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102 路上取引 

 相変わらずマッピングを使って、いったん戻っては進む事を繰り返しながら、俺たちの目下の目標は新しい拠点(セーフティーゾーン)の発見と、俺は根菜の発見、コパンはビーフとサンダーシープの発見になっていた。


「今日は何か魔物に出会いそうです。でも戦う感じはしません」

「あ~~~~そうなんだ。じゃあ刈ったばかりの小麦を増やしておこうかな」

「そうですねぇ」


 朝食の時にコパンから『予見』を聞いて俺は出発の前に『神気(高)』で刈り取った小麦を【補充】した。


「では出発。コパンよろしく」

「はい。おまかせあれ~!」


 コパンの言葉と共に目の前の景色が一瞬にして昨日進んだ場所に変わった。本当にこのマッピングの魔法があって良かった。


「『予見』では戦いのない魔物との遭遇だったけど、その他何か変わった事は感じなかった?」


 コパンを肩の上に載せたまま歩き出してそう尋ねると、コパンは少し考えるようにして口を開く。


「特には。新しい食材が見つかる感じもしませんし、困った事が起こる感じもありません。後は……拠点も見つかる感じはないです。でももしかしたら進んでいくうちにまた違う『予見』があるかもしれません」

「そうだね。でも困った事がないならいいね。ああ、そうだ。前にお願いをしていた東の国……ええっと中国のセヴォーロと大国のウィルグランの事をもう少し詳しく話してほしいっていうのはどうなっているかな。あとお金の事も。出来れば相場的なものが分かるといいなって思うけどその辺りの情報は女神からもらっている?」

「はい。東の道を選んでから問い合わせをしてお知らせをいただいています。もう少し詳しいものも来るかとは思いますが、一通りの説明は出来そうです。歩きながらお話しますか?」

「ううん。メモも取っておきたいし帰ってから話を聞くよ。新しいものが見つからないみたいだから今日は少し早めに戻って話を聞く日にしよう」

「了解です!」


 そんなやり取りをしていると前方から何やら騒がしい声が聞こえてきた。


『あれよ! 来たわよ! 間違いないわ!』

『確かに『土精霊様の気』を感じる。同志から聞いた通りだ!』


 ああ、やっぱり()()かぁ……


「アラタ様、『予見』の正体はあれですね」


 コパンも同じように感じたらしく、少しだけ苦笑したような声を出した。

 そうなんだ。どういうわけか分からないけれど、この東の道を選んでから小さな魔物たちが時々話しかけてくるようになったんだ。まぁ目的は物々交換なんだけどね。

 以前コッコの親鳥たちと、卵と小麦の交換をした事があった。そこからよく分からないネットワークというか、商談相手にロックオンされているらしい。

 おかしいなぁ。『土精霊の祝福』の石は箱にしまいっぱなしだし、俺が話をしたいと思わなければ話し合いは成立しないと思っていたんだけどな。


『待っていたわよ! 祝福者!』


 声をかけてきたのはコッコの雌だった。もちろん以前のコッコとは違う。多分それぞれに縄張りみたいなものもあるんだろうな。後ろには多分旦那なのだろう雄とヒナたちがいる。


『子なしの卵と小麦を交換してくれるって聞いたんだけど』


 初めて道端で声をかけられた時に誰に聞いたのか尋ねたけど、全く理解できなかったので俺はその質問をする事をやめた。ちなみにこんなやりとりはもう四回目だ。


「古いのは駄目だよ。二日以内にしてほしい」

『了解よ!』


 そう言ってコッコ母は五つの卵を差し出した。


『今日のが三つと昨日のが二つ。あと、珍しい石はどう?』

「……どんなの?」

『これよ。うちの人が倒したポイズンスネークの中にあったの』

「………………ポイズンスネーク……」

「毒を持つヘビの魔物です。結構強いです」


 コパンがそっと情報を伝えてくれた。うん。名前のまんまなんだね。でもその強い毒蛇をコッコは倒せるのか。

 コッコが差し出したのは小さな青い石が三つ。そしてそれよりも大きい拳ほどの赤褐色の石が一つ。鑑定をしてみると青い小さな石は思っていた通りポイズンスネークの魔石で、こぶし大の赤褐色の石は<ボーキサイト>。


「うん? ボーキサイト?」


 一瞬頭の中に何かが引っかかったけれどそれを考える前にコッコ母が口を開いた。


『それで、交換は可能なの?』

「あ、ああ、全部もらうよ。卵五つ分は小麦五束で、こっちの魔石と石の分は、この雑穀類でどう?」

『小麦より落ちるけど、これも結構神気が高いわね。そうね。小麦がもう少しあると嬉しいけど』

「じゃあ一束追加しよう。これで取引願いたい」

『いいわ! じゃあ、これ。確かめて頂戴。ちゃんと卵は新しいものだから。これは縁が出来た記念に持って行って。うちは風とも関わりがあるからきっと役に立つわ!』


 母は強し。メスのコッコはそういって旦那の尾羽を俺に渡した。

 交換成立だ。それにしてもどうしてコッコ達は尾羽を渡すんだろう。役に立つって必ず言うんだよね。


「あのさぁ、この尾羽ってどういう意味があるの?」


 意を決して尋ねるとコッコ母はドヤ顔? をしながら教えてくれた。


「縁を繋ぐのよ。持っているものは私達と縁がある者って他のものが分かるわ。だからコッコを敵に回したくないものはあなたにちょっかいをかけてこないでしょう。それに私達もあなたがどこにいるのか分かるから交渉もしやすくなるの。厄除けと目印かしら。でもうちのは風魔法を手助けする効果もあるわ!」

「なるほど……」


 そういう事だったのか。恩恵付き目印ね。それにしてもニワトリ魔物のドヤ顔……結構インパクトあったな。

 俺はコッコ達に別れを告げて再び道を歩き出した。


「なかなかパワフルなコッコだったね」

「そうですね。でも【補充】も出来るし、チケットで手に入れた卵もあるからそんなに必要ではないんですけどね」

「うん。まぁでもせっかく声をかけてくれたし、害もないし、他にもポツポツと手に入るものもあるしね」

「アラタ様のそういう所はとてもいいなって思います!」


 ニコニコとしながら褒められて、俺は柄にもなく恥ずかしくなりながら「ありがとう」と口にした。


 

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応援ありがとうございます。

少しずつブックマークを付けてくださる方が増えてきました。ありがたいです。


基本的に月・水・金のお昼に更新する予定です。

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