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99 俺の選択

「そっちに行ったぞ、コパン」

「はい! では追いますので穴をお願いします!」

「了解!」


 コパンが風魔法でフォレストウルフの群れを追い、その先に俺が『アースフォール』ででかい穴をあける。一気に落ちた所にコパンが「おまかせあれ~!」と言いながらドオッと水を落とした。コパンが最近取得した『ウォーターフォール(水瀑)』だ。俺は無情にもウルフ達が這い上がってこられないように穴の上に蓋をする。これで戦いは終了だ。


「大丈夫みたいですね。蓋を開けてもらってもいいですか? このまま収納してしまいます。拠点に戻ってから解体をしていただきますね」

「了解」


 コパンはサクサクと水の中からフォレストウルフ達を引き上げて風でサッと乾かしながら空間収納にしまい。俺は空になった穴を綺麗に元に戻した。

 こういう連携も慣れてきたな。というか、森の中に入らなくても三日に一度は魔物たちからの挑戦という名の襲撃を受けているんだから、気を抜くつもりは全くないけど、手際は良くなってくるよね。


「やれやれ、二十頭位はいたかな。ハイウルフよりもフォレストウルフの方が大きいのは意外だったな」

「ハイウルフは険しい山の中に生息するので筋力は強いですけど、体はあまり大きくならないですね。フォレストウルフは森の中に暮らすので、餌も豊富ですし、大きな個体が強さの象徴になります」

「なるほどね」

「なのでフォレストウルフは毛並みもいいものが多くて毛皮は高額で取引されるし、肉も食べられます。楽しみですね!」


 コパンは相変わらずブレないな、と思いながら、俺はパンパンと埃を払って道に戻った。




『神気(低)』に入って十五日目に現れた三叉路。

 三本の道は真っ直ぐ進むと南方面の国へ、右へ進めば西方面の国、そして左に進めば東方面の国に行く事が出来る道だとコパンは言った。

 悩みに悩んで俺が選んだのは左の道。東側の国に繋がる道だった。

 実を言うとかなり南の三国に傾いていたんだけど、魔物の素材を売るならやっぱりしっかりした冒険者ギルドがある方がいいかなと思ったんだ。とは言ってもまだ具体的な行先は決めていない。

 今のところはダンジョンがあって冒険者の国と呼ばれているセヴォーロか、同じくダンジョンがあって一番大きな冒険者ギルドがあるっていうウィルクランのどちらかに行こうかなって思っている。


 冒険者になるつもりはないけれど、俺自身が現在十五歳っていう、この世界での成人の年齢っていうのを考えると、それが一番動きやすいと思ったのも理由の一つだ。

 十五歳の商人は多分難しいだろうけど、十五歳の冒険者ならどうにかなりそうな気がするのは考えが甘いかな。でもどうにかしなければ、だよね。


 それに俺にとっての利点はもう一つある。

 俺は魔法鑑定なんてしていないけれど、女神がくれたタグがあってこれがこの世界の身分証明証になる。でもギルドで依頼を受けたり素材を売ったりするなら、ギルド登録をしなくてはいけないらしい。そして登録が終わると渡される冒険者カードがあれば、一々タグを見せないで済むみたいなんだ。この仕組みはいいなと思った。

 俺のタグは女神の隠ぺいがついているんだけど、万が一ものすごい高ランクの鑑定を持つ人がいて、チートの部類に入るらしいステータスが分かっちゃうのは出来るだけ避けたい。

 だって女神がわざわざ『面倒ごと』なんて言っていたんだもん。ロクなものじゃないなって思う。

 だから避けられるものなら全力で避けたいし、その為に出来る事はしておきたい。

 俺は最終的にはスローライフを目指すんだし、どんな世界なのかを確認してどういう風に動いていけば隅っこで穏やかに暮らしていけるのかを考えるんだ。

 あくまでもスローライフ。サバイバルではないんだよ。そこは絶対に変えられないからね。


「コパン、今日はこの後、新しい拠点(セーフティーゾーン)が見つかるかなぁ」

「魔物と食べ物の『予見』はありましたけど、拠点はなかったですからねぇ」

「う~~~ん、じゃあ今日も難しいかなぁ。それなら早めに戻って解体をしちゃおうかな」

「それでもいいかもしれませんね。でもまだ明るいのでもう少し進んでみますか?」

「うん。じゃあそうしようか」

「はい」


 相変わらず肩の上に乗っているコパンに励まされるように俺は止まりかけていた足を前に進めた。

 この道を歩き出してからもう半月。ようするに『神気(低)』に入って一ヶ月が経とうとしている。それなのに見つかった拠点はまだ三つ。しかも東の道を選んでから見つかった拠点は一つだけなんだ。半月で一つ。地味にへこむ。

 初めて折れた道は進み始めれば今までと同じように一本道で、俺が行き先を決めかねているからなのかそれとも決めたらそこに繋がる道になる仕様なのかは分からないけれど、そこから更に分かれる事はなく真っ直ぐに続いている。何だか曲がった事は夢だったような気さえするけど、まぁ三叉路を東に選んだことは確かだし、進んでいく事も確かだからさ。でもそろそろ新しい拠点が出てきてほしいなぁと思っているんだよね。

 もっともコパンのマッピングのお陰で特に困ってはいないんだけどさ。


「ねぇ、コパン。選ぶ国によって違うとは思うけど、この神気が低いエリアはどれくらいで抜けるのかなぁ」

「分かりません。元々森を出るのに一カ月以上はかかるって言われたんですけど、どこから一カ月って出てきたのかなって謎ですし」


 ああ、コパンもそう思ったんだ。一ヶ月以上。まぁ、確かに数ヶ月以上でも一ヶ月以上だけどね。


「だよねぇ……。まぁ、色々な素材が取れたからいいけどね」

「ですね」


 そうして俺たちは顔を見合わせて噴き出すように笑った。



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四章スタートです。

東に舵を取った二人。さて、どうなるのでしょうか。 

引き続き応援よろしくお願いします。 


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