107 収穫祭り
翌朝、朝食を食べると俺たちは前には進まずにそのまま拠点奥の森に入っていった。
このエリアではどうやら俺自身が魔物ホイホイみたいなものらしいから、セーフティーゾーンの奥の森でもやっぱり魔物が来ちゃうのかなと思っていたけれど、セーフティゾーンの神気? が高いのでその周辺が道のような状態になっているらしく、弱い生き物たちがいるだけだった。
「なんていうかうまく出来ているのか、なんなのか微妙なところだけど、まぁ魔物が出てこないで調べられるならそれに越したことはないよな。じゃあ、コパン何があるのか見つけに行こう」
「はい! 良いものが見つかるといいですね」
俺たちは森の中を歩く。勿論【鑑定】をかけたままだ。
あちらこちらに食べ物や石、そしてなぜか魔石のタグまで浮かんでいて、俺たちは見つけたものを集めながら更に進んでいった。そうして森が開けて……
「あ……れ?」
ここってなんか見覚えがないか? ほら夏野菜とか採れた草原にすごく似ている気がするんだけど……
そう思っていると【鑑定】のタグが視界の中にブワッと一斉に立ち上がった。
<大根>
<人参>
<牛蒡>
<蕪>
<蓮根>
<かぼちゃ>
「いやいやいやいや……根菜祭りだよ」
欲しいとは思っていたけれどまさかこんな風にいっぺんに見つかるなんて思ってもいなかった。しかも蓮根はしっかり水田っぽいぞ。
「これがコンサイなんですね!」
ああ、そうかコパンと俺の鑑定はちょっと見え方が違うんだよね。
「根菜っていうのは根っこが食べられる野菜の事だよ。それぞれに名前がついている。本当はお芋も根菜なんだけど、そっちはもうみつかっているからないのかな。でもすごいな。えーっと、あれが大根、その隣が人参、牛蒡、蕪、かぼちゃ、そして蓮根。土の中のものを食べるけど葉っぱの部分も食べられるものが多いからね。とりあえず収穫していこう。蓮根は沼にみたいになっているから気を付けて」
「おまかせあれ~~~~~!」
俺は《収穫》がアイテム魔法になっているから、ちょっとズルみたいに収穫をした。
コパンはとりあえず一つ収穫をしてどんなものなのかを確認すると、ひと区画ごとに収納をして不要なものを出すという形で収穫を進めていく。
今までに数えきれないくらい色々なものを収穫してきたからね。お互いにそれぞれの方法を確立している感じでなんだかとても楽しかったけど、やっぱり苦戦をしたのは蓮根だ。
蓮根を収穫するような写真でも載っていれば一気にいけたんだろうけど、今までの《収穫》とは明らかに異なるので魔法をかけても思っていたようにいかない事もあった。泥水の中っていうのもやりづらいのかな。
「こ、これは本当に食べ物なのでしょうか」
ボコボコとした泥だらけの白い何かが連なっているような不思議なそれにコパンの顔が引きつっている。
「うん。美味しいよ。煮物でもいいし、蓮根餅も婆ちゃんが作っていた事があるから、なんとなく分かると思う。レシピ登録しちゃえば多分作れるんじゃないかな」
「…………頑張ります」
どうやら食べたい気持ちが勝ったらしい。さすが俺の『お助け妖精』だ。
お昼過ぎまで俺たちは根菜類を収穫した。【補充】出来るんだけど、やっぱりなんだか収穫したくなっちゃうんだよね。もしかしたらまた道端交換会があるかもしれないし。
この野菜たちがどれくらいのサイクルで元に戻るのかは分からないけれど、多分またすぐに元に戻ると思って収穫時期を迎えていたものはほぼ採りきった。ほら、ここは色々な時期のものが混在しているからね。
「よし、今日はこれで拠点に戻ろうか。まだ早いけど、あとは今日手に入れたものの整理をしようかな」
「そうですね。とりあえず何がどれくらいあるのかを確認しておきましょう。コンサイの他にも色々見つけましたし」
「そうそう。豚汁じゃなくて、オーク汁も作らないとね」
「! そうでした!」
昨日はオークカツ丼を食べたが、根菜がなかったので葉物の味噌汁になった。でも今日は山のように根菜がある。
「ついでに蓮根餅も作ろうか」
「食べたいです!」
そう言って飛びついてきたコパンを受け止めて俺たちは笑いながら拠点に向かって歩き出した。
魔物が現れる心配がない森は安心して歩いていられるね。
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不定期になっていてすみません。
週2.3回は更新できるように頑張ります♪




