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ロア王国の危機

 謁見の間は、集められた貴族達でギュウギュウだった。

 その場の雰囲気は異様で、緊張感しか漂っていない。


 ルイス国王が現れると、全貴族が跪き、ルイス国王を迎えた。


 「皆、面を上げよ! 立ち上がり楽にしてくれ!」

 ルイス国王の言葉に反応し、全員立ち上がる。

 国王はそのまま席に着くことなく言葉を続ける。


 「今集まっている中で耳している者もいるかと思う。時間が迫っているので単刀直入に言うが、隣接している隣国の四カ国、ダル公国、ベラトリア連合国、ミリア聖国とテンダール魔法国の四カ国が同盟を組んで四カ国による連合軍が今現在、ロア王国に攻めてきている」


 その言葉に会場がざわつき、さらに緊張感が増した。


 「いいか!? これは嘘でも何でもない! これよりロア王国の全勢力をかけて四カ国と戦争を起こす事になった。この一戦に負けたらロア王国は滅亡する!」


 (おいおいマジかよ……なんだよそれ!)

 (このタイミングを狙われたんだよきっと……)

 (どういう――)


 「そこで三人の大将を立てる事にした。呼ばれた者は前に出てくれ! シャイデン・クロウ前へ!」

 「はっ!」

 呼ばれて前に出てきた人物は、女性かと思うほど綺麗な顔つきの男で、ロングヘアーの青い髪をなびかせていた。


 クロウ、クロウ……?

 (もしかしてレオンの父親なのか?)

 (そうだよレオンの父親だよ)


 「ロア王国の正面に攻めてくるミリア聖国とテンダール魔法国の連合軍の相手をしてもらう!」

 「かしこまりました」


 「次はバルナ・ホーク前に!」

 「はい!」

 一際目立つ巨大な男が前に。

 赤い髪と髭、体毛も赤毛で濃く熊のような体型の男。

 まさに武人という言葉が似合うような人物だ。


 (えぇぇぇぇぇ、ロベルタのお父さんって事!?)

 「そうだね」


 「バルナよ。ダル公国の侵攻を止めてくれ!」

 「任せて下さい!!」

 謁見の間に響き渡る大きな声で答える。


 「最後にアウグスト・ミノルスキー」

 (えっ!? 今、アウグストって言ったよな!?)

 (言ったね。アウグスト辺境伯だよ)


 「はい」

 細長いヒョロヒョロの猫背のアウグスト辺境伯は前に。


 「此度もベラトリア連合国と一戦交えてくれ。そなたがこの国で一番ベラトリア連合国の事が詳しい! 頼んだぞ!」

 「ルイス国王の御心のままに」


 「この三人を大将とし戦ってもらう! ここにいる全員が参加し、全勢力を持ってこの危機に立ち向かう! 我々に敗北はない必ず勝利する!」

 国王は声を張り上げ、檄を飛ばす。


 「「「はっ!」」」

 全貴族が再び、国王の言葉に跪いた。


 自分達が、どの大将の下に配属されるのか告げられていく。

 アウル軍は、アウグスト辺境伯の下に入る事になった。


 全ての要事が済むと、戦場へと向かう為にそれぞれの領地へと戻る。

 ジャンも例外ではなく、すぐに戦の準備を始めた。


 「お兄様、また戦に行くんですか……?」

 エミリが今にも泣きそうな顔でこちらを見ている。


 「ごめんなエミリ、王様からの命令なんだ……すぐに帰ってくるからな」

 「ちゃんと帰ってきて下さいね? 帰ってきたら肩車して下さいね?」

 「約束するよエミリ」

 ジャンはエミリを抱きかかえた。


 後ろにはベイルやメイド、ヘレナも見送りに来てくれていた。

 立ち上がってもエミリはジャンの足にしがみつく。


 頭を触れるジャン。

 「ヘレナ嬢は戻らなくて良いのですか? 父上も出陣されるでしょうに」

 「私の父上もロア王国も、そしてジャン様も勝利して無事に戻ってくると心から思っております。ですので私はダラムの温泉事業を進めます!」


 「分かった……ベイル、ヘレナ嬢。何かあった時はエミリを頼む」

 ジャンは頭を下げた。


 「ジャン様……ご武運を」

 馬に跨り、アウル軍はダラムを出陣していく。


 辺境伯が待つ場所までは遠い道のり。

 ジャンの緊張が伝わってしまったのか、軍の行軍はいつもより緊張感が漂っていた。

 こんな時に空気を読めないテディはとても助かる。


 我軍のお笑い担当である事は間違いない!

