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29 魔法は想像力と映像体験?

 朝起きて、昨日の残りのパンを少しだけ温めて、ついでにジャガイモをふかして(塩気が欲しいけど我慢)、コパンのリクエストで姫竹も茹でて、ミカンジュースという、なんともちぐはぐな感じの朝食をとってから、テントの片づけをしてふと思った。


「これさ、片付けなくてもいいんじゃないか? このままインベントリに入らないかな」


 テントを組み立てるのは【アイテム】の魔法で一瞬なんだけどさ、片付けは毎回ちょっと手間なんだよね。かまどはコパンに任せているんだけど、火の始末をきちんとしてからそのまま収納をしているのを見て、今更ながら気づいた。


「試してみてはいかがでしょうか」

「だよね」


 ニコニコ笑顔でそう言われて、コクリと頷いた。

 結果、そのまま入った。取り出しやすいように料理用品、椅子、テーブル、テント一式、これをそれぞれに入れてもインベントリのボックスの数が増えただけだった。いくつまで収納が可能なのか分からないけど、取り出しやすくなったのは良かった。ちなみに従来のものだったら入れるのにカメラ機能は必要ないんだよね。最初の登録だけ。なかなかうまく考えられている。


「便利になって手が空いた分、新しい事をすれば良いのですよ」


 見た目ちっちゃい幼児に諭される元二十一歳。まぁ今は成人したての十五歳だけど。


「そうだよね。じゃあ、今日は『ファイヤー』の練習をしてから昨日の草原に行こう」

「『ファイヤー』は気をつけなければなりませんよ。周りは森ですからね。でもアラタ様はもう『ウォーター』を取得されていますから、万が一があってもすぐに消す事が出来ます」


 いや、万が一があったら困るんですよ、コパンさん。


「繰り返しになりますが、魔法は想像力です。どんな火を出したいのか想像をする事が大事です」

「うん」


 俺が想像したのは焚火の火だ。

 パチパチと燃える赤い、温かな火。この世界で初めて見た自分で作った焚火。


「『ファイヤー』」


 だが、現実は無情で手から火は飛び出さない。

 何度やっても焚火は出来ない。


「う~ん、よく分かりませんが、焚火というのは木を燃やしたり、私たちはかまどと一体で丸太で囲ったりしているので、知らず知らずにそういうイメージがついているのかもしれません。薪とか丸太とかは『ファイヤー』で作るのは無理ですからね」


 …………付随物が多かったのか。俺は改めてカチッとボタンを押すだけで火が付くあれを想像した。 

 そして……


「えっと、『ファイヤー』は取得出来たと思います。ただ、これは本当に何かに火をつけるだけになりますね」

 

 指でっぽうの形にした人差し指の先で青っぽく燃えている火。これで熱くないのだから魔法は不思議だなって思う。もっともしばらくするとやっぱり熱くなってくるから、やめるタイミングを見極めるのが大事だ。


「『ファイヤー』もそうですけど、『ウォーター』も少しずつレベルを上げていきましょう。ああ、そうだ。アラタ様のお好きだというあの小説の中の人のように『ファイヤーボール』とか『ウォーターカッター』とかそういうものを試してみるのはどうでしょう!」

「……なるほど」


 その瞬間、頭の中にそのシーンが浮かんだ。そう言えば異世界ものの定番と言えば『ファイヤーボール』や『ウォーターカッター』だ。焚火や水鉄砲ではない。

 こう手を前にして『ファイヤーボール!』と続けて『ウォーターカッター!』とかね。そう思った途端、アニメや漫画で見たような『ファイヤーボール』が飛んでいき、ついで『ウォーターカッター』も飛び出した。


「はわわわわわ! すごいです! アラタ様はすごいです! かっこよかったです!!」

「あ、うん。えっと……具体的なアドバイスをありがとう」

「いえ、アラタ様の想像力が素晴らしかったのです! では今日も草原で何かを見つけてきましょう! 昨日何かの鳥が飛んでいたのを見たので、食べられる種類のものだったら、獲ってみるのもいいかもしれませんね」


 え? マジ? 動物性タンパク質へのフラグなの?


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ご覧いただきありがとうございます。

次の更新は7/7 0時になります。


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