17 特殊アイテム 『サバイバル読本 これであなたも生き残る』
「うわぁぁぁ!」
「アラタ様!」
俺の叫び声にコパンの声が重なった。
手の中の本はすぐに光らなくなった。なったんだけど……
「え…………」
視界の中に沢山のポップアップが見えた。
「なななな」
「どうされましたか⁉ 大丈夫ですか? アラタ様!」
アワアワしながら俺の周りをフヨフヨと飛ぶコパンに、俺は「見える」と呟いた。
「え?」
「見えるよ、コパン! 一々手に取らなくても鑑定結果が見えるんだ! しかもちゃんと食べられるものだけになっている!」
「そ、それは素晴らしいです! 【鑑定】スキルのレベルが一気に上がったのでしょうか。やっぱりアラタ様は天才です!」
俺たちは夢中で食べられるものを集めた。だって俺が見えていなくても、ポップアップがここにあるって教えてくれるんだ。もちろん全部を採りきってしまうような事はしないよ。空間収納は時間が止まっているので、食べ頃になっているものを選んだ。
そして収穫をしながら、この森はやっぱり不思議な森で、季節が異なる実もいっぺんに生っているんだって気付いた。例えば[桑の実]は6月から7月くらいに熟すらしいけど、その先には[マテバシイ]というどんぐりが生っている。そして夏場に旬を迎える[ブルーベリー][も見つかったんだ。
それにしてもどんぐりが食べられるっていうのは少しびっくりした。
こうして[グミ][コケモモ][アケビ][サルナシ][ヤマボウシ][マルベリー][ブルーベリー][クサイチゴ][バナナ][オレンジ][リンゴ][クリ]……木の実や草の実だけでもこんなにもあった。
そしてさらに[フキノトウ]や[ウド][フキ][イタドリ][ワラビ][ゼンマイ]などの山菜や、[山芋]や[ムカゴ]などのイモ類が見つかったのはありがたかった。
「良かった。こんなに沢山のものがあるって分かったのは心強いね」
「はい。後は塩探しですね」
「ああ。でもその前に何か食べよう」
時間は午後一時に差し掛かっていた。朝早くから動いていたし、結構集中して頑張ちゃったな。
「とりあえず、簡単に食べられる木の実でいいかな。色々とあるけど……リンゴとかバナナが腹持ちしそうかな。コパンは何か食べたいものがある? 森の中だし、火を使うものは夜にしよう」
「はい。では椅子とテーブルだけでも出しますか?」
「! ああ、いいね。そうか、そうやって使えばいいんだな。コパンは頭がいいな」
「は、いえ、あの……ありがとうございます」
照れてる『お助け妖精』はとても可愛かった。
それにしてもあれは何だったんだろう。
今は周りを見回してもポップアップが浮かんでいる事はない。
食べられる植物や実を確認したいと思ったら、持っていた本、『サバイバル読本 これであなたも生き残る』が急に光って、鑑定結果が見えるようになったんだ。という事はあれが特殊アイテムの力なんだろうか。
本の知識が分かるようになる? 見えるようになる? 考えた事が出来るようになる?
「……よく分からないな。もう少し何かヒントみたいなものがあればいいんだけど」
それともさっき考えたように、レベルが上がらないときちんとした使い方が分からないんだろうか。
または今後もこんな感じで自分で使い方を取得していくしかないのか。
「難しいな。でも考えていても仕方がない。検証しながらやっていくしかないな」
「あの、アラタ様。岩塩というのはどういうものなのでしょうか」
リンゴをショリショリと食べながらコパンが尋ねてきた。なんだか本当にハムスターみたいですごく可愛い。擬人化しているハムスター。
「……私はハムスターではありません」
ムッとしながらも顔を赤くする『お助け妖精』に「なんだかすごく可愛かったから、つい。ごめんね」と謝って、俺はバナナの皮を剥きながら言葉を続けた。
「ええっと、俺も良くは分からないんだけど、確か元々海だったところが地殻変動とかで海とは切り離されてしまって、長い時間をかけて水分が蒸発して結晶化したものだったと思う」
「…………よく分からないけれど、石ではないのですね?」
「う~ん、石だったり、山みたいになっていたり、洞窟にみたいになっているものもあるって聞いた事があったような……」
俺のあやふやな説明に、コパンはますます分からないという顔をして眉間の皺を深くした。うん。やっぱり以前よりも表情が豊かというか、はっきり見えるな。
「海というものは見た事はありませんが、知っています。では海に行けば塩がありますか?」
「この世界がどういうものなのか俺にはまだよく分からないから何とも言えないけど、塩は人にとって必要なものだと思うから、海の近くならそれを作っている可能性は高いんじゃないかな。でもコパンが海に行って塩を買ってくるというのは難しいよね? 『お助け妖精』は他の人にも見えるのかな?」
「あ……今はまだ見えないと思います」
途端にしょんぼりとするちっちゃい幼児。うん。やっぱり可愛いな。
「それにその間俺は一人になっちゃうし。それはちょっと困るかな」
「そ、そうですね! 私はアラタ様の『お助け妖精』ですから、お傍を離れるわけにはまいりません! では岩塩というものをここで探しましょう。大丈夫です。ここは女神様の森ですから普通の場所にはないものもきっと見つかる筈です!」
え? そういうものなの? この森自体がチート?
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