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74 前に進む事にした②

 とりあえず道の端は森に近いから、道の真ん中にババーンと出来たてホヤホヤのレジャーシートを広げて、アルミのテーブルを出して、そこに食べ物を並べる。なんとなく拠点よりもピクニック感が出るね。



「じゃじゃーん! 昨日の角煮を挟んでみました~♪ いただきま~す」


 男飯の本をパラパラしていたら載っていたんだよね。割包(グァパオ)に挟んである角煮の写真。これ自体の作り方はなかったんだけど何とか出来てしまいました! やっぱりレベルを上げていくって大事なんだね。

 写真見て、食べた事ある、こんな感じって思ったら出来たもん。まぁ材料がほとんど揃っているし、パン焼きはスキルにもなっているからね。


「面白い形です。はんばーがーとはまたちょっと違って、この白いパンがもちもちします!」


 コパンがなんだか料理のレポーターみたいになってきたよ。でも結構おいしいな。あ、夕飯でなくてもこれもお供えしておこう。


 アルミテーブルは使っているからどうしようって思ったけど、ふと思いついて木を使って【模倣】をした。同じようなテーブルが出来た!

 すごいなレベルアップした【模倣】! ちょっと色々考えてみよう。せっかく【工芸】も取得したんだし。


「コパンの作るスムージーもおいしいね」

「今日はブドウとイチゴです!」

「うん。いいね。果物は色々見つけたもんね」

「はい、使っていないものが結構あります。これとか、これとか……」


 そう言ってコパンがマルベリーなどの実をテーブルの上にいくつか取り出すと、森の中から先程の野ネズミがチョロチョロと寄ってきた。


「うわ!」

「わぁぁぁあ! 駄目ですよ!」


 小さなネズミたちは転がった実を掴んでサァーッと森の中に帰っていった。


「あはははは! 可愛いけど野生の動物を餌付けするのはなんとなく駄目な気がするから、やっぱり道でピクニックはなしだね」

「そうですね。……あ、でもアラタ様、ほら」


 チョロチョロと出てきたネズミが二人の前にポトリと何かを落とした。


「うん?」

「アラタ様! それ、ミスリルです!」

「………………え?」


 聞いた事がある。読んでいたラノベに出てきた、ものすごく高価でレアな金属だったはずだ。でもなんで野ネズミが俺にミスリルをくれるわけ?


「……食べ物のお礼?」


 この世界の野ネズミって、お礼とか出来ちゃうわけ? え? 恩返し? か、笠地蔵的な?

 すると森の中から「ヂュ~~~~~~~!!」という声がしてミスリルを渡してきたネズミが俺に飛びついてきた。


「ななななななな」

「離しなさい! アラタ様に何をするのですか!」

「チュ、チュチュチュチュ~ッ!!」

「コパン! 何か言っているのかな」

「わ、分かりませんけど、あっちの森にワイルドボアが出てきています!」

「…………た、助けてって事?」


 声をかけた途端、ネズミは俺から離れて森の中に向かっていく。


「どうなってんの? このエリアの動物って!」

「分かりません! でも、ボアのお肉は美味しいです!」


 うん。そうだね。コパンはほんとにブレないな。

 俺たちはものすごい勢いでピクニックセットを収納に入れて、ネズミに導かれるように森の中に入った。



   ◆ ◆ ◆

 


「チュ~~~! チュチュチュー」


 俺とコパンは七頭ほど出てきたワイルドボアをサクッと片付けた。一頭結構でかいのがいて、それはビッグボアっていう魔物だそうだ。もっともやる事は変わらなかったけどね。

 俺が『ウォーターチェイン』で縛って、コパンが『ウィンドカッター』頭を切る。ボアは血抜きの速さが味に出るので時間停止のある収納だけど、その場で【解体】もした。

 レベルが上がってくると解体作業の中に、血抜きも精肉も入ってくるから助かるね。だってどうしても一連作業だからさ。一頭だけ結構でかいのがいたから、それからはまぁまぁな大きさの魔石が出たよ。

 どうやらものすごい叫び声を上げていたのは先程マルベリーの実を持って行った子ネズミのようで、目の前に返してきた。俺は思わず苦笑してしまった。


「いや、いいよ。これはあげるよ。ボアも狩れたし、ミスリルももらったしね」


 っていうか、俺、普通にネズミになに話しているんだよ。と思ったら飛びついてきた多分大人のネズミがさっきよりもでかいミスリルを他のネズミたちに運ばせてきた。

 なんだろう。なんかさ、異世界からいきなり『日本昔話』になった気分だよ。

 そんな事を思っていたら、コパンがハッとしたような声を出した。


「アラタ様、このネズミは土精霊の加護を持っていますね」

「加護? というか、精霊?」

「ええ、この世界は妖精もいれば精霊もいます。もちろん女神様も」

「ああ、うん。それで?」

「話が出来るかもしれません」

「……そ、そうなんだ」


 ちょっと頭が痛くなってきたような気がしている俺の前で、コパンは加護を持っているというネズミと話し始めた。


「あの大きなビッグボアに巣を壊されて困っていたそうです。神気を感じて道に出て良かったと言っています」

「道に神気があるんじゃないのか?」

「アラタ様は女神様がお作りになっているので、もっと大きな神気と感じたのかもしれませんね。ミスリルはお礼で、もっと欲しければご案内をすると言っています」

「………………」

「ミスリルは貴重なものなので、採れるなら採っておきたいところですね」

「……うん。まぁ、これをちまちま【補充】していくのは厳しいよね」


 俺はそう言ってコパンの拳よりも小さなそれを見た。


「あと、ベリーを少し譲ってくれると嬉しいとも」


 ちゃっかりしているその言葉に俺は思わず噴き出してしまった。


「本当は前に進む日だったんだけどね。まぁ、せっかくの出会いだ。行ってみようか、コパン」

「はい。では先程の道をマッピングします!」


 こうして俺たちは小さなネズミに案内されて、森の中に入っていった。



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