50 そういえば……
『神気(中)』に入って五日目。
俺たちは少しずつ前へと進みながらこの辺りの情報を集めていた。
コパンが言っていた通り、一定の間隔で安心して夜が過ごせる場所がある。もしかしたらセーフティーゾーンみたいに神気が高くて魔物たちが来られないようになっているのかもしれない。
なので、次のセーフティーゾーンば見つかるまでは拠点はそのままで、その日進んだ位置をマッピングして拠点に戻って、翌日はマッピングしたところから次の拠点になる場所を探しつつ前へと進むという行きつ戻りつを繰り返しながら進んでいる。効率は悪いかもしれないけれど、安全第一だ。
「そういえばさ、道で魔物に遭遇をしたことはないね」
肩にコパンを載せて歩きながら俺は今更ながら気づいた事を口にした。
「ああ、そうですね。でもアラタ様、道にテントを作るというのも……」
うん、そうだよね。道といっても基本的には森の中の遊歩道みたいなものだ。どこかの大通りのような幅などない。
歩くためにならされているけれどテントを広げてかまどを作ってなどはちょっとね。
それに魔物はこないかもしれないけれど、それだって確定ではないし、普通の獣は通る事が出来るかもしれない。しかもここは『神気(中)』だしさ。大体本当に俺達だけしかいないのかっていうのも確定ではない。
「うん。道の真ん中にテントを広げるような事はやめておくよ」
「そうですね。それよりも守られている場所を堅実に探して進む方がいいと思います。魔法の練習も続けていきましょうね」
「はい」
魔法、魔法かぁ……
俺は歩きながらスマホを出してステイタスの画面を眺めた。
総合はLv5のままだ。職業も安定して旅人。魔法も全体的にはLv4で、生活魔法は変わりなし。
属性魔法の火属性は『ファイヤーボール』だけじゃ心もとないからってコパンが言っていた相手の足元から火が出てくる『フレイム』っていうのを取得した。
そして水属性も『ウォーターカッター』だけでなく『ウォーターアロー』っていう少し離れたところに居る奴にも有効な水の矢を覚えた。まだ完全に扱えていないけど、一応矢は飛ぶんだ。後はコントロールの問題だ。
そして土系は『アースウォール』と『フォール』の他に『ストーンバレット』という石礫を出せるようになった。
だけどなぜか風属性がうまくいかないんだよな。
コパンは風属性が一番扱いやすいみたいだから、俺が取らなくてもっていう気持ちがあるのかもしれない。でも風属性があると雷とかが落とせるらしい。
イメージは有名なアニメの黄色いネズミだな。攻撃の強化を考えるといいなって思うんだけどね。
「コパン、『予見』で何か引っかかりそうなところはある?」
「う~ん、そうですねぇ。今のところは良いものも悪いものもないですね」
このエリアで魔物が出てきたのは初日と翌日。続けて出たからちょっと焦った。本当に毎日戦いながら進んでいかないと駄目なのかって。
でもそこからは今のところ魔物には遭遇していない。もっとも新しい素材にも遭遇していない。なんとなく道を逸れる気持ちになれないというのもある。
あ、そう言えば気になっている特殊スキルもあるんだけどよく分からなくて試していないんだよね。
特殊スキル
サバイバル Lv4 自給自足 Lv5
キャンプ Lv4 鑑定 Lv4(複数条件抽出可)
体力Lv3 補充Lv3 模倣Lv1《New!》
空間収納(インベントリ付き)
これだ。このNewがついている【模倣】
一体何が出来るのか、Lv1だと内容が記載されないんだよね。模倣っていうんだから何かを真似るような事ができるんじゃないかなって思うんだけど。これでコパンの風魔法を真似ようと思っても出来なかったんだ。魔法じゃなくて物理的なものなのかな。
「あ! アラタ様! この先に拠点になりそうな所があります!」
そう言うとコパンは俺の肩からフヨフヨと前方に飛んで行った。
その後ろ姿を追いながら、俺もなんとなく小走りになる。
辿り着いたそこは広い原っぱに木陰になりそうな木がポツポツと生えている穏やかな空間だった。後方に森はあるけれど、嫌な感じはない。
「うん。いい感じだね。じゃあ、今夜の拠点はここにしよう」
「はい。ではどうしましょうか。少し先に進んで森の中に入ってみますか?」
「うん。それもいいんだけど、なんかやっぱりこれが気になってさ」
スマホの画面を出すとコパンが覗き込んできた。
「ああ、新しいスキルですね。そういえばちゃんと試していませんでしたね。では魔法の練習がてらスキルの使い方を考える日にしましょう。あと、小麦が少なくなってきたので『補充』をお願いします。あと、蜂蜜も」
「分かった。じゃあ早いけどテントを立てて拠点つくりをしちゃおう。昼食もとらないとね、あ、時間があるから《燻製》もしちゃおうか! 【補充】も出来るけど他のも試してみたいし!」
「はい! 思いついた事を全部まるっとやってしまいましょう! あ、魔力が少なくなってきたら駄目ですからね」
こうして俺たちは、先送りにしていた色々をする事を決めた。うん。こういう日があってもいいよね!
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