年だと制限があったり、保証人のようなものが必要になったりする事もあるから、この方が色々と都合がいいらしい。ちなみになんで成人したてなのかと言えば、多少物事を知らなくても、成人したてだからなぁで済んでしまうからなんだそうだ。
うん。まぁどこの世界でもそんなものなのかもしれないな。
「魔法は使っているうちにだんだん上手くなっていきます。それに時々ご褒美みたいにグンッて伸びる事があります!」
「ああ、レベルアップ?」
「そうです! それです!」
『お助け妖精』は俺の肩の上にいる。ご機嫌だ。
どうやら妖精にはお助けポイントのようなものがあって、一定数貯まるとレベルがアップするらしい。そしてそれは俺にも同じようなものがあって、使える力が増えるらしいけれど、詳しくは上がってから分かるとか。
ちなみに『お助け妖精』は俺の知る絵本の中の妖精のように飛ぶ事もできるけれど、長時間飛び続ける事は出来ないそうで、ここにも俺の気配を辿って妖精の道のようなものを使ってきたんだとか。
でもその道はいわゆるどこにでも繋がっているものではなく、存在している道を使うから誤差というか、時差というか、そういった事が起きてしまうと言っていた。
もっと高位の妖精なら道を作り出す事も可能だけど、自分は出来ないってちょっとしょんぼりしていた。
「本当はアラタ様と一緒にこの世界に降りてこられたら良かったのですが、担当決めがあって出遅れたんです」
あ~、手違いとやらが大事故っぽくて、後が詰まっているとかポロリと言っていたもんなぁ。
「言っていません! 私はそんな事は言っていないです!」
俺の肩に乗ってブンブンと首を横に振る『お助け妖精』。
「あれ? もしかして俺の考えている事が分かるの?」
「全部ではないですが、頭の中に流れ込んでくる事があります。大事な事はそうなると女神様が言っていました」
「ふ~ん。そうなんだ。大事な事ねぇ」
よほど手違いの事故はなかった事にしたいらしいな。
「違います、『不幸な事故』です!」
その必死な様子がおかしくて、先程までの悲壮感はどこかになくなっていた。とりあえず、誰かと話が出来るというのは精神的に安定するものなんだな。そんな事を考えながら、俺はさすがに腹が減ってきたなと感じた。
歩きながら「あれは食べられます!」と言われていくつかの実をつまんだけれど、それで腹が満たされるわけではなかった。
「それで、街にはどれくらいで着くんだろう?」
出来れば今日中に着くところにあったらいいな。軽くそう尋ねると「え?」という声が返ってきた。
「え?」
俺は立ち止まって肩の上の『お助け妖精』を見た。
『お助け妖精』も俺の事をじっと見ている。何となく嫌な予感がする。先に口を開いたのは『お助け妖精』だった。
「アラタ様の望みはあの本のような事になっていたので、しばらくはこの森で暮らす事なります」
「!! なんだって?」
「わぁー! 落ち、落ちます、落ちますよ~~~」
俺は慌てて肩の上の小さな妖精を支えた。
「ああああ、ごめん。でも、街があるんだよね? さっきそう言っていたよね?」
「はい」
「じゃあどうして森で暮らさないといけないんだ?」
俺の問いかけに『お助け妖精』はおずおずと話し出した。
「えっと、えっと、ここは女神様の森なので、どの国に行くにも多分一か月くらいはかかります」
「…………は?」
「ここは『深層の森』という世界の真ん中に位置している所なので、普通の人は入れないのです。だからあの本のような生活にはピッタリ…………はわわわわわ」
フリーズしたような俺を見て、再び『お助け妖精』の目がグルグルと渦を巻いた。
「じゃあ、本当にここでサバイバルをするのか? 本気で……」
これはちょっと、致命傷じゃないか?
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