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王城では

 王都に入り、出来るだけ人目を避けて王城へと目指していく。

 国境付近ではまだ大きな戦をしていて、さらに現在進行系で王都内に刺客が居るかもしれないと言うのに、市民の生活はいつもと変わらず賑わっていて平和そうだった。


 中央通りから横道に逸れて、裏道に入へと入っていく。

 「王城まで案内してくれよロベルタ」

 「何でよ! ジャンが先頭を切りなさいよ」


 「王城までの行き方がイマイチ分からねぇ〜からだよ! ロベルタは王都に住んでるんだから余裕だろ?」

 

 「何で行き方が分からないのよ! しょうがないわね付いて来なさい」

 そう言ってロベルタが駆け出していく。

 俺は黙って後を付いて行った。


 しばらく道を進んでいくと、王城の裏門に到着した。

 「裏から入っていくわよ」


 「ちょっと待てロベルタ! 何かがおかしい」

 「おかしい?」

 

 王城だというのに人の気配があまりにも無さ過ぎる。

 いくら戦で多くの人が出払っているとはいってもおかしい。


 「人の気配が無さ過ぎる。というか門番はいないのか? 武器を出していつでも戦える準備を整えた方がいい」

 「……分かったわ」

 ダガーを抜き取り、臨戦態勢を取りながら裏門から中へと入り、進んでいく。


 召使いやメイドが普段出入りしているような簡素なドアを見つけ近づいた。

 ロベルタが警戒しながらドアを開けると簡単に開いた。


 扉の先は、テーブルと簡素なキッチンがあるだけで休憩所のような場所だった。

 「鍵がかかってないって事があるのか? それに警備兵もいないぞ」

 「確かにおかしいわね……とにかくもっと中へ行ってみましょう」


 隣へと続くであろうドアを開けた途端、ヌメッとした臭いが鼻を刺激した。

 俺は何度も嗅いだことがある臭いだった。


 そう、死臭だった。

 それも何日も放置され、腐った臭いも混じった臭い。

 大きな厨房に何十人という死体と、そこら中に飛び散った血が固まっていた。


 「!?!?!?」

 ロベルタの口を咄嗟に抑えた。


 「お前馬鹿か! 大声出したら敵に居場所を教えてるようなもんだぞ!」

 俺は小声で怒った。


 「騒ぐなよ? 出来るだけ小声で話せ! いいな?」

 ロベルタが頷いたのを確認すると俺は手を離す。


 どかした瞬間、グーで頬を殴られた。

 「お前殴んなよ!」

 「勝手に人の顔に触れないで!」


 「お前がいきなり大きな声出そうとしたからだろ! ちょっとは考えろよ!」

 「うるさい!!」

 空気が悪くなる。


 「こんな事してる場合じゃねぇ! ルイス国王を探すぞ」

 「分かってるわよ」


 厨房の部屋から出ると、王城内の廊下へと出る。

 廊下に出てもやはり人の気配はしなかった。


 「ルイス国王がいそうな場所分かるか?」

 「流石に分からないわよ。いつも会っていた部屋に行ってみる?」

 「とりあえず行ってみるか」

 誕生日会で使っていた部屋に行ってみる事に。


 廊下を進み角を曲がると、思わず立ち止まってしまう光景が目の間に広がっていた。

 「ひ……酷い」

 ロベルタが顔を歪める。


 そこには兵士、メイドや執事などの死体が転がっていた。

 俺は死体に近づきしゃがみ込み、臭いを確かめ死体に触れた。


 「昨日今日の死体じゃないのは確かだな……考えても仕方ないか。今は急ごう」

 共に部屋に急ぐ。


 目的の部屋に到着する。

 俺は両手を扉を開けた。


 床に倒れて死んでいる男が二人と、椅子の背もたれにより掛かりながら喉と心臓に剣が刺さったルイス国王の姿がそこにはあった。


 「おいおい……マジかよ……」

 俺は言葉を失い、ロベルタは隣で倒れ込むそうに膝を付いた。


 (ユウタ! ユウタ!)

