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101 収穫は葉物野菜

「到着です! 今日もお疲れさまでした」

「うん。コパンもお疲れ様」 


 朝出てきた拠点(セーフティーゾーン)に戻った俺たちは、サクサクと竈やテントなどを準備してとりあえず椅子に腰を下ろした。進んではいるんだけど、どうも微妙なんだよね。でもこうして魔物とか獣に襲われる心配がない場所があるっていうのは本当に有難いなって思うよ。


「コパン色々とやる前にコーヒーを飲もうかなって思うんだけど、コパンは何にする? この前作ったイチゴ牛乳にする? それともちょっぴり大人のコーヒー牛乳にする?」

「…………う~~~~~~~~~~~~ん……で、では、コーヒー牛乳で!」

「おまかせあれ~!」


 コパンの台詞を真似て俺は【レシピ登録】を済ませているコーヒー牛乳をサッと差し出した。


「すごいです! アラタ様は本当にすごいです! でもおまかせあれはとったら駄目です! それは私の言葉ですからね」


 そう言いながらコパンは【模倣】で作った、俺と同じ形の椅子に腰かけて嬉しそうにコーヒー牛乳を飲み始めた。

 うんうん。やっぱり作ってよかったな。もちろんかなり座る位置を高めにしているよ。だって食べ物に手が届かなかったら困るからね。

 本当にどうして今まで気づかなかったのかなって思ったよ。膝の上だったり、石の上だったり、【工芸】で作った木のテーブルの上だったり自由に動いていたからさ。まぁこの大きさになったからこそ椅子が使えるようになったんだけどさ。


「コーヒー牛乳、美味しかったです。ちょっぴりほろ苦い感じが大人です」

「そうだね。それが分かるなんてさすがコパン。じゃあ、夕食の前にやる事を終わらせちゃおうか」


 俺がそう言うとコパンは椅子の上から飛び降りて、ふよふよと広い場所へと移動した。  



「アラタ様、こちらにフォレストウルフを出してもいいですか?」

「うん。いいよ。解体して食べられるなら精肉も一遍に済ませてしまおう。後は獲ってきた野菜も一応確認しようかな」

「分かりました! では先に解体のあるウルフから」


 そう言うとコパンは収納の中からフォレストウルフを取り出した。

 う~ん。本当にガタイがいいな。

 【鑑定】を使うと、毛皮と爪と牙、そして肉と魔石が残るみたいだ。アイテム魔法の《解体》を使って二十一頭のウルフ達をサクッと解体した。肉は半分は大きなブロックで、もう半分は使い勝手がいいようにスライスしたものにする。


「あまりオオカミを食べるって聞いた事がないけど、臭みはないのかなぁ」

 

 スライスした肉を手に取ってサッと『ファイヤー』を出して炙ってみる。それに塩だけを振りかけてコパンを二人で一口ずつ食べてみた。


「うん。臭みはほとんどないけど、オークよりは油がないかな。どうしようか。焼き肉のたれを絡ませて焼いちゃおうか」

「! いいと思います! では今日はフォレストウルフの焼肉ですね。楽しみです!」

「せっかくだから魔法ではなくて鉄板で焼きながら食べようか。あ、でも火加減の調整は魔法がいいかなぁ。ああ、でもその前に野菜を確認しよう」


 そう言うとコパンは木のテーブルを出して(これも俺が【模倣】で作ったものだ)、その上に今日採った野菜を並べた。


「普通のレタスも見つかったけど、サニーレタスがあるからこれに巻いて食べようかな。サンチュと同じような感じだもんね。あとは白菜、キャベツ、チンゲン菜にほうれん草か。うん、結構一度に葉物が採れたね。魔物の予見もあったけど森に入って良かった。これでロールキャベツや白菜のクリーム煮とかも出来そうだ」

「! おいしそうです!」


 嬉しそうに声を上げたコパンに俺は笑いながら野菜の確認を終えて改めて収納してから夕食の準備に入った。



   ◆ ◆ ◆



「いい匂いです~……」

「鑑定もクリーンもしたけど、初めての素材だから今日はしっかり焼いて食べようね」

「分かりました…………あ、こ、焦げてきてます。アラタ様」

「ああ、うん。もういいかな。どうぞ召し上がれ」

「いただきます! ……おいしいです~!」


 とろけそうな顔をしているコパンを見ながら俺も焼肉に手を伸ばした。一緒にジャガイモとかトウモロコシも端っこの方で焼いているよ。アイテム魔法の《調理》がいい仕事をしているのか、スキルの<料理人>が腕前を発揮してくれているのかはよく分からないんだけど、とにかく美味しく食べられるのならいいね。


「ウルフは初めて食べたけど、このタレによく合います」

「うん。甘辛がいい感じだ」

「はい」

「これ、カレーに入れても美味しいかもしれません」

「ああ、煮込むとまた違うのかな。今度やってみよう」


 コパンの食への探究が深まっている。それがなんだか楽しくて、可愛くて、頼もしくて、俺は笑いながらサニーレタスで巻いた焼肉を口に入れた。


「次は根菜が手に入るといいなぁ。大根とかニンジンとか、蕪もおいしそうだし、レンコンもあったらいいなぁ」

「そうですね! またアラタ様の欲しいものが手に入りそうだったらお知らせします! 私も牛の魔物を目指して頑張ります。あ、この前お借りしていたアイテムの本をみていたらラム肉というのがありました。ラム肉って何ですか?」

「ラム肉は羊のお肉」

「羊……では羊も見つけていこうと思います。羊の魔物は知っています」

「へぇ、どんな魔物なの?」

「サンダーシープといって、近づくと雷を落とします」

「そ、それはすごいね」


 雷を落とす羊。うん。やっぱり異世界ってすごいな。

 そしてそれを狩って食べようと思っているコパンもすごいなって思ったよ。さすが俺の『お助け妖精』だ。


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