40 塩を求めて
キラーマンティスと戦ってから一週間。特に大きな出来事は無いまま、俺とコパンは道を進んでいた。
時折コパンが「役立つ物がありそうです」とか、「こちらは近づかないようにしましょう」というような事を教えてくれて、俺は素直にそれに従う。虫はもうごめんだから、その気配があったらやめてほしいって言ったら、幼い子供に向ける「仕方ないなぁ」っていうような表情を浮かべられてしまった。
でもここで芋虫系とかナメクジ系とか、最悪でかいGとかがきたら絶対に無理だから! 倒す前に俺、本気で死ぬから!
というわけで、虫の気配がないらしい場所で見つかった『役に立つもの』はなんと大豆だった!
小麦みたいに草原の一画にわさわさと生えていたんだ。さすが女神の森! それが一昨日の事だ。
その後、俺は四冊の本を本気で舐めるように眺めた。デイパックの中に使いかけの付箋があったからベタベタ貼った。何だか前の世界を思い出したよ。
結果、味噌の作り方はざっくりと載っていた。麹がよく分からないし、塩がないんだけど、ここは(少し無理がきく)に期待をしたいところだ。
さすがに醤油の作り方は載っていなかった。でも! 醤油の写真や、醤油を使ったキャンプ料理は沢山載っていたから、これもゴリ押しでなんとかならないか、もう少ししたら賭けに出ようと思っている。
現状塩気がアイスプラント一択だから、なんとか! なんとかなってほしい!!
◆ ◆ ◆
いつ味噌作りに挑戦しようか。味噌が出来たら味噌汁を作ろう。イノシシ鍋もいいかもしれない。夢は膨らむ。
ちなみにこの前、Lv4になったご褒美はブリ大根だった! 魚なんて本当に久しぶりでどこかに川か湖があったら釣りが出来ないかなって思ったよ。でも元の世界でも釣りなんてした事がないし、この世界の事だから水系の魔物とか出てきたら厄介だよね。
「アラタ様、何か心配事ですか?」
肩の上に乗りながらコパンが尋ねてきた。ちなみに大きくなっても重さはほとんどないんだ。妖精って不思議だな。
「ああ、いや、その、大豆の使い道というか、塩がなくても何とかならないかなって」
「塩がないと難しいのですか?」
「とりあえず材料の中に塩は書かれていたよ」
「そうですか……なんとか塩が見つかればいいのですが、あのお塩の草では足らないのですよね」
「そうだね。足らないなぁ。それにアイスプラントを入れたら違うものになってしまいそうだしね」
というか、何が出来るのか分からない。
「塩、どこかにないかな、塩、う~~~~ん。」
眉間に縦皺を作って考える幼児の姿はすごく可愛いと思う。
「なんとなく……あっちの方に行くと、何かがありそうな感じなんですが、森の中に入って行く事になりますし、この道を結構逸れてしまいます。どこかでマッピングをしてから逸れる方がいいと思います。それに……」
「それに?」
「あちらの方は少し早めに神気が弱まってくるようです。少しですが。この道を行く方が緩やかに神気が少なくなっていくみたいです」
「……と、いう事は、あっちの森の方に逸れると今よりも強い魔物が出てくる可能性があるって事かな」
「はっきりとそうとは言えませんが、その可能性はあります」
コパンは塩があると断言はしていない。何かがありそうという状況だ。そしてあちらの方はここよりも神気が薄くなる。
「森の外周よりはまだ神気が濃いんだよね」
「それはもう、全然違うと思います。そうですねぇ、キラーマンティス位のものが出始めるという感じだから、今のアラタ様には問題ないと思いますよ」
おかしいな。ニッコリ笑う『お助け妖精』の無邪気な笑みが少しだけ黒く感じるのはなんだろう。
「アラタ様、私は黒くないです」
「あ、はい」
重要事項として聞こえちゃったのか~。
「もう少し進んでテントが張れそうな場所があったらそこをマッピングしよう。それで神気『中』の方に向かってみようか。どうせこの道を進んでも神気『中』エリアには入って行くんだよね?」
「はい、おそらく三、四日の違いです」
「よし! じゃあコパンの『予見』に賭けてみよう。マッピングしておけばこの道に戻れるし」
「そうですね! そうしましょう!」
そして俺たちは二十分ほど歩いて、テントが張れそうな場所をみつけてマッピングすると道を逸れて森の中に入っていった。
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