51 先送りにしていた色々をする日 1
そうと決まればサクッとテントを出して、サクッとかまど兼焚火も出した。
「じゃあまずは足りないものを『補充』しちゃおう」
「よろしくお願いします!」
俺は小麦と蜂蜜を【補充】した。
そして久しぶりにあの触感が食べたくなってアイスプラントも【補充】した。
塩が見つかってアイスプラントで塩気を取る事がなくなったから、なんとなく出番がなくなっていたけれど、アイスプラントはそのままサラダとして生で食べられる食材だ。この前ロメインレタスをゲットしたので、サラダで食べよう。こうなるとドレッシングも欲しくなってくるな。
食の向上はこういう欲が原動力になるんだよね。
そのうちにトマトやキュウリとかもみつかるといいなぁ。肉と魚というタンパク質は確保したけれど、やっぱり野菜も大事だよね。
「そのうちに卵とか見つかればマヨネーズも出来るのかなぁ。あ、でもそうなると酢かぁ。う~んビネガーとかワインの酸っぱくなったやつだよね。とすればブドウからワインビネガーが出来るのかな。う~~~ん。果実酢の作り方なんて見た覚えがないなぁ。それっぽい記述とか写真がないかなぁ」
俺がぶつぶつと思いつく事を呟いていると、コパンがクスクスと笑い出した。
「うん?」
「すみません。でもなんだかそういうアラタ様が久しぶりだったから。何が出来るかなとか、こんなのどうかなって考えているアラタ様が一番楽しそうです!」
「…………ああ、うん。そうだね。そうかもしれない」
最初は食べるものがなくて、道端の木の実や草の実を口にして、飲み物は半分くらい残っていたペットボトルの中身くらいで……
それから随分と変わってきたな。怖い思いもしたけれど、嬉しい事も沢山あった。
「ああ、そういえばウォーターが使えるようになってから、このペットボトルも出番がないな。綺麗にして何か液体のものを入れておくのもいいよな。ちょっと小さいけど。というかこれと同じようなものが出来たらいいのにな」
醤油は鍋に入れて収納している。でも本当はこういう蓋つきのものに入れたいんだよね。
「プラスチックの材料は難しいけど、何か出来ないかな。石とかで出来るかな。ガラス……ガラスの原材料ってなんだっけ?」
ああ、こういう時に小説の中の主人公たちって驚くような知識を持っていたりするんだよね。何かに特化したりさ。でも俺は専門的な知識はほとんどない。もっと勉強をしておけばよかったなぁ。でもなんでも百均とかで揃っちゃう世界で、自分で何かを作ろうなんて思わなかったもんな。
あれ? でも……。
「ねぇコパン石の中にさ、黒曜石ってなかったっけ?」
「コクヨウセキですか? ちょっと待ってくださいね」
コパンは自分の収納の中を確認しはじめた。俺もインベントリに放り込んでいたものを確認する。
「あった! 確かこれが古代でガラスとして使われていたものだ」
うん。世界史で見た気がする。
これが、この形になってくれたら……
その瞬間、頭の中に【模倣】って浮かんだ。それをそのまま繰り返す、すると持っていた黒曜石が光り、ペットボトルの形に変わった。
「マジか!」
ピロンとスマホがなる。見ると【模倣】のレベルが2になっていて、基本の材料があれば手にしたものの形や素材を真似る事が出来ると注釈が添えられるようになっている。
「コパン! 基本の材料があれば真似る事が出来るって! 出来るかな、じゃあ、じゃあ! 綿とかあったら、洋服が出来るかな!」
だってクリーンがあっても気になっていたんだよ! いくら綺麗でさっぱりしても一カ月以上着替えなしだよ! クリーンは『洗浄魔法』だからさ、綺麗にはなってもちょっとほつれてきたり、ちょっとすれてきたりっていう劣化までは対応出来ない感じだったんだよね。
それに今はいいけど、もしもこれから寒い季節になったらどうしようって考えたりもしていたんだ。
俺はこのスキルを伸ばしていく! 絶対に!
「新しいお洋服が欲しかったのですか?」
コパンが不思議そうな顔をして尋ねてきた。
「うん」
「私と同じようなものでしたらご用意できますよ」
「同じようなもの?」
俺は思わずコパンを見た。
うん。短めのドレスみたいなストンとした服だね。足、スース―しちゃうよね。
ていうか、この世界の成人したての男がどんな格好をしているのかは分からないけど、多分そういうワンピース型ではないと思うんだよ。多分…………
「ありがとう。でも俺、ズボンがないと駄目で。着慣れた形の方がいいな」
「そうですか」
ちょっぴり残念そうなコパンに胸の中で謝って、俺の次の目標が決まった。
砂糖も欲しいけど、綿だ。小麦があったんだ。きっと綿もどこかにある。羊がいたら羊毛をもらうというのもありかもしれない。その頃にはアイテムの中の写真からの【模倣】が出来るようになっていたらいいな!
俺の頭の中であの四冊が、カタログ冊子みたいになっていた。
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