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52 先送りにしていた色々をする日 2

黒曜石でペットボトル型の入れ物を作って鍋に入れていた醤油と油を移した。やっぱり容器に入っているって何となくホッとする。となるとそのまま入れている味噌も気になってタッパーを探すけどさすがにない。う~ん。

 というかガラスのタッパーというのも……でも容器としてはアリだな。そういう容器もあるよ。ご褒美ボックスでタッパーに入ったものが出てくればそれを【模倣】してみよう。本当はそのまま【模倣】出来たらいいんだけど、塩化ビニールなのかなぁ。プラスチック? とにかくそういった素材のもとは今のところない。


「とりあえず黒曜石は切らしちゃだめだ。忘れずに【補充】しよう。なんなら採取してもいいな。それとペットボトルも無くさないようにインベントリに入れておこう。あとは……あ、主原料だけなら黒曜石だけでなく水晶でもいけるのか? たしか正倉院の宝物で日本最古のガラス製品は水晶と鉛だったような記憶が……。インベントリに鉛が含有している石もあったような気がするぞ。ああ、でも食べ物に鉛ってどうなんだっけ?」


 ああ、コパンが言う通りなんだか楽しい。戦いとか、サバイバルとか、キャンプとか、魔法とか、自分の中で色々ないっぱいになり始めていたのかな。


「本当だ。コパンが言う通りになんだかすごく楽しい。出来る事が増えるっていいな。考える事もね。沢山考えてこれからもっと暮らしやすくなっていくようにしよう」

「はい! アラタ様の言っていた、<からあげ>も楽しみです!」

「うん。そうだね。どこかに食べられる鳥がいたら捕まえよう」

「分かりました! その時はおまかせあれ~!」


 色々なものの【補充】とガラス製ボトルを作ったら、次は昼食だ。


「さて、何を食べようかな」


 どこかで見た雑穀もとっておけばよかったのかな。雑穀粥みたいにはなったのかもしれないし、小麦に混ぜたら田舎パンみたいなのも作れたのかもしれない。

 アイテムに書かれていたのと同じようにと考えていたけれど、パン焼きとか煮るとか焼くとかそういった基本的な事がスキルになっているなら、それを生かして何かを作り出していく事だって出来る筈だよね。


「どうしてそこに気が回らなかったのかな」


 醤油のごり押しとかは、やっちゃったのにな。


「あ、うどんは小麦だから出来るかも。製麺とかって載ってなかったっけ?」


 パラパラと『自給自足生活をはじめよう』をめくると手作り蕎麦が載っていた。うん。製麺としては同じだよね。それほど大きくは変わらないだろう。そば粉が小麦粉になるくらい? 多分醤油みたいなゴリ押しじゃないから大丈夫!


「製麺、うどん作製!」


 俺は手打ち蕎麦のページを開いて、小麦粉を前にそう言った。一瞬だけ遅れてピカッと本が光って、少し細めのうどんが出来ていた。


「アラタ様、これはなんですか?」

「これはうどんだよ。出汁は、そうだな、イノシシ肉を入れて、ああ、山菜も入れてみようか。味付けは醤油。食べ終わったら夕食のおかずになるように燻製肉も作っておこうね」

「はい!」


 アイテムには煮込みうどんみたいなものはなかったからとりあえず、うどんを茹でて、肉で出汁をとって醤油で味付け。山菜は採りたてと同じ状態だからそのまま茹でただけで汁の中へ。茹でたうどんも入れて山菜うどんの出来上がりだ。そのうちに天ぷらうどんとかも作ろう。タケノコの天ぷらとか、あ、ヒメマスの天ぷらとかも美味しそう。そうだ! パンがあるからパン粉が作れるかも。そうしたらフライとかも出来るのかな。やった事ないけど。


 再びスマホがピロンと鳴った。


「うん?」


 開くとステータス画面の中にNEWの文字が見えた。


「レシピ登録? え、もしかして自分で考えたレシピが登録出来るの?」


 それって同じものがスキルを使って出来るって事? 


「有能すぎる……」


 思わずガクリと脱力した俺に、コパンが慌てて近づいてきた。


「大丈夫ですか? アラタ様、魔力が少なくなってきましたか?」

「ああ、違うよ、大丈夫。どうやら【アイテム】を頼らずに作った料理はスキルのレシピ登録っていうのに登録してもらえるみたい。だからほら『レシピ、山菜うどん』」


 そう言うとあっという間に先程俺が作ったうどんが出てきた。


「わわわわわわ! すごいです!」

「うん。これも女神に感謝だね。またお供えをしておこう」

「はい!」

「じゃあ、食べようか。いただきます」

「いただきます!」


 初めて作ったうどんはまずまずの味だった。レシピがあるのでついついお代わりをしてしまったよ。


「うどん、美味しいです!」


 うん。幸せそうに食べる『お助け妖精』を見ていると幸せな気持ちになれるね。

 さて、夕食の時間まではまだ間があるし、《燻製》は【アイテム】魔法の方のスキルがあってすぐに出来そうだから、その前に魔法の練習でもしようかな。

 風魔法をコパンと一緒に飛ばせるようになったら、カッコいいかもしれないな。

 風魔法の事をコパン先生に聞いてみよう。

 感謝のお供えは、また気づかないうちに消えていた。


 そしてその翌日、今までどうして取れなかったのか分からないとでもいうように、俺は風属性を取得した。

 使えるようになったのは『ウィンドシールド』。風の防御壁だ。コパンが攻撃だけでなく、守る魔法もとっていきましょうって言ったからだ。


 少しずつ進んでいく道。 

 少しずつ増えていく魔法。

 そして少しずつ豊かになっていく生活。

 なんだか嬉しくなっていた。

 このまま出来る事を増やしていけばいいんだって。

 そうしてこの世界を見て、これからどうしたいのかコパンと一緒に決めていこうって。

 きっとそれが出来るって、だから頑張っていこうってストンって胸の中に落ちた。


「ねぇ、コパン」

「はい、どうしたんですか、アラタ様」


 テントの中でシュラフに入りながら俺はコパンの名前を呼んだ。


「『神気(中)』に入って、俺やっぱり緊張していたみたいだ」

「………………」

「でも今日みたいな日があって、良かった」

「アラタ様が良かったって思えたなら良かったです! うどんも美味しかったです。あ、あとフライドポテトも!」


 そう。夕食にフライドポテトを作ったんだ。ジャガイモと塩と油があるならテッパンだよね。なんだか【アイテム】ばかり探していたけれど、俺にも出来る事ちゃんとあるって。レシピも登録出来たから材料さえなくならなければいつでも作れるよ。


「レシピも思い出しながら増やしていこう。子供の頃はさ、母さんと一緒に料理をした事もあるんだよ」

「すごいです! 楽しみです!」


 そう言ってくれるコパンがいてくれて本当に良かったな。


「おやすみ、コパン。明日はさ、バナナのジュースが飲みたいな」

「分かりました! おまかせあれ~~~!」


 こうして先送りにしていた色々をする日が終わった。



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ご覧いただきありがとうございます。

第二章が終わるまでは0時・12時・18時の3回更新でいきます!


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