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動き出すロア王国

 「ルイス殿下、成人おめでとうございます! ちゃんと挨拶してませんでしたね」

 「ありがとうジャン。……顔の傷どうしたんだ?」


 「ベラトリア連合国との一戦で少しヘマしまして……」

 「そうなのか……取り敢えず座ってくれ」

 ジャンはソファに腰掛ける。


 「今はまだ秘密の事なんだが、父上である国王が病に冒されていて、そんなにもう長くはない……私が王になるのもそんなに先ではない。王になったら私は宣言していた通り大陸の統一を目指す」


 「私達を集めたのは、その覚悟をわざわざ伝える為に?」

 「それもあるが、ここにいる皆には隠さずにいきたいと私は思っている」


 「それはつまりどういう事でしょうか?」

 レオンが殿下に尋ねる。


 「率直言おう。ジャンにはジェランコ侯爵の暗殺を頼みたい」

 「「!?!?!?!?」」


 「いつまでにですか?」

 ジャンは落ち着いた声で殿下に言葉を返す。


 「ちょっと待ってよルイス! ちゃんと説明しなさいよ」

 「落ち着いて下さいロベルタ様。ルイス殿下の命令を、子爵である私がそもそも断れませんよ」


 「そういう事を私は言ってるんじゃない」

 「そうだな……少なからずちゃんと説明しよう」


 「私が王になった時、自由に戦争を起こせるのか? 王だとしても簡単に出来るものではない。相手から仕掛けられたなら仕方ないが、自分達から仕掛ける戦争はどうしても貴族達の協力と賛同が必要になる。そうなった時、反対派一派がいる。それがジェランコ侯爵が率いる一派だ」


 「父上は戦には元々反対だったお人だったから、その時に勢力と権力を伸ばしていった貴族なんだ。この一派がいる限り、私が思う描くように進める事は出来ない。だから反対派一派の筆頭であるジェランコ侯爵を暗殺してほしいんだ」


 「暗殺までする必要があるの? ジェランコ侯爵を説得すればいい話じゃない!」

 

 「そんな事をしている間に時間は過ぎていくんだよロベルタ! 大陸の統一なんて偉業を達成する為には説得なんて悠長な事をしている暇なんてない!」

 「ルイス殿下の言ってる通りですよ。私は別に構いませんよ?」


 「ジャンいいんですか? もし見つかればあなたは処刑ですよ?」

 「見つかれば! ですよね?」

 「見つからない自信があると?」


 (ユウタは自信あるだろう?)

 (暗殺なんてやった事ないけどな! まあやれるんじゃないか?)


 「仮に見つかったとしても、バレない自信があります。誰がやったのか? 特定されません」

 「ジャン、任せてもいいのか?」


 「お任せ下さい殿下……早速今夜行ってきますよ」

 「今夜ですって!? あなた馬鹿じゃないの?」


 「馬鹿とは人聞きが悪いですね」

 「きっと逆だよロベルタ。ジャンそういう事だろ?」


 「殿下の考えている通りかと」

 「どういう事??」


 「今日は殿下の誕生日会で国のあちこちから貴族達が王都に集まってきています。今日殺したなら犯人を特定するなんて不可能に近いって事ですよ。どの貴族も少なからずは敵が居ますからね。ジャンが今日って言っているのはそういう事ですよね?」


 「レオン様の言うとおりです」

 「レオン様……あなたにそう呼ばれるのは違和感ですね」


 「こんな難しい任務を頼めるのはジャンしかいないんだ。私にはまだ味方が少ない……」

 ルイス殿下は弱々しく言葉を発する。


 「私に任せて下さい!」

 ジャンは自信満々に答えた。


 (やるの俺なんだろ? なんでそんな自信満々に言うんだよ)

 (ユウタに同じようにやられた事があったから)


 「任せたぞジャン!」

 「それでは私は、早速これから行きますので先に失礼しますよ」


 「ジャン! 気をつけなさいよ」

 「言われなくても分かってますよ」

 部屋を後にし、城を出てまずは宿に戻る事に。


 「今日はお疲れ様みんな。疲れたから俺は先に休ませてから。明日は好きに過ごしていいらしいからリリア達は王都観光にでも行ってきたらいいよ」


 「いいのでしょうか?」

 「全然いいでしょ! 好きにしなよ。それじゃあおやすみ〜」

 部屋に入り、ドアを閉めた。


 「ふぅ〜」

 俺はため息をついた。


 「パーティーが終わってすぐに大変な仕事ってキツイな! というより場所わかんの?」

 (大丈夫だよ知っているよ。侯爵の家だからね)


 「それじゃあ準備しますかぁ〜」

 夜に紛れる黒い防具に身を包み、夜が更けるのを待った。


 部屋の窓から月光が部屋を照らしていく。

 「そろそろ行くか」

 窓を開けて、窓から外へと飛び出した。


 建物の屋根から屋根へと走り飛んで移動していく。

 空を見上げると、今宵は綺麗な満月だった。


 (次は右、そこを左曲がって……そのまま真っ直ぐ)

 ジャンの声のままに進んでいく。王都の中心街から離れた場所へと向かって行く。


 (止まってユウタ! ここだよここ)

 「ここがジェランコ侯爵の屋敷?」

 (そうだよ)


 目の前に見えるのは、大きな敷地に囲まれ、ドでかい屋敷だった。

 屋敷の周りには、沢山の兵士達の姿が。


 きっと屋敷を守っているに違いない。屋敷の近くにある木々の上に隠れながら観察していた。


 (どう? 見つからないで忍び込めそう?)

