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117 遭遇①

 その日の朝、コパンは言った。


「多分、出口が近いと思います」


 その言葉に俺は「分かった」と頷いた。なんとなく緊張したけれど、何がどう変わるわけではない。

 いつも通りに朝食を食べて、テントをしまって、拠点を整える。

 結局ここには半月以上お世話になった。

 その間に俺はレベルが9になり、コパンは10になって、中級妖精になった。大きさも小さめの柴犬くらいある。

 でもコパンはすぐさまその姿を羽のある妖精に変えた。そして「アラタ様がお好きな姿ですね!」って嬉しそうに言うから、なんとなく自分が変な趣味があるみたいな感じがして「どんな姿でもコパンは可愛いよ!」って言ったら、それもなんだか軽い男みたいな台詞で頭を抱えたくなった。

 人型にもなれるって言うから見せてもらった。

 俺と同じくらいに見えるけど、栗色の髪にミントブルーの瞳だから少し上に見えるみたいで、実際は10歳くらいの子供らしい。でも未成年だと面倒なので、コパンのタグも15歳になっているんだそう。


「なんだか並んで歩くのって楽しいですね!」

「そうだね。でも疲れない?」

「大丈夫です!」


 女神からもらった服も替え用にいくつか模倣してから、アイテムの『自給自足生活をはじめよう』に載っていた草木染めで染めてみたし、アルクタランチュラの糸で作った布でも同じようなものを作ってみた。

 いつ森から出るかわからないから今日は女神がくれたこの世界仕様の服を着てマントもつけてみた。

 これだけで異世界感が出るなってなんだかおかしくなった。

 ちなみにデイパックはインベントリにしまって、女神から貰った肩掛けバックをつけている。

 人型になっているコパンも同じような格好だ。

 歩いていると道の端にコッコがいた。しかも3組。


『ちょっと、祝福者。森を出るって本当なの?』


 う~ん、何かこう情報網みたいなのがあるんだな。コクリと頷くとコッコ達もウンウンと頷いた。


『でも心配していないわ。私達には縁を繋いだものがあるから、きっとまた会えるもの』


 そういえばラタトクス達にも同じような事を言われたな。まさかこの森の外でも会う事が出来るのかな。街の中にコッコやラタトクスが現れたら討伐されちゃうよね。でもまぁ、また会えるっていうんだからそうだなって思っておこう。


「じゃ、とりあえず今日は卵が五つ。昨日と今日の分ならいいのよね」

「私は六つよ」

「あたしは四つ。でも珍しいものを見つけたから持ってきたの、これも交換して。アダマンタイトですって。旦那が見つけたの」

「あら! すごいわね!」


 ワイワイと騒がしくて逞しいコッコの母達とやり取りをして、いつもよりも多めに色々と渡して別れた。

 それにしてもアダマンタイトなんてビックリだ。

 とりあえず途中、道の真ん中で休憩をして昼食を取りながら【補充】もしたよ。万が一森の外に出て【補充】が出来なくなると困るからね。

 そうして再びコパンと一緒に歩いていると……


「なんだかちょっと騒がしいですね」

「確かに」


 もしかしてまたリヴィエールのような妖精と想定外の魔物が出たのだろうか。

 土が間接的に接触をして、水が来て、風が来たなら今度は火か?


「コパン、何か感じるかい?」

「いえ、それが予見がものすごく乱れていて。その……出口が近いのは確かだと思うのですが」


 なんだろう? 何が起きているのかな。まさか「最後の挑戦だ!」みたいに道の端にズラッと魔物が並んでいたらそれはそれでものすごく嫌だ。


「も、森の中の魔物がどんどん出てきたらどうしよう」

「ええ!? それはあまり現実的ではないと……ああ、でも」


 うん。さすがに俺もそう思うんだけどさ、なんとなく森がざわざわしている感じがするんだ。一体何が起きているのかな。


「コ、コパン、確か女神はうまく外に出られるように考えてくれるんだよね?」

「は、はい。多分そうだと……」


 警戒をしつつ俺たちは少しずつ歩く速度を速めた。すると


「おい! そっちに回ったぞ!」


 それはこの世界で聞く、おそらく初めての人の声だった。


「――――――!」


 俺は思わずコパンと顔を見合わせてしまった。

 もしかして森に入ってきている人間がいるのだろうか。魔の森みたいに恐れられているけれど、それでも素材を求めたり依頼の為にここに入ったりする冒険者達もいると聞いてはいた。

 外周に強い魔物が多いので、それほど多くはないような事も言われたけれど、まさかここで他の人間に遭遇するというのはいいのだだろうか、悪いのだろうか。

 それともこれが女神が設定してくれた方法なんだろうか。


「…………こ、このまま進んでもいいのかな」

「…………分かりません。でも、この森から成人したての子供が出てくることは普通であれば考えられないと思います」


 だよね。俺も面倒な事になりそうな予感しかしないよ。とすれば……


「道を逸れるしかないか……」

「ですよね」


 でも森の中に入ると魔物ホイホイになりそうな気がするんだよね。

 人がいいのか、魔物がいいのか、女神は何を考えているのか……


「とりあえず万が一見られてもいいようにコパンはそのまま人型でいよう」

「分かりました」


 声はかなり近いので何かの魔物と戦っているのは確かだろう。


「うわあぁぁぁぁ!」

「大丈夫か! 左だ! 来るぞ!」

「こ、こんなのありかよ」

「今さらですよ」


 こ、これって……もしかして襲われている感じかな。でもでもでも、森に入るくらいだから、それなりに経験のある人たちなんだと思いたい。


「どうしよう」

「ここで関わるのはあまりお勧めできませんが」


 やっぱりそうだよねぇ。でも一体何が出てきているのかな。


「…………姿を消して様子を見てきます。アラタ様は来ないでください」

「いやだ。約束した筈だ」

「……そうでした。ではそっと覗いて転移でぱっと戻ります。冒険者だと思うので、私は自己責任だと思います」

「…………うん。そうだね」


 でも何が出てきたのかはやっぱり気になる。もちろんこの世界の人も。


 俺たちは顔を見合わせて、走り出した。



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お待たせいたしました。

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