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62 お祝いと実りの秋の森

 【補充】があるから食材は困っているわけではないけれど、それでもやっぱり新しいものに出会うと嬉しい気持ちはある。ここ最近一番嬉しかった発見は<玉ねぎ>だ。

 いや、玉ねぎってさ、結構使い勝手がいい野菜なんだなって思ったよ。

 だって、炒め物にしてもカレーにしても揚げ物にしても、あとちょっと酢漬けにしてもいいんだよ。

 女神の贈り物でカレールーをもらったから、さっそく作ってみたんだけど玉ねぎがあるのとないのではやっぱり違うんだよね。

 さっきコパンが言っていたナポリタンも玉ねぎが入ると全然違ったよ。


「アラタ様、夕ご飯はポテトフライとオニオンフライも食べたいです! からあげも!」

「あはははは、分かったよ。お祝いだものね」


 うん。揚げ物メインになりそうだけど、まぁ毎日じゃないから良しとしよう。

 【レシピ登録】は作り方を少し変えて更新も出来る。なかなか使い勝手がいいスキルだ。


「はい、ナポリタン」

「わぁ! ありがとうございます。うふふふ粉チーズもかけます」

「はい。どうぞ」


 コパンはケチャップ味のナポリタンスパゲッティに粉チーズを振りかけて「いただきます!」と美味しそうに食べ始めた。

 本当に女神の贈り物のお陰で俺たちの食事は大進化だよ。なので、時々は「おすそわけです」ってお供えをしているんだ。いつもいつの間にか消えているから、受け取ってもらえているんだと思う。


 安定した味になってきたナポリタンと爽やかなアイスレモネードの昼食後は生活魔法の『クリーン』と『プットバック』でさっと後始末をして、俺たちはのんびりと近くの林の中の探索を始めた。


「何かあるといいですねぇ」

「そうだねぇ」


 後は足りないもの、というか、欲しいのはお米と綿だ。お米はやっぱりあったら嬉しい。一応母さんの作り置きがご褒美ボックスになっていて、それも【補充】出来るから不定期ではあるけれど、ご飯を食べられる事もある。だけどやっぱり炊き立てのご飯を食べたいなぁっていう気持ちもあるんだ。

 飯盒はキャンプセットの中に入っていて、キャンプの本には飯盒を使った炊き方も書かれていたから、見つかればなんとかなると思う。


「あ、なんか【鑑定】に引っかかっているな」

「え? どこですか?」


 俺とコパンの【鑑定】には少し差がある。多分この森の中は俺のいた所にあったような食べ物が存在していて、コパンにはそれが分からないんだよね。例えばコンニャク芋とか、自然薯とか、岩塩とか。


「栗だ!」

「クリ……ですか? え? こんなトゲトゲの針みたいなのが食べられるんですか?」

「このイガっていう針みたいな中に木の実が入っているんだ。とりあえずこのまま収納に放り込んでおこう」


 コパンは久しぶりに少しだけグルグルの目になっていたけれど、それでも毬栗(いがぐり)を収納していった。


「なんかあの葉っぱは見た事あるぞ。あ、やっぱりサツマイモだ! すごいな、ここだけ実りの秋だ」

「こ、この葉っぱも食べるんですか?」

「ちがうよ、コパン。これはジャガイモみたいに中に埋まっているんだよ。ほら!」


 ズルリと蔓を引っ張ると結構大きな赤紫色の芋が土の中から現れた。


「わぁぁぁぁぁ! すごいです!」

「甘くて美味しい芋だよ。とりあえず収納しておいて、どこかで少し干してから改めて収納しよう。その方が甘みが増すんだって聞いた事がある」

「甘いお芋……」

「焼き芋にすると美味しい」

「! 焼き芋食べたいです!」


 俺たちは子供みたいに夢中で芋掘りをして、栗拾いをして、キノコも沢山採った。キノコはもちろん【鑑定】頼りだよ。


「はぁ~……のんびりって言っていたのに、ついムキになっちゃったな」

「そうですね。でも面白かったです。アラタ様の世界には美味しいものが沢山あったのですね。この世界にはなかったものも沢山あります」

「うん。いた時には気付かなかったけれど、本当に豊かな所だったんだよね」


 俺はそう言って小さく笑った。気付くのはかなり遅かったけれど、それでもこうして気づく事が出来て良かった。

 今の所かなり『食』に傾倒しているけれどね。


「そろそろ戻ろう。ふふふふ、お互いに泥だらけだ。クリーンをして夕食にしよう。揚げ物を沢山作るからね」

「はい!」


 荷物は全て収納なので、俺とコパンは来た時と同じようにのんびりとテントのある原っぱに向かって歩いていく。

 肩の上のコパンが「からあげの歌」にオニオンフライとポテトフライを足した特別バージョンをご機嫌で口ずさんでいた。


「か・ら・あ・げ♪ オニオン、ポテトのフライ~♪」


 滲むように赤く染まっていく空。


「ああ、綺麗だな。夕焼け」

「そうですね。転移をしても良かったんだって思ったけど、この空を見られたなら歩いた方が正解でした」

「確かに!」


 俺たちはかまどに火を入れて、夕食の準備を始めた。

 揚げ物はもう【アイテム】魔法の《調理》に入っているし、【レシピ登録】もされているから魔法におまかせだ。

 どうしようかなって思ったけど、やっぱり食べたくなって掘りたてのサツマイモとブナシメジなどのキノコの味噌汁を作った。だし入り味噌は本当に有能だね! 焼き芋はまた今度。もっとも主食はご飯でなくパンなんだけどさ。


「では、コパンのレベルアップをお祝いして。いただきます」

「ありがとうございます! いただきます!」


 思いがけずに手に入れた秋の実りに感謝して、次はやっぱりお米かなと思いつつ、アルミテーブルの上に置いたお供えはいつも通り、いつの間にか消えていた。




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ご覧いただきありがとうございます。

ストックがなくなるまでは0時・12時の2回更新でいきます!


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