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突然の自覚と成長

 目の前にいるコリーと言う名の男。

 長い黒髪を後ろで縛り、綺麗なポニーテールが特徴的だ。


 歳は俺より少し上といった位だろう。

 先程からの余裕のある態度、不意打ちへの対処を見る限り決して弱くない。


 そう、決して弱くない……。

 俺は縄跳びをするかのように軽く、トントンっと飛んでみせた。


 「なんだよ!? 攻撃してこないのか?」

 「コリーとか言ったか? お前から来いよ! 俺が先に攻撃したら、お前の攻撃見る前に殺しちまいそうだからな」


 「ハッハッハ。お前凄い自信だな! 俺の事知らないだろ? 後悔しても知らないぞ!」

 コリーは俺に斬りかかってきた。


 俺は剣の軌道を完全に見切りって、指が一本入るかというギリギリで避ける。

 空を切ったコリーが目を見開く。


 そして俺の方を見た瞬間、俺から距離を取った。


 「へぇ〜。少しはやるようだな!」

 俺は驚いていた。


 一体何に?

 急激な成長にだ。自分自身で驚く程、強くなっている。


 何か新しい戦い方を学んだ訳でもなければ、新たな魔法が使えるようになった訳でもない。体が成長した事で今までよりも強くなったという事ではない。


 でも確実に分かった事がある。

 目が確実に良くなった。


 筋肉が付けば前よりも強くなったと実感しやすい。

 速さもそうだ。スピードが上がれば前より成長したと分かるものだ。


 しかし、目が良くなったというのはあまりにも分かりづらい。

 ただ俺は、コリーの攻撃を避けた瞬間気が付いた。


 以前よりも動きが細部まで見える事に。切っ先まではっきり見えていた。

 そして、限りなく最小限で避けられる確信があった。

 俺は仮面の中で笑みを溢す。


 「クックック! お前って最高に運が悪いな!」

 「あ!? それはお前だろ!? ここで俺達に会ったんだからよ!」

 

 コリーは再び俺に斬りかかってくる。

 決して遅い攻撃ではない。むしろ早いと言える。


 だがどういった攻撃を俺に仕掛けてきて、どういった軌道を描くのかはっきり見えていた。

 ダガーの切っ先を使い、軌道を少しだけ変えてやる。


 軌道を変えられたコリーの剣は、壁に突き刺さった。


 (ユウタ一体何があったの!? 戦い方が前と違う!?)

 (色々と試したい事があるんだが、コイツじゃ弱すぎて練習にもならねぇ)

 (弱い? コリーが?)


 バリーン!!

 部屋の中でガラスが割れる音がした。


 一瞬部屋を見ると、ロベルタ達の姿が消えていた。

 「よそ見なんて余裕だな。そんなに一緒に居た女が心配か? サリーが相手なら、あの女は終わりだよ!」


 「ゴチャゴチャうるせーよ! お前今まで負けた事がないだろ!?」

 「負けた事? 負けたら俺はここにいねーよ!」


 「じゃあ今日、敗北と死ってやつを俺が教えてやるよ」

 「あっ!?」

 

 「はい一回目!」

 俺はコリーが気付けない程のスピードを使ってコリーの背後に移動し、ダガーを首元につける。


 首筋からツーと血が垂れた。


 コリーが俺と距離を取る。

 先程とは明らかに顔付きが変わった。


 「本気で来いよ!」


 スピードが上がった攻撃をコリーが仕掛けて来るが、俺は軽やかに躱していく。

 不意を突いて何度も何度も首元の皮一枚分だけダガーで斬り裂いた。

 コリーの首が傷だらけになっていく。


 「なんだがかわいそうだから治してやるよ」

 回復魔法を使って傷を治してやった。


 (ユウタ、余裕なのはいいけど早く始末してルイス国王を探しに行かないと……)

 (そうだな分かった)


 「本当はもっと遊んでやりたいが、一瞬でケリつけさせてもらう。最後に言い残す事あるか?」


 「ハッハッハ! クソ喰らえ!」

 コリーは、左手の中指を俺に向かって立ててきた。

 

 刹那……。





 コリーの首が宙を舞う。

 「ふぅ〜」

 深く息を吐いた。



 「さ〜てロベルタはどうなってるかな?」

 俺は部屋へと入り、割れた窓に近づいて外を見る。

 

 二人は中庭で激しく戦っていた。


 (ユウタ助けに入らないの?)

 「馬鹿か! そんな事したら、後でロベルタに色々文句言われそうだろ?」


 (確かに……)

 「だろ!? それにしてもサリーって奴意外にやるなぁ。ロベルタと互角に渡り合っているぞ」

 (ルイス国王の命を狙っている刺客でしょ? 弱い訳はないよね)

 「まあそうだな……それよりも」


 「おーいロベルタ!! 早く片付けろよ!!」

 二階の窓から大きい声でロベルタを煽る。


 ロベルタはチラッとこちらを見た。

 その隙をサリーに狙われる。


 「うわ〜。なんか後で言われそうだな」


 見ている限り使っていなかった炎魔法を、ロベルタは使い始めた。

 勝負は一瞬だった。


 剣技も凄まじいロベルタが、同時に魔法で使い始めたらたまったもんじゃない。

 魔法を使えると思っていなかったか、急な魔法攻撃にサリーの対処が遅れる。


 その隙をロベルタは見逃さなかった。

 魔法を使いながら距離を詰め、最後は剣でサリーにとどめを刺した。


 勝負が決まった事を見届けて俺は窓から飛び降りて、ロベルタに近づいていく。


 「へい! やったなロベルタ!」

 俺は景気良くハイタッチしようとしたが、完全にスルーされた。


 「ジャンが早く終わるなんて思わなかったわ。相手強かったでしょ?」

 「サリーの方が強いとか言ってたぞ」

 「そうなの? とにかくお互いほとんど被害がなかったから良かったわ」

 

 「それよりこれからどうすんだ? 一体何処にルイス国王居るんだ?」

 「……」

 沈黙が流れる。



 「もしかしたらだけど……思い当たる場所が一か所だけあるわ」

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