一章終章記念 SS ファーストコンタクト
私は『お助け妖精』の「コパン」。
「コパン」っていうのはアラタ様がつけてくれた私の名前だ。
<仲間>って言う意味があるんだって。
多分アラタ様は知らないのだろうけど、妖精にとっての名前は特別だ。
名前を認める事で私はアラタ様と一緒に生きる事になる。アラタ様がいなくなったら私は深い眠りに入る。そうして再び巡り会えるのを待つんだ。でもそれでいいと思った。
だって、私とアラタ様は<仲間>だから。
こんなに素敵な方のお助け妖精になって、私は世界一の幸せ者だって思ったよ。
「コパン」って呼ばれるたびに、胸の中がホカホカと温かくなって、嬉しい気持ちが湧き出してくるんだ。
アラタ様のお助け妖精になれて良かった。私はそう思いながら出会った時の事を思い出していた。
◆ ◆ ◆
私はこの世界の女神様から『お助け妖精』となるために呼び起こされた小さな妖精だった。
「お前、この者の『お助け妖精』となって仕えなさい」
「はい……え……あの、女神様。この方は赤ちゃんには見えませんが」
そう。『お助け妖精』は、違う世界から生まれ変わった者たちが、この世界に自然に馴染めるように助けると同時に、この世界の秩序を乱さないよう、驚異となる存在にならないように監視をする役目も持っている。
『お助け妖精』として呼び起こされた妖精はどんなに小さくても、きちんとそれを理解しているんだ。
だから新しい命として生まれ落ちたその時から、ずっとずっと、仕える者に寄り添って自分も力を上げていく。
だけど……
「この者は前世で手違いがあって巻き込まれた。ああ、違う。あれは『不幸な事故』だったのです。その為、元の世界からはじき出されて戻れなくなってしまいました」
「そんな事が!」
「時おりそのような存在があります。はじき出された魂は新たに生まれ変わりが出来ません。なのでこの器を元にして私が創り、こちらへ転生をさせました」
難しい事はよく分からなかったけれど、とにかくこの方も転生をした方で、『お助け妖精』が必要な人なのです。しかも手違い……ではなくて、『不幸な事故』に巻き込まれて赤ちゃんから始める事が出来なかった。
「分かりました。この方の『お助け妖精』として精一杯努めます」
「よく言ってくれました。ではこの者への説明もお願いしますね。本来であれば気づいたこの者と話をし、何かの加護を与えるのですが、普通の転生と異なる為か目を覚まさない。そこでこの者が持っていたこれらで特別な力とスキルを授けました。ただ」
「ただ?」
「よく分からないものが多かったので、これが持っていたもう一つの本に近い、私の管理する世界に転生をさせる事にしました」
そう。女神様はいくつかの異なる世界を持っていらっしゃるんだ。その中の一つにこの方を下ろすと決めているらしい。
「初めから成人しており、色々と苦労をかけると思いますが、よろしくお願いしますね。私は不幸な事故の後始末……いえ、この後の予定がつまって……んんん、やらなければならない事があるので頼みましたよ。互いに信頼出来るような良き『お助け妖精』となりなさい」
「はい。頑張ります」
私はこうしてヤゴウチアラタ様の『お助け妖精』になった。
どうやらアラタ様は普通の転生と違う事と、成人をしている事でなかなか『お助け妖精』が決まらなかったのだと後から分かった。『不幸な事故』があったのはアラタ様のせいではないのにかわいそうだ。
「はずれをひかされた」と揶揄う仲間たちに「そんな事はありません!」と言って私は女神様の元を飛び立ちました。すでにアラタ様は女神様の世界にある『深層の森』に下りているのです。急がなければなりません。
「誰か返事を、返事をしてくれ!」
泣き出しそうな声が聞こえてきて、私はアラタ様の前で大きな声で「はーい!」と返事をしました。『お助け妖精』はどの方に仕えるのか、初めて会ってもちゃんと分るのです。赤ちゃんではないけれど、この方が私のお仕えする方です。
びっくりしてキョロキョロしているアラタ様に私はもう一度返事をしました。
「はーい! ここです! やっと追いつきました!」
しっかりと向けられた顔。うん。赤ちゃんじゃなくても最初から顔を合わせてお話が出来るなんて素敵だよね。
「ヤゴウチアラタ様ですね? はじめまして! 『お助け妖精』です!」
これが私とアラタ様のファーストコンタクトのお話。
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一章終了です。
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