 アウル軍は、アウグスト辺境伯の待つルズベリーに到着する。


 すでに巨大な町になっている場所に基地を作り、テントの中へと入りやっと落ち着く事が出来た。

 「疲れたね……」

 (でもこれからが本番だろ?)


 「そうだけさ……今この瞬間だってロア王国滅亡の危機なんだろうけど、どこか上の空というか実感がないんだよね」

 (全てが急すぎたからだろ? 多分)


 「ジャン様! ジェイドです。軍議を始めるからすぐに来てほしいと」

 「休む暇もないか……分かったすぐ行く」


 「ジェイドも一緒に来てくれるか?」

 「お供します」

 すでに日は傾き、夜の匂いがしてくる時間帯だった。


 アウグスト軍の兵士に案内され、テントの中に入ると、中央には大きなテーブルと地図が置かれている。

 周りには少なとも十人以上がテーブルを囲い、奥の椅子にはアウグスト辺境伯が座っていた。


 テントに入った瞬間、中にいる全員が一様にジャンの事を見た。

 「やあやあジャン子爵、一番遠い所からありがとうございます」

 手を上げて、不気味な笑顔で迎えるアウグスト辺境伯。


 「いえ、お待たせして申し訳ありません」

 「早速ですがこちらに来てください。地図を見てください」

 テーブルに近づくと、テーブルの上に置かれた大きな地図には、ロア王国全土と隣国する国の分かっている地形の情報が書かれていた。


 「ここに集まったくれた貴族の方々は、以前私と一緒に戦ってくれた事がある方々です。そして皆さん私の事が嫌いでしょう! ケッケッケ」

 不気味な笑い声を上げる辺境伯。


 「あぁ〜、新しい国王は面白い御方だ。嫌いだとしても私の実力は分かってくれていると思っています! だから集められたのでしょう」

 ギョロギョロした目で周りを見渡していく。


 「はっきりいいましょう! ロア王国は大ピンチです! 冷静に考えたら勝てません!」

 突然の発言に周りがざわついた。


 「私達の全軍は四万いきません。それに比べ、ベラトリア連合国は十五万の軍勢で攻めてきています。あぁ〜とてもピンチですねぇ〜」


 (何それ! 普通にやばくね?)

 (そんなに差があるのか……)


 「さて、どうしたものでしょうか……」

 辺境伯が手をおでこに当てて、考えているような素振りをみせる。


 「アウグスト辺境伯!! もしかして作戦がないんですか!?」

 「ん〜? どうでしょうか?」


 「十五万の軍勢にどうやって勝つつもりなんですか?」

 「そうだ! どうするんだ!」

 何だかテーブルが騒がしくなっていく。


 「ケッケッケ! ケッケッケ!」

 何故か笑い出す。


 「いやぁ〜ごめんなさい! 別に笑いたかった訳ではありません! 堪えきれなくなってしまって。ケッケッケ、ケッケッケ」

 テーブルをバンバンッ。と叩いて笑うとやっと落ち着きを取り戻したようだ。


 「バルナ・ホーク侯爵の軍は十二万、シャイデン・クロウ侯爵は二十万の軍勢でこの戦争に挑んでいます。しかし、ここはたったの四万です。皆さんはどう思いますか?」

 辺境伯に問いかけに対して、誰かが口を開ける事はなかった。


 「見捨てられた? いえ、違います! ここが最も優秀な人が集まっているのです。ですから四万で足りると国王様が判断されたのです。我々が最も期待されていると言っていいでしょう」

 殺伐とした雰囲気が、その発言によって一気に和らいだ。


 (嘘だな!)

 (嘘だね)


 「辺境伯。仮にそうだとしても、難しい戦なのは変わらないでしょう? どうするつもりなんですか?」


 「え〜そうですねぇ〜。ジャン子爵に任せましょう!!」

 アウグスト辺境伯がそう言ってジャンを指差した。


 全員がこっちを向いた。

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