19 ご褒美
「鍋を置きたいからこれがいいな。コパン、こんな感じの二股になっていて、この飯盒がひっかけられるようなしっかりした枝ってあるかな」
そう。有能な俺の『お助け妖精』は食べ物も集めながらちゃんと薪になるようなものも集めていた。
「おまかせあれ~」
そう言って取り出したのはイラストと同じようなY字の枝だ。それと昨日使ってまだ使えそうな大きめの丸太、さらに大きな丸太。その他にも色々なサイズの枝が地面の上に置かれた。
「さすがだな! コパン。今日はこんな感じに作りたいと思うんだ」
「うわ~、すごいです。このお鍋でお芋を茹でるのですね! こっちの釣り下がっているお鍋は何に使うのですか?」
「うん。それがさ、今日レベルが上がったから特典の一つが解除されてね。どうやらうちの冷凍庫にあった母さんのおかずみたいなんだ。だから温めて食べられたらいいなって思って」
そうなんだ。さっきスマホを見た時、朝は開いていなかった沢山のインベントリの特典という箱の一つが、ご褒美という文字と一緒に開放されていたんだ。そしてそこにあったのはジップロックに入った冷凍をされている何か。もしかしてって思った……
「多分、俺の家の冷蔵庫に冷凍されていた母さんの作ったおかずじゃないかと思うんだ。ご褒美としか表示をされていないから中身は何かよく分からないんだけどね。コパン、もしかしてコパンのお陰なのかな。ありがとう。一緒に母さんの料理を食べよう」
俺の言葉をコパンは黙ったまま、けれど顔は真っ直ぐにこちらに向けて聞いていた。
「アラタ様のお母様が作られたお料理が無駄にならないで良かったです。やはり女神様はお優しいです」
「ああ、ちょっとだけ意地悪だけどね」
そう言うとコパンは噴き出すように笑ってから「そんな事はありません、お優しいです」と言った。俺はその目がちょっぴりグルグルになっているのを見逃さなかった。
そして俺はコパンが出してくれた材料の前で『サバイバル読本 これであなたも生き残る』の焚火の作り方のページを広げて、「バックログファイヤー型の焚火作成」と口に出して言ってみた。
本は…………ピカッと光った。
◆ ◆ ◆
結論から言うと、焚火兼かまどは見事に成功して、俺のステータスボードの特殊アイテムの項目はこんな風になっていた。
【特殊アイテム】 Lv2
『初めてのキャンプ。ソロもファミリーもこれでおまかせ!』
*P42 テントの張り方取得
『サバイバル読本 これであなたも生き残る』
*P102 食べられる植物と実、広範囲鑑定取得
*P48 焚火の仕組みと作り方、焚火作成取得
これがずっと取得したままでいられるのか、一時的なものなのかはまた検証をしていかなければならないけれど、とりあえず今の時点で俺は自分で組み立てたりしなくても材料さえあれば、焚火を作ったりテントを作ったりする事が出来るらしい。
今回作ったのは昨日も作ったログファイヤー型という二本の丸太の間で薪を燃やす、基本的な構造の焚火の応用で、二本の丸太の後ろに大きな丸太を置き、更にその丸太にY字の枝を差し掛ける事で簡易的なポットクレーンを作るというタイプだった。
「アラタ様は素晴らしいです。まだ魔法の練習もしていないのに、もう魔法が使えるようになっているなんて!」
キラキラとしているような瞳で見つめられてそう言われると、どうにもズルをしているというか、反則技を使っているというか、そんな気分になる。
というかこれは本当に魔法なのかな。これが魔法だというのなら確かに俺は魔法を使えるようになっているんだろう。けれどコパンが使うような『クリーン』は出来ないし。せっかく焚火の構造を作っても火を熾す事は出来なかった。もちろん水を出す事もだ。
「多分、これはきっとあくまでもあの【アイテム】というもののお陰なんだと思う。だからコパン、ちゃんと魔法の事を教えてくれよ」
「はい。おまかせあれ~!」
異世界転生二日目の夜。
茹でたムカゴと母さんの作ったチキンのホワイトシチューはとても美味しかった。
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