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残された魔法

 エリーゼの地図を頼りに、三日かけて目的の場所に到着。

 山脈を二つ越え、田舎のさらに田舎にある山を登り、山頂に来ていた。

 

 周りを見渡しても、人が住んでいるような場所は一切見当たらない。気配があるのは野生動物だけ。そもそも人が住むには不便過ぎる場所だ。



 「ジャン様、本当にこんな場所にあるのでしょうか?」

 「ん〜どうだろう? でもこの場所で合っているはずだよ」

 「いい天気で、いい眺めだねジャン君! 戦いなんて忘れてさ、ゆっくりしようよ」

 ゲルテ伯爵は、気持ち良さそうに大の字になって寝そべった。


 (地図には他になんて書いてあるんだ?)

 「顔位の大きさの石に顔が彫ってあると。その中で女性が掘られてた石像を見つけ、魔力を注げ。と書いてある」


 (石像ってこんな場所にか?)

 「探してみようか」


 山頂を散策すると、確かに顔程ある大きさの石があちこちに転がっていた。

 その石を見てみると、人の顔が彫ってあったが、どれもが男の顔。

 そのままグルっと女の顔を探し回る。沢山ある中で一つだけ女性の顔をした石をやっと見付けた。


 「本当にあったね」

 (とりあえず魔力を注いでみろよ)

 「うん」

 ジャンはその石に魔力を注ぎ始めたが、何も反応しない。


 (何も起きねぇな……)

 「ユウタが魔力を流してみてよ」

 (俺が? 分かった)


 俺が魔力を流すと、突然石が光り出し、目の前が真っ白に。

 気付くと知らない場所に。


 誰かの部屋? だろうか。机にベッド。本棚などが置かれた部屋。

 部屋の中を見渡すが、誰かが居るような気配も様子もない。ホコリが溜まり、ホコリっぽい独特のニオイと、長年使われていないであろう部屋。


 机の上に置いてある巻物のような物が気になった。それだけが異様に綺麗だったからだ。

 巻物に近づいて手に取ると、ヒラリと一枚の紙が落ちた。俺は紙を拾って中身を見る。


 『この場所に訪れた偉大な者へ』


 『私は、とある国で魔法の研究をしていた。時空魔法についてだ。長年結果を出せなかった私は、国を追い出されてしまった。それでも私はこの場所で研究を続けた。私はどうしても過去に戻りたかったのだ』


 『私が求めた時空魔法は完成しなかった。ただ研究していく中で生まれた新たな魔法がある。それが時を操れる魔法だ。私が創った魔法をあなたに授けよう。スクロールを開けると魔法を覚える事が出来る。もし私の我儘を聞いてもらえるなら、時空魔法の研究を受け継いで欲しい。そして過去に戻り、私の娘と妻に謝って欲しい。すまなかったと』


 『もうじき私は死ぬ。そなたに託したい。魔法使いマロン』 


 「時を操れる魔法だって? 本当かよ」

 (不可能だと言われている魔法研究の一つだよ)

 「とにかくこいつを開いてみるぞ?」


 俺は少し緊張しながら、縛られた紐を緩めてスクロールを開いていく。

 中身には何も書いていなかった。ただのイタズラか。騙されただけか?

 そう思っていると、スクロールから光り輝く文字が浮かび始めた。何の文字で、なんと書かれているのかは分からない。文字は空中に舞い始め、文字達が俺の中へと入り込んできた。


 不思議な感覚だった。なんと表現すればいいのか分からない。

 ただ一つ分かるのは、時を操る魔法をこうすれば使える。という感覚が宿った。


 「ジャンも感じたか?」

 (うん。なんか変な感じだけど、確かに時魔法を使える感覚はあるよ)


 「戻ったら試してみるか……それよりもどうやってここから出ればいいんだ?」

 部屋にはドアや窓らしいものは一切なく、出入り口らしきものは見当たらない。


 (あっち、部屋の奥に進んでみて? 何か魔力を感じる)

 「えっ!? どっち!?」

 (あっちだよあっち!)


 俺はフラフラと部屋をさまよい歩いていると、床に魔法陣が現れて光に包まれた。

 

 ――。

 「ジャン様!? ジャン様!?」

 ジェイドの声に俺は目を覚ました。


 「ジャン様! 無事ですか? 急に姿を消したらと思ったら今度は倒れていたんです。びっくりしましたよ……」

 「倒れていた? そうか……」


 光に包まれてからの記憶がない。俺は倒れていたのか。

 「ジャン君……大丈夫かい?」


 「よっと!」

 …………。


 「おいジャン。本当に時間が止まっているぞ」

 さっそく俺は時魔法を使ってみた。すると、ジェイドとゲルテ伯爵の動きが完全に止まった。近くに生えている草も全てが止まっていた。


 「これ凄すぎじゃないか?」

 (凄いなこの魔法……)

 時間が止まっている間に、二人の背後に移動する。


 「ほいっと!」

 魔法を解くと、止まっていた時間が再び動き始める。


 「あれ? ジャン君?」

 「こっちだよ!」

 ジェイドとゲルテ伯爵は振り返り、何か不思議そうに俺の顔を見つめる。


 なるほどな。反則級に使える魔法だなこれは。

 「もう用は済んだ。帰るぞ二人共」


 エリーゼの言う通り、戦況を変えられるだけの魔法を受け取った俺は、皆が待つ場所へと急いで戻る事にした。

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