14 コパン
陽の光で目が覚めた。
一瞬どこだか分らずに驚いて、それからゆっくりと昨日の事を思い出す。
そうだよな。まだこちらの世界に来てから一日しか経っていないんだ。なんだか信じられないくらい昨日は中身の濃い一日だった。
「あれ? あの子どこにいるのかな。まさか俺、潰しちゃったりしていないよな」
念のためシュラフを開けて中を覗いてから、小さな『お助け妖精』の姿を探して、寝床から這い出した。
「あ~~、えっと、おーい、『お助け妖精』さーん! ってやっぱり名前がないと不便だよな」
そんな事を考えながらささっと寝袋を片付けて外に出る。一応スマホで時間を確認。朝の六時を少し回ったところだった。疲れていた割には俺にしては驚くような早起きだ。そして、やっぱり充電は減っていない。つまりこれは電気で動いているわけではないという事だ。
「おはようございます、アラタ様!」
「ああ、おはよう。あのさ、昨日みたいにクリーンって言うのをかけてくれるかな。あと、このペットボトルにも」
「おまかせあれ~!」
『お助け妖精』は頼まれた事が嬉しいというような顔をして俺にサ~ッと『クリーン』をかけて、昨日のペットボトルにも同じように『クリーン』をかけてくれた。
「おおお! すごい綺麗になった! いいな、その魔法。まずはその魔法を教えてもらおうかな。ええっと生活魔法の『クリーン』なんだよね?」
「はい! よくご存じですね! さすがアラタ様です。ええっと、そのぺっとぼとるに昨日のように水を入れますか?」
「ああ、うん。頼むよ」
「おまかせあれ~」
ニコニコと機嫌よく笑って『お助け妖精』はペットボトルの中に水を入れてくれた。
「では今日は食べられるものを探しながら、魔法の練習をしましょう」
「うん。そうだね。出来れば何か調味料になるようなものがほしいな。岩塩とか、難しいかもしれないけど砂糖の代わりになるようなものとか」
「分かりました!」
うん。味噌とか醤油なんていうのは作り方も分からないし、多分サバイバルのスキルでは出来ないよね。ワンチャンあるとすればキャンプ飯か自給自足のスキルが育ってきたら何か出来るかもしれない。
俺と『お助け妖精』は残りのカロリアンバーを一本ずつ食べて、どうやらこの周りを探して見つけてくれたらしいグミの実をつまんでからキャンプセットを片付けて、インベントリにしまった。
ちゃんとインベントリに入るのか心配だったけど、スマホを開いてインベントリを開けて、そこにあったカメラマークを押してカメラを起動。対象物を撮れば終了だった。
「うん。やり方は分かった。後は片付ける魔法みたいなのがあればいいんだけど、そんな便利なものは」
「ありますよ」
「……あるの?」
「はい。生活魔法の中にあります。散らかった部屋を綺麗にする、メイドが使う魔法です」
「ほぉ~~~~~」
「きっとアラタ様にも出来ますよ」
ニコニコ顔でミニチュア幼児に言われるとなんだかとてもこそばゆいけど、嬉しいなって思うようになってきた。
「うん。じゃあそれも取得しよう。とにかくどういう風にするにしても、俺は一度はこの世界の街というものを見てみたい」
「はい」
「それに街でしか手に入らないものがあるかもしれないし」
「はい」
「ああ、それと『お助け妖精』には名前はあるのかな?」
「名前……ですか?」
そう言って少しだけ考えるようにして、小さな『お助け妖精』フルフルと首を横に振った。
「私たちは生まれて、女神様から新しくこの世界に生まれてくる人たちにお仕えをするように言われます。その為にいるのです。私はアラタ様が私の事が必要ではなくなって、私の姿が見えなくなってしまうまでお傍にいます」
「見えなくなるの?」
「はい。大人になって段々必要ではなくなってくると見えなくなってくる人もいると聞きました。でも最後まで一緒にいた『お助け妖精』もいたと聞きます」
「…………そう、なんだ。でも俺が君を必要でなくなる事はないと思うよ。だって俺はこの世界の成人の年齢だけど、何も出来ないもの。頼りにしています」
「アラタ様……」
泣き出しそうな顔をしている俺の『お助け妖精』に、俺は決めていた事を伝えた。
「名前がないなら俺が名前をつけてもいい? 呼ぶ時にさ、君とか『お助け妖精』ってなんだかちょっと違和感っていうか、距離感っていうか。だからさ、名前があったらいいなって思ったんだ」
「はい、ありがとうございます! すごく嬉しいです」
「そう? じゃあ、えっと『コパン』っていうのはどうかな。俺が住んでいた世界の言葉で、俺の国の言葉ではないんだけど、ええっと<仲間>っていう意味の言葉なんだ」
「仲間……」
「うん。これからもずっと一緒にいられるように」
「はい! コパン、素敵な名前です!アラタ様ありがとうございます! 私の名前は『コパン』です!」
するとその瞬間、コパンの身体は眩しい光に包まれた。
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