104 久しぶりのコパン先生
飲み終えたスムージーのカップを置いて、コパンは少しだけ改まったように口を開いた。
「では、先程アラタ様からお話のあった東の大国ウィルクラン王国と中国セヴォーロ王国についてのお話をしますね。それとお金の事ですね。ちょうど今日は古い金貨も手に入れたのでそれも含めてお話し出来ればと思います」
「よろしくお願いします」
俺がぺこりと頭を下げると少しだけ照れたような笑みを浮かべる。
「ええっと……ウィルクラン王国からにしましょうか。ウィルクラン王国はこの世界の中で大国と言われている国です。首都にはヴェイダー。一番大きな冒険者ギルドがあります。その他に二つあるダンジョンの傍にもギルドがあるそうです。住人は人族が多く、この国を拠点としている冒険者たちも多数いるそうで、獣人やドワーフ、エルフなども住んでいるとの事。王制は安定しており、ギルドとの連携も良好。冒険者の数は多いのですが、治安は良く、騎士団や警ら隊などの組織もしっかりしています。あ、道の整備がされている所が多くて馬車の移動も負担が少ないそうです。一応女神様からいただいた情報はこんな感じです。細かいところは行ってみないと分かりません」
「なるほど。そうだよね。でも国政が安定して治安がいいっていうのは安心だね」
「そうですね。では次にその隣、真東のセヴォーロ王国に移ります。セヴォーロは国土の大きさとしては中国ですがウィルクラン王国と同様に国の中に二つのダンジョンがあります。一つは難易度が高い層があり、もう一つは初心者も入る事が出来る層が六層まであり、ドロップ品が多めに出る事で人気があります。首都はセイレス。こちらも王制は安定しており、ウィルクランと比べると少し煩雑としたような印象だそうです。ギルドはダンジョンの近くに大きなものが二つ。大きめの町にも出張所のようなギルドがあり、薬師のギルドや鉱石など特化した小さめのギルドも点在しているのが特徴です。先程も言ったように、初心者が潜る事が出来るダンジョンから上級者用の層があるダンジョンを有しているので冒険者には人気があります。またウィルクランに比べてやや物価が安いのも人気の理由だそうです。治安は悪くはないとの事です。やはり色々な種族が暮らしています」
「初心者が六層まで入れるのは珍しいのか?」
「そうですね。大体初心者のみですと一、二層でドロップ品もあまり高額では取引されないようです」
「……そうなんだ。それならかなり初心者に優しいダンジョンだな」
「はい。冒険者の間ではレベル上げダンジョンなどとも呼ばれているとか」
「ははは、レベル上げかぁ」
どうやら今の話を聞く限りでは統制されているのはウィルクラン王国で、もう少し自由度が高く、自己責任になるところも多そうなのはセヴォーロ王国なのかもしれないなと思った。
とりあえずこの二つのどちらかは決定だな。難しいと判断したら以前コパンが言っていたポートというものを使って他の国に移動すればいいのかな。その考えが伝わったかのようにコパンが嬉しそうに「その通りです!」と言った。
「あ、それからこの大陸における身分についてですが王国ですと、大まかに分けて王族、貴族、平民です。貴族は公爵、侯爵、辺境伯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵があり、騎士爵と一部の男爵は一代限りの爵位もあるそうです。神国と教国についてはまた改めてその国の時にお話しします」
「うん。それが嬉しいかな。ええっと後は通貨についてはどんな感じ? 以前この大陸共通って事は聞いたと思うんだ」
「はい。この大陸は現在『フィーネ』という共通の通貨があります。昔はそれぞれの国の通貨があったそうですが、ギルドやポートが大陸の中にしっかりと根付いてきて共通のお金になったそうです。なので、これから向かおうとしているウィルクランもセヴォーロも『フィーネ』という通貨が使われています。こちらがフィーネ硬貨です」
コパンはそう言って硬貨を目の前に並べ始めた。お、本物の見本か。
「一フィーネは鉄貨。十フィーネになるとこの銅貨になります。そして百フィーネは銀貨。千フィーネはなく、金貨は一万フィーネです。それ以上はあまり出回りません。見本はないのですが、白銀貨が十万フィーネ。大金貨は百万フィーネの価値があります」
「なるほど……」
俺は並べられた硬貨を眺めながらメモ書きをした。
「さっき物価の話もちらっと出てきたよね。やっぱり国によって結構違うのかな」
「そうですね。多少の差はあるそうですが、大きな貧富の差はないと聞いています。もっとも大国と小国を比べるとやはり物の価値や出回るものも異なるようですが、細かいところまでは分かりません」
うん。まぁそうだろうな。それはもう行ってみて違いを自分で感じるしかないところだよね。
「ちなみにアラタ様の元の世界のお金の価値との比較も聞いています」
「! へぇ、それは覚えやすいかも」
「大体になるのですが、鉄貨の一フィーネは十円」
「十円か。十円が最少貨幣になるんだね。うんうん。という事は銅貨の十フィーネが百円で、銀貨の百フィーネが千円か。それで千フィーネはなくて金貨になるから……金貨はいきなり十万円かぁ」
「そうですね。なので庶民の生活の中で金貨が使われる事もほとんどないと思います」
「ああ、そうなんだね。えっとじゃあ白銀貨は百万円で、大銀貨は一枚で一千万円? そりゃあ出回らないよね」
「大きな取引とかには使われるようですが、それくらいだと思います。ではこちらはアラタ様のお金ですのでお返しいたしますね」
そう言ってコパンは並べた硬貨を拾って俺に手渡した。
「え? な、なんで?」
「えっと女神様からアラタ様の元の世界のお金を換金したとお話をしたと思いますが」
「あ、うん。でも財布の中に入っていたお金だよね。俺、十万もする金貨なんて」
「いえ、元の世界のアラタ様のお金です。ええっと……ええっと……ちょ、ちょきん?」
「!!」
そっちもか!
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お待たせいたしました~




