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33 復活と収納整理

 翌朝、目を覚ますとすぐにコパンから声がかかった。


「アラタ様!おはようございます。ご気分はいかがですか?」

「ありがとう。大丈夫だよ」

「良かったです。魔力も戻っているみたいですね。でも無理をしないでいきましょう。では、結界を解除しますね」


 その途端、膜のような何かがサァ―ッと消えて、ここ数日寝泊まりをしていた場所が目の前に現れた。


「アラタ様、とりあえず椅子とお鍋を出していただけますか? かまどは新しく小さなものを作ったので、今回はこれでお芋でも茹でましょう」

 

 う~ん、すごい。まだ出会って六日目だというのに、コパンの経験値がものすごく上がっている。さすが『お助け妖精』だ。それにアイテムの本も結構覗いて見ているんだよな。あのスムージーとかさ。


「あ、そうだ、コパン。ご褒美があるからそれにしようか。今日は何かを採りにいかないで、収納の中にあるものを確認したり、残りの小麦でパンを焼いたりして、前に進むのは明日にするのはどうかな」


 はじめの頃は食べるものがひっ迫していたから、結構なんでもかんでも集めていたけど、いくらコパンの収納が有能でもやっぱり何がどれくらいあるのかを把握しておく事は必要だよな。それに……


「解体もあるしね……」

「分かりました! ではそのようにいたしましょう。今までの感じだと【アイテム】を使った魔法はそれほど多くの魔力を必要としていないような気がするので、ちょうど良いかもしれません」


 にっこりと笑ったコパンに俺は「じゃあ、まずはご褒美が何か開いてみよう」とインベントリを開いた。


   ◆ ◆ ◆


「……これは、なんでしょうか……赤いのは……血……」


 顔を強張らせながら、久しぶりに目をちょっとだけグルグルさせているコパンを見て、俺は思わず苦笑してしまった。

 まぁ、初めてだとそう思うのも仕方ないのかもしれないな。


「違うよ。トマトっていう少し酸味のある野菜のスープで煮込んだロールキャベツだよ」

「トマト……ロールキャベツ……」


 そう。冷凍してあってもすぐに分かった。母さんは随分手の込んだものばかりを作って持たせてくれたらしい。

 鍋の中で湯煎をしてもどしたそれはトマトスープベースのロールキャベツだった。コンソメスープベースのも好きなんだけど、この少し酸味のあるトマトスープのロールキャベツも俺の好物の一つだ。


「お肉をね、キャベツっていう野菜で包んで煮込むんだ。ほら、出来た。さあ、食べよう。ちょうどパンも焼き上がったしね」


 本当に魔法は有能だ。三分割したうちの二つ目の小麦粉を大きな鍋に取り出して、以前作った時のようにリンゴを使って天然酵母を作って、フライパンで焼く。二度目だから本を開く事なく、酵母を使ったパン生地の作製も、フライパンで焼き上げるのも材料を揃えて『天然酵母パンを作る』と言えば魔法が発動する。


 ロールキャベツをお皿に盛り付けて、パンは温かいうちに分けて、食べる分を残して収納。今日のジュースはブドウだ。


 コパンは恐る恐るロールキャベツに挑戦をする。まだ十七、八センチくらいなので、小さく切り分けてやっても結構な大きさになるのが可愛い。


「!! おいしいです!」

「それなら良かった」

「アラタ様のお母様はお料理の天才です! お料理の魔法使いですか?」

「ははははは、俺のいたところは魔法はないんだよ」

「そうでした! では魔法がなくてもこんなに美味しいものが作れるなんてすごいです!」

「うん。そうだね。本当にすごい。有難かったね」


 こうして離れて、二度と会えなくなってから分かる有難さだ。


「キャベツをみつけましょう! トマトも!」


 口の周りを赤くして、嬉しそうにそう言うコパンに「そうだね」と頷いて、俺もロールキャベツにかじりついた。


 ◆ ◆ ◆


 朝食を食べてから俺達は予定通りに収納の整理をした。

 山芋は思っていたよりも採っていた。タケノコもまだ何本もあるから、また豪快に焼いてもいいかもしれない。ジャガイモは結構減っていた。キノコは採ったまま手つかずだ。やはり調味料がほしいな。

 小麦は製粉してあるものとまだ実のままのものがあったので、全て粉にして保管をしておく事にした。とりあえずまた時間を見つけて収穫をしてこようと思う。

 細かいグミのような実は小腹がすいた時にでも口にしようかな。

 果物はリンゴ、バナナ、オレンジがやはり使いやすく数が減ってきている。アボガドは見つけた数が少なかったからもうあまりない。これらは見つけた時に採っておいてもいいかもしれないな。

 反対にゼンマイやイタドリなどの山菜はほとんで使っていない。これだけで食べるのはちょっと難しいよね。本をしっかり読んで使いみちを考えなけば。


「う~ん、とりあえずはこんなところかな。あ、コンニャク芋か。うん。そのうちコンニャクにも挑戦をしてみよう。後は…………これか……」


 コパンの収納のボードに記載されている『イノシシ』と『ホーンラビット』


「うん。やるしかないか……」


 でかでかと記されている食用可の文字。

 俺は本を取り出して、該当のページを探した。


<狩猟>と<解体>


 いっそ精肉とか出来ないかなぁ……


「まずはイノシシから出しますよ」

「……おう! やるぞ、コパン。まずは《血抜き》からの《解体》だ」

「はい!」


 返事と共に目の前に1m近くあるようなイノシシが現れた。


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