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祝・成人

 「ジャン様、支度が整いました」

 「ありがとうベイル、今行くよ」


 (また王都まで行くのか?)

 「殿下の誕生日会に呼ばれたんだ。断れないだろ」


 (面倒くさいだろ?)

 「それも貴族の務めさ……」


 グロッセが亡くなったベラトリア連合国との戦いから約二年が経った。

 ジャンも成人の十五歳を迎え、殿下の誕生日会に再び呼ばれ、今から王都へと向かう所だ。


 「主様。お待たせしました! 行きましょうか」

 「よろしく頼むリリア」


 ジャンは、リリアとその部下数人達と共に、馬車に乗り王都へと向かって行った。


 あれから二年近い月日が流れた。

 俺達は何をしていたのか?


 誰が命令した訳でもないが、アウル軍は血が滲むような努力を重ねた。

 ベラトリアとの一戦で多くの兵士を失ったアウル軍は、力を溜める事に月日を費やした。

 

 戦がないからといって暇だった訳ではなく、むしろダラムでの仕事が忙しく、あっという間に時間は過ぎていった。


 「殿下も成人されるんですね。主様も成人おめでとうございます!」

 「ありがとう……成人するまであっという間だったなぁ」


 「主様は突然当主になられましたから。同い年である貴族の方々は、やっと学園を卒業していく年齢ですが、主様は他の方々とは違いますからね時間が経つのが早かったのですきっと」


 「そうだよね。皆のおかげでどうにかやってこれたよ」

 「いえいえ、主様の力ですよ」


 馬車で数日走らせて先に王都やっと見えてきた。


 「やっと到着ですね」

 「本当に遠いんだよな。ルイス殿下の誕生日会で毎回来るのも中々に大変だよ」


 「着いたらさっそく宿を取りましょう」

 「任せるよ……」


 門番による検査を終えて城内へと入る。

 この場所に来るのは久しぶりだ。


 「おお! 流石は王都ですね。活気があります」

 「リリアは王都はあまり来たことない?」


 「そうですね……以前に一度だけ訪れた事はありますけど」

 「滞在中、一日はゆっくり出来るから観光してきたらいいよ」


 「いえ! 私は主様を守る為に同行していますから!」

 「大丈夫だよ。ここは王都だし、僕だってそんな簡単に誰かにやられたりしないよ?」

 「そうではありますけど……」


 ガタンッ! 馬車が止まる。

 「ジャン様? 宿に着きました」

 ドアを開けられ、リリアの部下に促される。


 「ありがとう」

 馬車を降りると、男爵の時よりも少しだけいい宿に泊まる事が出来た。

 ゆっくり休む事が出来る。


 「皆王都までお疲れ様。今日はゆっくり休んで!」

 「「「はい!」」」

 「じゃあ僕は先に休ませてもらうよ」


 ジャンは宿に入ると鍵をもらい、階段を上がって廊下を進み、奥の角部屋に到着する。

 ガチャ。扉を開く。


 以前泊まった場所よりも部屋は広く、それにベッドは寝心地が良さそうだった。

 

 「つっかれた〜〜〜」

 そう言いながらベッドに飛び込むジャン。


 (王都まで長いよな……毎年毎年人呼んでまで誕生日会なんてやらなくてもいいのに)

 「王族だからね。それも仕事のうちなんだよ」


 (そういうもんかねぇ〜)

 「疲れたからもう寝るよ」


次の日。


 「リリアどう? 似合ってる?」

 「とても似合っておりますよ!」

 「ん〜そうかな??」


 鏡の前で体を動かしパーティーに着ていく衣装を確認するジャン。

 着ている漆黒の衣装は、ジャンの白髪と顔の傷を引き立たせ、異様な姿だった。

 身長も体格もさらに大きくなり、どうみて悪い奴にしか見えない。


 (ユウタどう思う? 似合う?)

 (めちゃくちゃカッコいいでしょ!)