 「忍び込む事は出来るが、奴がどこにいるのか分からないぜ?」


 (僕に任せて!)

 入れ替わると、ジャンが集中し始めた。


 (どう!?)

 (ちょっと喋らないで……)



 ……。

 ……。

 ……。


 「場所が分かったよ」

 ジャンがそう言って指を指した場所は、屋敷ではなかった。


 敷地内の外れにあるボロボロで草や蔦だらけの塔のような場所だった。

 (間違いないのか?)


 「うん。一番魔力が強いよあそこが」

 (分かった)


 二年の間にジャンも成長していた。

 戦闘が凄くなった、はたまた死者を蘇させるような回復魔法が使えるようになった訳ではない。

 しかし、魔力のコントールが元々得意だったジャンは、他人の魔力感知能力に長けた。

 他人が持つ魔力量や、魔法の資質を見分ける事が出来るようになっていた。


 「それじゃあ後は俺に任せろ」

 俺は般若のお面を被り、ジェランコ侯爵の屋敷内に忍び込む。


 音を立てず、忍者のように俺は移動していく。

 ダンとの戦闘によって身に付けた俺の技術だった。


 素早い移動で、守っている兵士に見つからないように移動していく。

 存外に塔の入口まで、するりと到着する。


 周りを見渡し、ドアを開ける。


 ギィィ。と鉄のドアが音を鳴らす。

 すぐさま中へと入り、ドアを閉める。


 塔の中も外も石で出来た造りで、螺旋状の階段が上に続いていた。

 俺は階段を上っていく。


 コツーン、コツーン。

 階段を上がる音が微かに響いていく。


 最上階まで上がると、木製で出来た簡素なドアに辿り着いた。

 静かに耳を済ますと、中から声が聞こえてくる。


 「あ〜ん、もうやめて下さいよぉ〜」

 「別にいいじゃないか。今夜はここで二人だけなんだ」

 男女の声が聞こえた。


 (ユウタ、ノックした後にこう言うんだ。ジェランコ侯爵――)

 (なるほどな) 


 トントントンッ。と俺はノックをした。

 「誰だ!?」

 中から返事が返ってくる。


 「ジェランコ侯爵! 大変申し訳ありません! 国王様が今しがた亡くなられたとの緊急の報告が入りました」

 「なにっ!?」

 ジェランコ侯爵と思われる男が扉を開けてきた。


 上半身は裸。下半身は布のような物を巻き付けた姿の男が現れた。

 俺はすぐさま二本のダガーを抜き、その男の首を掻っ切った。


 「ぐあああ……貴様はだれ……だ」

 両手で首を押さえるが、血は噴水のように吹き出していく。


 男は前に倒れていき、塔の最上階から落ちていった。

 ドアの中を覗くと、ベッドが置かれ裸の女性が一人こちらを見て震えていた。


 首を左右に傾けながら、首の骨をコキッコキッと鳴らして女に近づいていく。

 「だ、誰にも言いませんから……どうか……命だけは」

 今にも聞こえなくなりそうな小さな声を女は発した。


 返事をするつもりは一切ない。

 「一つだけ答えろ。答えたら助けてやる」

 ダガーを向けながら俺はそう言うと、女は首を激しく縦に振った。


 「さっき落ちたあの男は、ジェランコ侯爵で間違いないな?」

 「そうです……」

 女が答えた瞬間、俺は女の首を撥ねた。


 「意外と簡単だったな」

 (普通は簡単じゃないよ……)


 「まあいいや。これで王子様の任務は完了したな。帰るか」

 下まで戻ると、誰にも気付かれないように慎重にドアを開け、外に出てドアを閉める。

 同じように兵士に見つからないように迅速かつ慎重に敷地内を駆ける。


 屋敷と敷地を囲っている高い鉄塀も軽々と越えて、ジェランコ侯爵の屋敷を出た。


 「やってやったな。どうせだからこ、のままある場所に行ってもいいか?」

 (えっ!? どこに行くの!?)


 「着いてからのお楽しみで!」

 俺は走ってとある場所へと向かっていく。


 「ふぅ〜着いたか」

 俺は到着した建物を見上げる。


 (本当に行くの?)

 「当たり前っしょ! 行くよ」

 俺は、ベランダから部屋に入り込んだ。


 部屋にいる人間に拳を握って殴りかかる。

 とんでもないスピードで蹴られるが、俺は両手でそのケリを防いだ。


 「おいおい! こんな時間に一体誰だ!?」

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