45 挑戦! 味噌と醤油
念願の塩が手に入ったので、俺とコパンは味噌と醤油作りに挑戦する事にした。
味噌はまだいい。自給自足の本に作り方が載っているから、材料の『市販の麹』が無くてもなんとかなりそうな気がするんだ。
問題は醤油だよ。普通は醤油を作ろうなんて思わないから、どこにも載っていない。
でも醤油の写真や醤油を使った料理はある。
「うーん、さすがに醤油の写真と料理だけじゃ無理がありすぎるかなー。でもなー」
先に味噌が出来れば麹の作り方は多分【アイテム】魔法に組み込まれる筈だ。もちろん味噌の麹と醤油の麹は違うと思うけど、ここはゴリ押しで。
「アラタ様、やっぱり難しそうですか?」
本を前に唸っている俺を見て、コパンが心配そうに尋ねてきた。
「あー、うん。味噌はいけると思うんだけど、醤油は少しの無理じゃなくて、かなり無理だよなって。でもなんとかなって欲しい気持ちが大きくて」
小学生の時の社会科見学で醤油工場に行った事はある。でも当たり前だけど、詳しい作り方なんて覚えていない。
ガラス越しでもものすごい匂いだった。ただ材料に大豆だけでなく炒った小麦を使うのは意外だったせいか記憶に残っていた。あとは確かもろみというのを作るっていうのもうっすらと……
「書いておくか」
俺は醤油が写っているページに『材料は大豆、小麦、塩』と持っていたペンで書き込み、『+醤油麹 → もろみ作り → 搾る』と続け、あとは分からないので『仕上げ』とした。
なんかよく分からないけど、圧迫? して絞った後、何かをしていたような気がするんだよ。見学の後で作り方のレポートも書いた筈なのになぁ。
「よし、とりあえず、味噌だ」
俺は大豆と塩を揃えて『自給自足生活をはじめよう』の自家製味噌のページを開き、「味噌作製」と口にした。
手にしていた本がピカッと光った。
◆◆◆
「み、味噌だ! 出来た! コパン、味噌が出来たよ!」
「………………お、おめでとう、ございます」
俺のテンションとは異なり、コパンの顔は引きつっていた。
「…………味噌というのは食べ物なのですよね?」
「そうだよ。ああ、慣れない人には匂いが駄目なのかも。でも美味しいんだよ」
「いえ、匂いではなく…………と、とりあえず、こちらはどうぞアラタ様のインベントリに。多分アラタ様にしか使えないと思うので」
「ああ、うん。そうだね。わぁ、何にしようかな~。味噌汁かなぁ。後で味噌を使った料理を調べなおそう」
俺はうきうきとしながら作り立ての味噌を収納した。
「よし、次は醤油だ」
醤油が出来れば作れる料理も増える。
「お願いします!」
先程書き込みをした『美味しいキャンプ飯』を拝むようにして、俺は「醤油作製」と声を上げた。けれど、光らない。やっぱり無理なのか? でも味噌の麹は出来たじゃないか。だから少しの無理ではないって分かっているけど、なんとか醤油の麹も作ってくれ! 醤油、醤油、小麦は確か炒ったんだ。あともろみは布みたいなのにしみこませて圧をかけていた。それからそれから……
「あ、仕上げで火入れをして、ろ過するんだ!」
その瞬間本がピカッと光って用意しておいた鍋の中には醤油が出来ていた。コパンがムンクの絵みたいな顔をしている。
「…………ど、泥ですか?」
「違うよ、これが醤油だよ。すごい、本当に出来た! ありがとうございます!」
グルグルの目になって遠巻きになっているコパンに苦笑するとピロンとスマホが鳴った。
見ると「かなり無理をしました」というメッセージがきていた。
「す、すみません。何か作ってお供えします」
とりあえず、醤油があるなら…………
「あ、ホーンラビットの肉で生姜焼きなんてどうかな。これなら【アイテム】じゃなくても作れるぞ」
醤油は鍋のまま収納した。そのうちガラスのような材料があったら瓶を作りたいな。お酒がないから隠し味ですりおろしみたいにしたリンゴでも入れようかな。
こうして昼食は思いがけずにしっかりとした食事になった。フライパンで焼いたパンに生姜焼きの肉を挟んでみた。
「美味しいです!」
はじめは暗い表情を浮かべていたコパンだったけど、焼けた醤油の匂いに少し復活。そして目を瞑って生姜焼きサンドを食べた途端、カッと漫画みたいに目が開いた。噴き出しそうになったよ。気に入ってもらえてよかった。
ちなみにアルミのテーブルに『感謝のお供え』として置いた生姜焼きサンドとリンゴ蜂蜜ジュースは、気付いたら消えていて、その日俺は久しぶりにレベルアップをしていた。
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谷河内 新 十五歳 転生者
総合Lv5
職業 旅人
魔法 Lv4
生活魔法 『クリーン』『ウォーター』
『ファイヤー』『プットバック』
属性魔法 火 『ファイヤーボール』
水 『ウォーターカッター』
土 『アースウォール』『フォール』
生存能力 35
称号 芋掘り名人 タケノコ採り名人
鉱石採取見習い
フライパンのパン焼き職人 料理人
特殊スキル
サバイバル Lv4 自給自足 Lv5
キャンプ Lv4 鑑定 Lv4(複数条件抽出可)
体力Lv3 補充Lv3 模倣Lv1《New!》
空間収納(インベントリ付き)
【特殊アイテム】 Lv5(※ 多少無理がきく )
『初めてのキャンプ。ソロもファミリーもこれでおまかせ!』
『サバイバル読本 これであなたも生き残る』
『自給自足生活をはじめよう』
『美味しいキャンプ飯』
他・テント作製 ・焚火、かまど作製
・収穫 ・製粉
・酵母作り ・解体 ・精肉 ・燻製
・麹作り ・醤油・大豆作り
言語理解
女神の贈り物 キャンプセット
ご褒美シークレットボックス
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