55 コカトリス
コカトリスは雄鶏が生んだ卵をヘビが孵化させたと言われている魔物なんだって。なんだか色々ややこしいな。
見た目は大きくて凶悪な雄鶏だが、しっぽがあり、そのしっぽにヘビの頭がついている。
しかもその蛇と目があうと石化の呪いをかけられる、らしい。出来れば会いたくなかったし、なんなら戦略的撤退をしたいけれど、コパンは戦う気満々で、どうやら俺もなんだかその気になってきている。
「アラタ様、あの大きさだとどれくらいの<からあげ>になるでしょうね」
「さ、さぁ……少なくとも一日で食べられる量じゃないと思うよ」
「うふふふふ、後で【アイテム】の本を見せてくださいね。他にも鳥のお料理があったような気がするんです」
「…………そ、そうだね」
出来るなら油淋鶏とかも美味しそうだよね。ああ、まずい本当に食欲魔法ってヤバいな。いや本当はそんなものはないけどさ。でもなんとなくそういう気持ちになるんだよ。水族館マグロ効果みたいな。
でもそれもこれも倒してからの話だ。
最初に撃った『ウォーターカッター』は見事にニワトリ、もとい、コカトリスの正面に当たったけれど、致命傷にはならなかった。けれどここで引いてしまうとあのくちばしでつつかれたり、ヘビ頭に石にされてしまいそうなので、俺はそのまま『ウォーターカッター』を連打して、今にも突っ込んできそうなやつらの前に『アースウォール』を出した。土壁によって奴らの姿は見えなくなるけれど、その分石化されるリスクも下がる。
「草原だから火を使うのはやっぱり怖いよな」
「でも『ファイヤーボール』は当たれば他へは燃え移りませんよ」
「うん、だけど逸れたら面倒だろう?」
「では今朝のように私が『トルネード』を使って、今度は巻き上げてみましょう。上の方で回転を止めればそのまま落ちてきますから、そこをスパッと」
「……スパッとね」
「はい、スパッと。大丈夫です、四頭しかいませんから勝てる筈です。それに多少多めに切れてしまってもどうせ解体してしまいますからね! 気になりません♪」
コパンはそう言って、奇声を発しながら土壁を飛び越えてこようとするコカトリス達を空に向かって巻き上げた。
「ケェェェェェェェェェェ!!」
どうやら土壁をさんざん蹴りつけたりしていたのだろう。崩れた土壁と一緒に大きな鳥がグルグルと空に舞い上がっていく。そして風が唐突に止んで、空中から落ちてくる四羽の食材、もとい、コカトリスたち。
それに向かって俺はコパンの作戦通りに再度『ウォーターカッター』を繰り出した。
「お見事です!」
コパンは嬉しそうに飛び跳ねて、草原の中で動かなくなったコカトリス達に近づいて行った。
「アラタ様はここでちょっと待っていてくださいね。大丈夫だと思いますが、万が一ヘビの方が生きていると困るので私が見てきます!」
フヨフヨと飛んでいくコパンの方から聞こえてくるのは今朝エンドレスで聞いた「からあげの歌」だ。俺の『お助け妖精』は本当に可愛くて気が抜けるよ……
「アラタ様~! 大丈夫ですよ~。出来そうなら《解体》していただいてもいいですか?」
こうして俺たちは大きなニワトリ、のような魔物、コカトリスを見事にゲットした。
なんだか今日は大量の食材確保の日だった。
《解体》だけをして、とりあえずコパンと手分けをして収納した。コカトリスの魔石はまずまずの大きさだった。ちなみにヘビの方は鑑定によると毒消しの薬になるらしい。石化の呪いをかけるのに、素材としては毒消しになるって不思議だなって思ったよ。
◆◆◆
「魔力は大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思うけど、少し疲れたかな」
精神的に。
「では昨日の拠点までマッピングで帰りましょう」
「うん。よろしくね」
「おまかせあれ~!」
こんな風に次々に食材を手に入れて、出てきた魔物も頭数が少なければ問題なく倒せて、俺は『神気(中)』でもやっていかれそうな気がしていた。
戦えそうなら戦って、レベルを上げていけば森の外側である『神気(弱)』に行く頃には何とかなっているかもしれないって。
もしもハイウルフのように数が多くて無理だと判断すればコパンのマッピング転移で逃げればいい。
素材を手に入れながら、レベルを上げて、スキルを増やして……ゆっくりと安心して暮らせるように、自分の生活を守るために力をつけていく。こうして魔法の練習と実戦を重ねていけばどうにかなる。
そんな風に思い始めていたんだ。
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