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6 お助け妖精

 ええっと……やっぱり夢を見ているのかもしれないなって思った。

 頭の中でそう思った筈なのに、目の前の自称『お助け妖精』は楽しそうに「夢じゃないですよ」って笑った。


「では、こんなところでなんですが、説明をさせていただきます」


 片手に乗ってしまうハムスターくらいの『お助け妖精』はそう言ってぺこりと頭を下げた。


「少し遠いので、とりあえず座っていただけますか?」

「あ、ああ」


 言われて渋々土の上に腰を下ろす。少し近くなった『お助け妖精』は三、四歳の子供をそのまま小さくしたような感じで、妖精といってもよく絵本などで見る羽が生えているわけではなく、本当にミニチュアの保育園児みたいだった。

 栗色の髪とパステルブルーの瞳。服は少し短めのドレスみたいな感じだけど、女の子ではないように見える。もっとも妖精には性別などないのかもしれないけれど。


「まずは、私はこの世界の女神様から遣わされたアラタ様の『お助け妖精』です」

「はぁ……」

「アラタ様は今までいらした世界で手違……『不幸な事故』に巻き込まれてお亡くなりになりました」


 亡くなったというかなり衝撃的な情報があったけれど、それよりも何よりも俺が気になったのは……


「今、手違いって言いかけましたよね?」


 思わず敬語で問い返すと『お助け妖精』はものすごい勢いで首を横に振った。


「言っていません。ほんとです。『不幸な事故』です。女神様はそれを悲しみ、アラタ様の願いを叶えるべく、この世界に転生をさせ、私を遣わしました」

「俺の願い? っていうか転生? 転生って言った?」

「はい、言いました。アラタ様は転生をして、この世界に生まれ変わったのです」


 にっこりと笑う、ミニチュア幼児。もとい『お助け妖精』


「俺は死んで、転生をした? 異世界転生? マジ?」


 これは喜んでいいの? それとも悲しむべきなの? っていうか俺の願いを叶うべくって、俺はこんな森の中で遭難したいなんて一度も願った事はないぞ。

 そう思っていると『お助け妖精』は何かを探すようにキョロキョロとして「ええっと、こちらです!」


 ポンという音が付くような感じで目の前に現れたのは……


 『初めてのキャンプ。ソロもファミリーもこれでおまかせ!』

 『サバイバル読本 これであなたも生き残る』

 『自給自足をはじめよう』

 『美味しいキャンプ飯』


 俺のデイパックの中に入っている筈の本だった。


「え、えええええええええ!」

「アラタ様はこういうものがお好きなのだろうと女神様がおっしゃっていました」

「ちょ、ちょっと待って、お好きって……あのさ、普通は白い部屋とかで女神様とやらから説明されて、特別な力とか、加護みたいなものとかをもらえたりするんじゃないの? それが森の中に棄てられて遭難寸前って何?」


 俺の剣幕に『お助け妖精』は焦ったような怯えたような顔をしてから「起きなかったのです」と言った。


「え?」

「その…………アラタ様は『不幸な事故』の影響で、転生してからもなかなか目覚めず、女神様は次の処理……お約束があったため、私に説明をしてお助けするようにと言いました」

「…………次の処理って言ったよね。相当大きな事故だったのかな? 手違いで起きたのは」

「言っていません。後がつかえ……お約束があったのです」


 うんうん。後がつかえていたんだね。

 ようするに俺は、女神様が手違えで起こした事故に巻き込まれて異世界に転生して、更に、テンプレになっている白い部屋で話を聞くという事を端折(はしょ)られて、持っていた本を参考にここに送り込まれたと……


「俺に、ここで、なんの装備もなく、キャンプやサバイバル生活や農業をしろと?」

「や、やりたかったんですよね?」

「やった事もない、サバイバル&自給自足生活を? 異世界で?」

「はわわわわわわわわ」


 小さな『お助け妖精』の目が漫画のようにぐるぐると渦を巻いているように見えた。


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