 「ならいいけど……じゃあそろそろ行こうか」

 「はい」


 馬車に乗って王城へと向かう。


 到着すると、色んな馬車と人が続々と城の中へと入っていく。

 華やかで煌びやかな衣装の中でジャンは闇夜に潜むような漆黒の衣装で城内に入る。


 以前にも来たことがある広間で今回も誕生日会を行うようだった。

 ジャンは飲み物と食べ物を手に取ると、端にあるテーブルにつく。


 「ジャン子爵、お久しぶりです」

 話しかけれ振り向くと、顔色が悪く気味の悪い笑顔を浮かべる人物が。


 「アウグスト辺境伯。珍しいですね……こういった会には出ないものだと」

 「普段は出ませんが、アウル子爵が来ると思って来たんですよ」

 そういって辺境伯はニコニコと似合わない笑顔をしている。


 (こいつ本当に気持ち悪いよな)

 「何故僕に? 会う理由があまりないかと思いますが……」

 

 「いえいえ、私はあなたに興味があるのです。それだけで会う価値があるのです」

 「はぁ……」

 どこを見ているか分からないギョロギョロした目は、心を見透かされているような気がする。


 「まあ今日はルイス殿下のおめでたい日です。乾杯しましょう」

 「はい」

 チンッ! グラスを合わせた。


 「う〜ん。流石は王城のお酒ですねぇ〜! とても美味しいです」

 「僕にはまだ分かりませんがね」

 「そのうち分かるようになります」


 「久しぶりねジャン」

 

 目を見張る女性が。

 「これはこれは、ロベルタ侯爵ではありませんか。麗しきお姿です」


 「辺境伯、こんな所で珍しいですね。ジャンとはお知り合いなんですか?」

 「お知り合いとまではいきませんが、以前一緒に戦った仲ですよ。ですよね子爵」


 「戦っただけです。僕は仲良いとは思ってませんよ」

 「ハハハ! あまり好まれてないようですねぇ」


 「……」

 「私はこの辺で失礼します。子爵またお会いしましょう」

 辺境伯その場を後にする。


 「ジャンあなた、辺境伯に気に入られてるの?」

 「気に入られるような事した記憶ないんですけどね」


 ロベルタが変な物を見るような目でこっちを見ていた。

 「顔の傷どうしたの?」


 「二年前にちょっと、アウグスト辺境伯の戦に援軍行ったら傷を負ってしまったのです」

 「ふ〜ん」


 久しぶり見たロベルタの姿は、以前にも増して女性らしくなっていた。

 しかし、ドレスから見える綺麗な腕は、女性とは思えない程鍛えられている。


 男なら誰もが振り返るような美貌とは裏腹に、どれだけ泥臭く剣を振って努力をしてきたのかが俺には分かった。


 (ロベルタと話してもいいか?)

 (いいけどどうしたの?) 

 (ただの挨拶だよ)


 「ロベルタ、レベッタ先生と訓練ずっとしてきたのか?」

 「ええ、そうだけど?」


 「一発でも入れられたか?」

 「最近初めて一回だけ攻撃が当たったわ」


 「すげーなお前!」

 「まあね! 先生がジャンに会いたがってたわよ。どれだけ成長したか見てみたいって」


 「そっか。なら行ってみっかな」

 「先生も喜ぶと思うわ」

 「あの怪物が!? ありえない! ありえない!」


 「そんな事――」

 パチパチパチッ!!


 会場を包む拍手が巻き起こった。

 皆が凝視している方を見ると、ルイス殿下が階段から登場してきた。

 ルイス殿下でも見ない間に成長し、ますますイケメン度合いが上がっている。


 「ルイスがパーティーが終わっても残っててだってよ」

 「また何か話があるって?」

 「きっとそうなんでしょ」

 「ふ〜ん分かったよ」


 「じゃあ後でね!」

 ロベルタはグラスを持って、その他大勢がいる前の方へと歩みを進めた。


 俺は部屋の端で密かに食事を楽しむ。


 ……。

 ……。


 トントントンッ。

 「ルイス殿下! ジャンアウルです!」

 「入れ!」

 「失礼します」


 ロベルタとレオン、ルイス殿下がこちらを見る。

 どうやらジャンが一番最後だったようだ。

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[気になる点] 目を見張る〜のくだりが重複してますよ
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