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26 山芋とタケノコの里を抜けると……

「到着です!」


 あっという間に昨日の場所に到着だ。

 早速広域鑑定をしたいと思うと見慣れてきたポップアップが浮かんだ。

 『自然薯』はまだあるけれど、もう少しだけあってもいいかもしれない。いつまでここに戻れるか分からないしね。 

 でもカロリーが高いらしいから毎日食べるのは駄目って 『自給自足生活をはじめよう』に書かれていた。う~ん、ためになる。

 俺はジャガイモを多めに里芋も少しだけ在庫を増やして、竹林&笹の群生場所へ移動。大きめの孟宗竹のタケノコをいくつかと姫竹は多めにゲットした。

 さらに何か目新しいものがないかもう少し奥へと進んだ。すると森が開けて草原のような場所に出た。


「へぇ……こんな場所もあるのか。気持ちがいいな」


 風が吹いている。森の中からも、この数日歩いている道からも空は見えたけれど、木に邪魔をされない空を見るのは久しぶりだ。もっとも俺が住んでいた街は建物を視界に入れない空はなかったから、沢山の木々の間から空が見える風景なんていうのは旅行にでも行かなければ見られないようなものだったけど。


「アラタ様、視界が開けるというのは相手からも自分が良く見えるようになるという事にもなります」

「コパン?」


 聞こえてきた硬い声に俺は思わず肩の上のコパンを見た。


 コパンは俺を見て、コクリと頷いて言葉を続ける。


「覚えておいてくださいね。この辺りはそれほど危険はありませんから安心してぼんやりしていても大丈夫ですけど、先に進むとそのうちにぼんやりしていてはいけない事も出てきます」


 ああ、さっきそんな事を聞いたのに、俺の危機管理能力は平和ボケの日本のままだなって思ったよ。


「そうだね。気をつけよう。でもこの辺りはまだ大丈夫なら、何か美味しいものがないか探そうか」

「賛成です!」


 返ってきた声がいつものコパンのものだったから、俺はにっこりと笑って目の前の草原に向かって鑑定をかけた。

 うん…………食べられるものって鑑定をかけているのに、頼むから『イナゴ』とか『カエル』とか『シマヘビ』とかいうものをポップアップしないでほしい。

 森の中もきっとそういうものがあったんだろうけど、他の素材の数が多いからあんまり気にならなかったんだね。


「虫とヘビとカエルは食用としては除外」


 口に出してそう言うと視界からそれらのポップアップが消えた。

 とりあえず蛇は毒を持っているものがいるので、危険を知らせるような鑑定は残しておきたいなって都合のいい事は思った。でもそこに虫がいるって分かって進むのと何も知らずに気付かず進むのは雲泥の差があるので、知らずにいた方がいいなって思った。ヘタレだって自覚はあるけど、無理なものは無理なんだ。避けられるなら避けて、知らないでいてもいいならそれでいい。


 多少腰が引けながら俺とコパンは草原の中を歩いていく。


「う~ん。とりあえず、私の【鑑定】ではあまり大したものはありませんね」


 肩の上でそういうコパンに俺は「そうなんだ」と返してもう一度遠くを見た。近くを見て万が一余計なポップアップが出ちゃうと叫んじゃうかもしれないしさ。


「うん?」


 すると先の方に少し色が変わっているような場所があった。

 そして……


「うそ…………」


 思わず零れ落ちた声。


 こんな誰も手を入れていないような草原にこんなものがあるのはやっぱり女神の森だからなのかもしれない。


 [小麦]

 

 確かにそう書いてあった。


「アラタ様?」

「コパン、すごいよ。大発見だよ! 女神の大盤振る舞いだよ!」

「ええ!?」


 コパンはびっくりしたような声を出して、次に「もしかして、美味しいものなのですね」と嬉しそうに言った。

 その顔を見て思わず笑いが漏れた。


「うん。そうなるといいな」


 そうして虫の事もヘビの事もカエルの事も忘れて、俺はそこに向かって走り出した。



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