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53 鳥、ゲット!

「からあげ! か・ら・あ・げ! からあげ~♪」


 コパン作詞作曲の「からあげの歌」が途切れる事なく続いている。

 色々な事をしたけれど、なんとなく休日のようになった昨日。『神気(中)』に入って六日目の朝はすっきりとした気持ちで始まった。

 朝のルーティーンとして魔力操作をやってみませんか? と提案されて、身体の中で魔力を感じてそれをゆっくりと動かしていくという、基本を行う事にしたんだ。魔力も少しずつ上がってきて、自分の中にあるそれが分かるようになってきたから動かす事もそれほど難しくはないんじゃないかって。

 これを繰り返していくと魔法の発動が早く、正確になってくるらしい。もちろん個人差はあるけどさ。わずか十分足らずの繰り返しで強くなれるならやってみようかなって思ったよ。

 何となく前向きになっている自分に少し驚いた。


 そして朝食は焼きたてパンとバナナジュースとコパンのリクエストで再びのフライドポテト。うん、気に入ったんだね。でも油ものだから気をつけようね。まぁ、妖精にカロリーは関係ないのかもしれないけれど。


 そして片づけをして、テントとかまどもインベントリにしまって、この場をしっかりマッピングして、出発、しようと思ったら飛んでいたんだよ。鳥が。


 その瞬間コパンの目がカッと見開いた。


「鳥です!」

「う、うん。そうだね。でもだいぶ高いよ」


 十数羽の小さな群れだ。なんだろう。カモかな。カモは燻製が美味しい。もちろんローストも。ああ、嫌だなぁ……飛んでいる鳥を見て美味しそうって思うような日がくるなんて。

 なんかさ、水族館に行って水槽の中を「美味しそう」って見ていた友人を思い出したよ。


「大丈夫です。小さなトルネード(竜巻)で落とします」

「そ、そう」

「落ちてきたらすぐにウォーターカッターで仕留めてください」

「わ、分かった」


 なんていうのかなぁ、食べ物って時として人を、じゃない、妖精を変えてしまうんだな。

 コパンは俺の肩を離れてフヨフヨと飛びながらカモ(仮)の下あたりまで行って、言っていた通りに小さなトルネード(竜巻)を起こした。そうして慌てて逃げようとするカモ(仮)の群れを一気に巻き込んだ。


 グルグルと渦の中を回転しながら落ちてくるカモ(仮)。俺は言われた通りに地面に落ちたそれに向かってウィンドカッターを撃って絶命させる。うん。見事な連携プレーだよね。食欲連携。

 こうして拠点を出る前に、俺たちは今夜のおかずをゲットしたのである。

 鑑定の結果カモ(仮)は<マガモ>だった。とても美味しいらしい。とりあえず時間経過がないのでそのまま収納行きとなっている。


「運が良いですね、アラタ様。昨日言っていた鶏肉が今日さっそく手に入るなんて。うふふふふ、からあげ、楽しみです」

「うん。そうだね。コパンのお陰だね」

「アラタ様の『ウィンドカッター』もとても精度が上がりました。今朝の魔力操作を続けていけばもっと早くて強力になっていきますよ」

「うん。頑張るよ」

「はい! 頑張りましょう」


 そうして少しするとまた「からあげの歌」が始まって、俺は思わず噴き出してしまった。


「アラタ様?」

「ああ、うん。いい歌だなって。からあげへの期待がものすごく込められている」

「はい! アラタ様が作るお料理は皆美味しいので! お醤油もお味噌も最初は本当に食べられるのかなって思ったけど、お味噌のお鍋も美味しかったです! あ、あとコンニャクの味噌田楽も!

「ああ、確かにあれは美味しかった。自給自足の本は結構不思議な事が載っているな」


 蕎麦打ちとか、コンニャク芋から作るコンニャクだとか、手作り味噌とか。もちろん畑の作り方とか種まきや植え付けの注意なども載っている。

 もっとも今のところこちらの方は使う事はないけれど、いずれ本当にどこかでスローライフを送るなら必要になってくるだろう。


(たまき)の言ったとおりに畑仕事も必要だったな」

「アラタ様?」

「何でもないよ。今日は他にも新しい素材が見つかるといいな」

「そうですね。とりあえず欲しいのは綿とお砂糖ですね」

「そうだね」


 こうして俺たちは前へ前へと足を進める。昼くらいまで道を進み、拠点になりそうな場所がないのでとりあえずは今日は昨日の場所にマッピングで戻って、今日進んだ所へ戻る事になりそうだなって二人で話をした。


「では午後は森の中を探索しましょう」

「ああ、そうしよう」

「何があるか楽しみですね! 良いものが見つかりますように!」

 

 そう言って笑うコパンに、俺もコクリと頷いた。



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ご覧いただきありがとうございます。

第二章が終わるまでは0時・12時・18時の3回更新でいきます!


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