104 お金の事と新たな素材の可能性
というわけで俺は俺のインベントリに入れっぱなしになっていたデイパックを取り出しものすごく久しぶりに財布を開いた。
財布の中には一万二千六百五十二円があったらしい。
あったらしいというのは俺の財布の中身が銀貨十二枚、銅貨六枚、鉄貨一枚と一円玉二枚になっている。
「ま、マジか……。あれじゃあさっきコパンが言っていた貯金って」
「それはこちらに……。すみません。お財布がデイパックの中だったので私の方の収納でお預かりしていました。先ほどのラタトクス達の金貨もお渡ししておきますね」
「い、いやコパンの方で預かっていて? ええっとちょ、貯金分? はもらった方がいいのかな?」
「はい。これはアラタ様のものなので、お渡ししてしまいたいです」
「そう。そうだよね。分かった」
そう言うとコパンは多分女神が入れてきたのだろう綺麗な箱を取り出した。
「こちらです。先程のもこちらに入れておきます」
「ありがとう……」
俺はそっと小さめの綺麗な箱を開けた。
「うわ!」
中には金貨が入っていた。え、ちょっと待って金貨って一枚日本円換算で十万だよね。それが……八枚? うそ、俺の貯金って八十万以上入っていたって事? 通帳なんて見ていなかったから全然知らなかった。あとは銀貨がええっとええっと五十四枚で銅貨が三枚、鉄貨が六枚と、一円玉が三枚か……。
トータルで八十五万四千六十三円分。はぁぁぁ……すごいな。バイト代をWeb銀行で登録していたから忘れ切っていたんだな。分かっていたらバイト代が少なくてひもじかった時に引き出していただろうな。まさか異世界生活の軍資金になるとは思ってもみなかった。
「となると、後はセヴォーロとウィルクランの物価だな。宿がいくらくらいするのかとかも。でもまぁ財布と合わせて八十六万以上あるからなんとかなりそうだ」
「アラタ様。財布も箱もインベントリに入れておいた方がいいです。というか、バッグの中に入れてインベントリがいいと思います。それで素材で持っている皮を使って以前作ったひもで縛る袋に使う分の小銭を入れておきます。それを首からかけておくのが、どうやら一般的なスタイルのようです」
「ああ、なるほど。スタイル……ねぇ、コパン。この服ってさ、この世界で着ていても大丈夫なのかな」
まぁ普通のズボンとシャツだけど。
「……大丈夫だと思いますけど、一応セヴォーロとウィルクランの冒険者たちの服装も問い合わせておきます」
「うん。よろしくね。今日の情報も助かったし、お金もまさかこんなにあるとは思っていなかったから、すぐに何かを換金しないといけないって焦らなくてもいいって分かってホッとした。問い合わせてくれてありがとう、コパン」
「私はアラタ様の『お助け妖精』ですから、これ位の事は当然です! お洋服の事もおまかせあれ~!」
「あははは! おまかせしました。じゃあ今日はこれくらいにして夕食の準備をしようか」
「はい! なんちゃって親子丼とポテトサラダとお味噌汁と、デカプリン!」
「よく覚えていました。じゃあご飯を炊いて、ササっと作ってしまおう」
レベルアップしたレシピスキルは材料を取り出して並べなくても勝手にインベントリから取り出して作ってくれるから助かるよね。
「レシピ【白米ご飯を炊く】・【コカトリスとコッコの卵の親子丼】・【ポテトサラダ】・【ほうれん草とキノコの味噌汁】・【コッコの卵のデカプリン】三つずつ」
「三つですか?」
「そう。女神にも色々とお世話になったからね。お金の事も助かった。それにこれからの事も色々教えてほしいから今日はお供えを沢山しておこうと思うんだ」
「うふふふ、アラタ様らしいです。きっと女神様もお喜びになると思います」
俺たちの後ろではものすごい勢いで色々なものが動いている。もっとも見えるのはそれぞれ一瞬の場面みたいなものだけだし、簡単なものはあっという間に現れてしまうし。本当に魔法って便利だなって思うよ。
色々と作れるようになったから大きめのテーブルも作ったし、キャンプセットについていたアルミのテーブルはすっかりお供え用になって…………
「そうだ。思い出した。ボーキサイト……」
出来上がった料理がテーブルの上に並んでいくのを横目に、俺は新たに加わったアイテム本の『素材読本』を取り出して捲り始めた。そして。
「あった! やっぱりそうだ。ボーキサイト」
「アラタ様?」
「コパン、今日コッコにもらった赤茶色の石。ボーキサイトって言っていただろう? あれってやっぱりアルミニウムの原料だ」
「あるみにうむ…………」
ポカンとした顔のコパンに俺はお供え用のテーブルを指さした。
「ほら、あの金属の素だよ。軽くて扱いやすいし、アルミホイルもつくれるかもしれない。そうしたらホイル焼きっていう料理も作れるよ」
「ホイル焼きですか⁉ どんなお料理でしょう。楽しみです!」
「俺も楽しみ!」
そう言って俺は全ての料理が出来上がるまで、アルミニウムのページを何度も読み返した。
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新しいアイテム本も使わなきゃ♪