 (どうした?)

 (側までちゃんと近づいてみて!)

 (分かった)


 ルイス国王の死体へと近づく。

 完全に息絶えている状態だった。俺の回復魔法で生き返させたりは不可能だ。


 (ユウタ、その死体のお尻見てくれない?)

 (はぁ? なんで!?)

 (いいから早く!)

 (んだよ! 分かった……)


 俺は死体から剣を抜き取り、床にうつ伏せにして、服を脱がしてお尻を出した。

 (出したぜ!? 何かあるのか??)


 (ユウタ……コイツはルイス国王じゃない。影武者だ)

 (なにっ!? 本当か!?)


 (間違いない)

 (何でそんな事ジャンに分かんだよ)


 (本当に小さい時に一度だけルイス国王と一緒にお風呂に入ったことがある。その時に教えてもらったんだけど、王族は生まれた瞬間、紋章を体のどこかに刻印するんだと。ルイス国王はその紋章を右のお尻に入れたんだよ。僕はそれを見たことがあるんだ)


 「へぇ〜。そんなのがあるのか! って事は偽物かコイツは」

 (そうだね。それにルイス国王がこんな無様な殺された方はしないよ。戦った形跡もないなんてありえない)


 「なるほどな。ロベルタ! 喜べ! コイツはルイス国王じゃない! 影武者だよ!」

 「今なんて!?」


 「だから〜コイツはルイス国王じゃないって」

 「何で分かるのよ!?」


 (ロベルタに教えてもいいのか?)

 (侯爵だしいいんじゃない?)

 (軽いな!)


 「ロベルタこっちこい!」

 お尻を出している死体の方へとロベルタを呼び付ける。

 しかし、ロベルタは目を逸らした。


 「おい! よく見ろって大事なんだから! よく聞けよ。ルイス国王は右のお尻に紋章が入っているだってさ。でもこいつにはその紋章がない。だから偽物なんだって!」


 「なんであなたがそんな事知っているのよ」

 「昔一緒に風呂入った時に教えてもらった」


 「そういう事ね……でも本当に良かったわ。ルイスはまだ生きてるのね」

 「まだ可能性があるってだけどな。それよりもどこ探せば――」


 「へぇ〜。まだ生き残ってる奴がいたのか!」

 声がした方に目を向けた。


 ドアに背中を預けながら腕組をし、リラックスしながらこちらを見る男の姿が。

 声を聞くまでその存在に気付く事が出来なかった。


 「コリー! どうしたの〜?」

 もう一人現れる。


 「あっれ〜? 城の人間は全員始末した筈じゃなかった?」

 「だと思ったんだけどねサリー。どうやらまだ居たみたいだ。いや、外から来たのかも」


 「そんな事はどうでもいいや。私はそこの女でいい?」

 「じゃあ俺は奥にいる男な!」


 「勝手に話進められてるぞロベルタ」

 「別に良いじゃない。私はどっちでもいいし!」


 「あいつらが言っている通り、女の方はロベルタに任せる! 油断するなよ」

 「誰に言ってるのよ!」


 「おいおい! こいつら俺達に勝つつもりだぞサリー」

 「いつもの事だよコリー。でもすぐに後悔する事になるよ」


 ――。


 俺は話をしている最中に不意を突き、男に斬りかかる。

 

 コリーと言われていた男は、俺のダガーを剣で受け止めた。

 「そんな慌てなくてもちゃんと相手してやるよ!」


 俺は廊下の壁まで押し込む。

 「初撃を受け止めたのは褒めてやるよ!」


 「ハハハ! 褒めてやる? 今から俺に殺される奴にそんな事言われても嬉しくないわ」


 その言葉を聞いて俺はニタァと笑った。

 さあ、楽しい時間が始まる。

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