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31 イノシシとウサギ(魔物)と俺の魔法

「コ、コパン、どうしたらいい?」

「ここはもう先程の『ウォーターカッター』を使って倒すしかないでしょう! 大丈夫、アラタ様なら出来ます!」


 頼むからそのキラキラした目で俺を見るのをやめてくれ。俺は徒歩圏内にコンビニやスーパーマーケットがあって、夜も普通に出歩けるような街で暮らしてきたんだ。

 間違ってもイノシシが出たり、ウサギを追いかけたりした事はないし、っていうか!


「どうしてウサギがイノシシを追いかけているんだよ!」


 まだ反対なら分かるけど、イノシシを追い回すウサギって何⁉


「だって、アラタ様、ウサギの魔物ですから」

「は……?」

「ホーンラビットは魔物です。まぁ、この辺りに出てくるような魔物なのでそんなに強いものではありません」


 いやいやいやいや、イノシシを追いかけるようなウサギのどこが弱いんだよ!


「アラタ様、こちらに気づいて向かってきます」

「に、逃げよう!」

「背中を向けて逃げたら確実に追ってきます」

「ひぃぃぃぃぃぃ」

「大丈夫です。さっきみたいにカッターを出せば、スパッと」


 スパッと何が切れちゃうのかな、コパン君! 

 別に血が駄目なわけじゃないけど、好んで生き物を殺すような趣味はないんだよ! っていうか、イノシシをスパッとは無理だって!


「火は駄目ですよ。草原ですから」

「……だよね~」

「アラタ様! きます」

「わぁぁぁぁ、やめてくれぇぇぇぇ! 『ウォーターカッターァァァァァッ!!』」


 俺は頭の中に先程の画像をよみがえらせて声を張り上げた。

 だけどさ、ものすごい勢いで走ってくるイノシシをスパッとするなんて無理なんだってば!


「はじ、はじかれた! コパン!」


 しかも弾かれたそれが後ろのウサギ(魔物)にあたって、ウサギ(魔物)は俺の事も敵認定したようだ。


「うわぁぁぁぁぁぁ! ウサギが! 角のあるウサギが飛んでくる!」

「飛んでいませんよ! ジャンプしているんです。ほらもう一度、私も『ウィンドカッター』を出しますから」


 どうせ追いかけられているんだからと俺は背を向けて走りながら必死で逃げつつ『ウォーターカッター』を繰り返した。だけど逃げながらだからほとんど当たらない。でもさ、近づいてくるイノシシは思っている以上に大きくてそんな奴の前に立って『ウォーターカッターァァッ!』なんてやっていられないって!


「無理、もう無理……無理だってば! アイテム、アイテムの中に何かないの? 」


 何か、何か見た気がする。でも本を開いている余裕なんてない。どうすればあれを止められるの? 一気に止めるにはどうしたらいいの⁉


「ブボォォォォォォ!!」


 威嚇してくるんじゃねぇよ! 


「う、う、ウォール! あ、『アースウォールゥゥゥゥゥゥ!!』」


 一瞬立ち止まって、両手を前に出して必死で叫んだ。だって俺の『ウォーターカッター』じゃ、まさしく猪突猛進といったイノシシには歯が立たないと思ったんだ。それならば自身の力でぶち当たって倒れてくれた方がマシだって。それで運が良ければ魔物ウサギも一緒にぶち当たってくれたらいい。


 ドカドカドカ……っていうものすごい音がした。どうなったのか分からないけれど、確かめるのも怖かった俺はそのままその土壁ごと「『フォール!』」って言ってでかい穴に沈めた。

 モクモクと上がる土煙。

 草原の中に開いた直径二メートルほどのでかい穴。土壁が蓋のようになったそこから這い上がってくるものはいない。


「ハ、ハ、ハ……」


 息がうまく吸えないような感じだった。心臓が破れそうになっている。

 そして俺は「すごいです!」 というコパンの声を聞きながら、意識を手放した。


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