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リリア隊出動

 「さて、どうしましょうかねぇ?」

 軍議の為に集められたジャン達を前に、嘆くように言葉を絞り出した辺境伯。


 「何かいい手はありませんか?」

 

 辺境伯の問いに、周りに居る貴族達がいくつかの意見が出すが、どれも現状を打破するようなものではなかった

 目の前に現れた城が、強固なのは見ただけ分かる程。そう簡単に落とせるとものではない。

 この場に集まった全員が、黙ってしまった。


 (なあジャン? 思うんだけど、城の門を開けたら勝てるか?)

 (絶対ではないが、こちらに有利に働くのは間違い無い)

 (ふ〜ん。なら俺にアウグスト辺境伯と話させてくれ)

 (何か良い作戦が?)


 「まあな!」

 「ジャン子爵? 何か意見でもあるのですか?」


 「辺境伯に聞きたい。この城の門を開ける事が出来たら勝てるか?」

 「なるほど……守りの強いベラトリア連合国が造った城の門を、開ける事が出来ると?」

 「まあ出来ると思うよ?」

 俺は笑った。そんな俺を見て、辺境伯も同時に笑った。


 「どうするつもりなんですか?」

 その問いに俺は返答する。


 「俺の部隊に、女だけで出来た部隊がある。簡単に言えばそいつらを城に侵入させて内側から門を開けさせる」

 「何を言っているんだ子爵。そんな簡単に出来るはずがないだろ?」

 「どうして中に入れるなんて言えるんだ?」

 テーブルの周りを囲って立っている他の者達に否定される。


 「ケッケッケ。中々面白く、大変な事を考えますねジャン子爵。娼婦として城の中に侵入させるって事でしょう?」

 

 「正解!」

 

 (娼婦か……確かに悪くない。リリア達なら戦えるしね。女性だけの部隊ってのは、こんな使い方もあるのか)

 (そういう事だね)


 まあ、たまたまだけど!


 「悪くないですね。やってみる価値は十分にあります! お願い出来ますか?」

 「りょうかい」


 「アウグスト辺境伯! ジャン子爵に委ねるんですか?」

 「何を言っているんですか? 委ねるって程の作戦じゃありませんよ? それに子爵の持つ部隊でやるって言っているんです。反対する理由がありませんよ」

 

 「そうでは……ありますが」

 「なら決まりです。今日は解散します」

 俺は他の貴族達に睨まれた。睨まれるような事はしていないと思うけどな。正直言ってうざってぇ。


 自軍に戻ったジャンは、すぐにリリアを呼び出した。

 作戦の経緯をリリアに伝える。話している時のリリアは目を爛々をさせていた。作戦が作戦だけに、ジャンは慎重に話していく。


 「主様!!」

 リリアは両手で震える程強く拳を握り、そしてドンッと強く机を叩いた。

 「急にどう……した?」


 「やっと貢献出来ると思うと興奮しました。まさに私達にしか出来ない作戦じゃないですか!」

 再び拳を握って天井を見上げるリリア。鼻息が荒い。


 「そ、そうか……上手くやってくれ。頼んだぞ!」

 「任せて下さい! とびきり綺麗な子達を送り込みます!」

 「あまり無茶する……なよ?」

 「はっ!」


 リリアは勇ましく出ていった。随分張り切ってたなぁあいつ……。

 「リリアって真面目で堅ぶつだからさ、断れるかと思ったけど平気だったね」

 (それよりもいつでも突撃出来る準備をしておかないと)


 「そうだね」


 ――その日の夜。

 リリア達は、どこかの町にいる娼婦のような格好に扮して目の前にそびえ立つ城に向かって行った。きっと侵入出来るはずだ。いや、出来る! というよりしてくれないと困る。

 失敗したらあの時軍議に参加してたおっさん達に、何言われるか分かったものじゃない。文句をあーだこーだ言われたらぶっ殺したくなる。


 しばらくしてもリリア達が戻って来ないのを見ると、どうやら無事に中へと侵入出来たみたいだ。後は合図を待って侵入すればいいだけ。


  それから三日が経過した。


 「ジャン様! リリア達から連絡が届きました」

 ジェイドから紙を渡されて、ジャンは紙を開けて内容を読む。


 『まなけすふめうしなふるわ、ほらいせうむうへねなてれけおようそめた』

 なんだコレ……。


 「ジェイド、すぐに辺境伯と話せるか確認してきてくれ。大事な話があると」

 「分かりました」


 ジェイドは駆け出していく。

 (一体なんて書いてあるんだ? 全く意味が分からないんだけど)


 「暗号だよ! 『二日後の満月の夜、三本の火矢を放ったら開門する』って書いてある」

 そんな事が書いてあるのかよ……。読めねぇー!


 (って事は上手くいってるって事だな!)

 「そういう事」


 早速辺境伯にこの事を伝え、合図のある二日後の満月の夜を待った。

 嘘かとも思ったが、本当に綺麗な満月の夜。


 「ジャン子爵、今夜で間違いありませんよね?」

 「モチ! 開いたら全力で突っ込むよ!?」

 「ええ、分かっています」


 それぞれの部隊を東西南北に分け、すべての門から突撃する準備を整えた。

 世界が静まり返って誰もが眠りにつく夜更け頃、城から火矢が三本、月に向かうかのように放たれた。

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