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故郷ダラム

 山を越え、数日かけて到着したジャンの故郷は、辺りは畑が広がり、ほのぼのとした農村地帯だった。


 馬車が止まると、目の前には大きな屋敷が。

 大きな家だが、壁のところどころが剥げていて、ただ大きさが目立つよな家だった。

 俺は馬車から降りて、屋敷の入り口へと向かう。


 「お兄様ーー!!」

 ジャンと同じように白髪はくはつの長い髪をした小さな女の子が、お兄様呼んで抱きついてきた。その子の目と頬は赤かった。


 「久しぶりだね、エミリ。元気にしてたかい?」

 ジャンがエミリと呼んだ女の子は、泣きじゃくっていた。


 奥には若い兵士と、見るからに執事といった白いひげを蓄え、歳を取った男性が近づいてくる

 「ジャン様お久しぶりです」


 「ジャン様……旦那様の事はお聞きになりましたか?」

 「ああ、ルイス殿下から聞いたよ。ダル公国との戦で戦死したと……父上の遺体は?」

 「屋敷の中にあります」


 ジャンが走り出した。屋敷の中に入ると何人かのメイド達がそこには居て、その中心には木の箱に入れられている男性が。きっとジャンの父親なのだろう。

 「父上ーーーー!!」

 箱に飛びついたジャンは、そのまま大きな声で泣き叫んだ。


 しばらく経って、ようやくジャンが落ち着きを取り戻した。


 (俺は生まれた時から親も家族も居なかった……だから家族っていうものがどんな存在とか正直分からない。だけどジャンにとって大切な存在なのは分かった。それでもなんて声をかけていいのか俺には分からない……)


 (いや、いいんだ。戦争だったんだ……人は死ぬさ。覚悟は常に出来ているつもりだったけど、実際は出来ていなかった。僕が弱い、ただそれだけだよ)


 「ジャン様、こんな時で本当に申し訳ありませんがお話したい事が」

 若い兵士がジャンにそう告げる。


 「分かってるよジェイド、戦があるんでしょ? 今行こう」

 ジャンは屋敷の二階に上がると、案内された部屋に入る。


 部屋の中央には大きな地図が置かれたテーブル、周りには何人もの甲冑を着た兵士がテーブルを囲っていた。


 「ジャン様!」

 「「ジャン様」」

 ジャンは軽く挨拶をすると、一つだけ置かれた椅子に座った。


 「それで? 今は一体どういう状況なの?」

 「……」

 皆が一様に口を閉ざしていた。


 「ジェイド!?」

 「はっ! ダル公国は今まさに侵攻中でこちらに向かってきております。到着するのは早いと七日位かと思います」


 「それで? 相手の数とこちらの数は?」

 「ダル公国は一万人以上の数で攻めてきております。こちらのアウル軍は今は千人にも満たない程度です」


 (ゲッ!! 何その数の違い!! ヤバすぎじゃん!!)

 「……ジェイド。父上はどうなって戦死したの? いつも小競り合いだったダル公国と何があったんだ?」


 「いつものなら千人程度で攻めてくるダル公国ですが、今回は突然一万人以上で攻めてきたんです。初めは嘘かと思いましたが、実際に一万人以上で侵攻してきました。援軍を呼ぼうにもここは僻地で、それに……」


 「ジェイド? はっきり言ってくれていい」


 「アウル家は他の貴族に良く思われていませんし、特別仲が良い貴族もいません。ですから援軍はこないと判断したんです。それで数では圧倒的に不利ですからガレオ様は奇襲をかけることにしたんです」


 「夜襲をかけようと夜中に相手の陣地に乗り込んだ瞬間、見たこともない大きな結界のようなモノが敵の陣地を包み込み、ガレオ様と分断されてしまったんです。結界内にはガレオ様と数十人の兵士だけが取り残され、何をしても我々は結界の中に入る事が出来ませんでした……」


 「ガレオ様は我々に領地に戻れ! この事を国に報告、息子を頼むと、そうおっしゃって我々は為す術もなく撤退する事しか出来ませんでした。数十人で再び様子を見に戻った時には、ガレオ様の遺体が綺麗に先程の箱に入れられて、『持って帰れ』と言わんばかりに置かれていました」


 「そうか……」

 (奇襲に失敗して、お前の父ちゃんはやられたのか。そういえば母ちゃんはいないのか?)

 (妹のエミリを生んですぐに亡くなったんだ。アウル家は僕とエミリしかいない)


 「それでさらに言いにくいんですが……」

 「どうしたんだ?」


 「それは私からお話ししましょう」

 「ベイルどうした?」

 ベイルと呼んだ、先程下で会った歳を取った男性が話し始める。


 「この非常時に大人数の山賊が現れ、村々を襲っているとの報告を受けました」

 「こんな時にか……」

 「残念ながらこんな時だからでしょう」


 (へぇ〜。山賊とかいるのか面白そうだな)

 (面白くないよ。僕はもうパニックで頭がいっぱいだよ)

 (なんだよ怖気づいたのかよ!)

 (当たり前だよ)


 俺は背もたれに寄り掛かり、地図が置かれたテーブルに両足をドンッと乗せた。

 「なあ! お前らその戦に居たんだよな? 今ここで勝てる作戦思い付くやついるか?」

 急に変わった俺の態度に全員一様に驚いた顔をしたが、誰も口を開ける事はなかった。


 「つまり勝てる作戦が今の所一切ないって事だな! よし分かった。今から山賊狩りに行くぞ」

 「今からですか!?!?」

 ジェイドが声を上げた。

 「戦まで時間がないんだろ!? さっさと片付けてやる。それで山賊はどこにいるんだ?」


 「使われなくなったベルト鉱山を住処にしているそうです」

 「よし案内しろ。今すぐ行くぞ! 付いて来れる奴は付いてこい」

 すぐに準備を整えた。


 山賊狩りには、五十人程付いて来てくれるみたいだった。全員が馬に跨り出発する。

 「じゃあ行こうか!!」


 馬に揺られながらどの位の時間が経過したかは分からない。

 だがすでに空は赤く染まり、もうすぐに夜になろうとしていた。


 (ユウタ山賊退治とか、急に大丈夫なの?)

 (さあどうだか、でも戦ってみたいんだよ。それに山賊って事は殺しても問題ないよな!?)

 (問題はないけど……)



 「ジャン様、到着しました。あそこに見えるのがベルト鉱山の入り口です」

 「へぇ〜。じゃああの中に山賊共がいるんだね」


 「ええ、数までは把握していませんが、鉱山の広さと今までの被害を考えると百人位はいるかと思われます。どう攻めるつもりなんでしょうか?」


 「どうって普通にこのままいくつもだけど! この新しいダガーも試しに使ってみたいし」

 「作戦もなしに突っ込むつもりなんですか?」


 「なに!? ジェイドビビってんの? ビビってるならここで待ってれば? 俺は行くけど」

 馬から俺は降りて、そのまま鉱山の入り口へと向かって歩いていく。


 入り口には、見張りと思われる大男が二人立っていた。

 俺は月明かりに照らされながら、堂々と真正面から二人の前に姿を見せた。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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