表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/95

攻略戦〜まさかの実力と本当の目的〜

 「やっと俺の出番か」

 (頼んだよユウタ。暴れちゃっていいから)


 「ジャン様、部隊も全て準備が整いました」

 「ジェイドとグロッセ、準備はいいな?」


 「はい」

 「いつでもいっすよ!」


 「テディは……まあ行けるな! じゃあ火矢を放て」

 二本の火矢を空に向けて放った。


 ゴゴゴゴゴと鈍い音を立てながら、頑丈な門が開き始めた。

 「突撃しろーー!!」

 「「「おおおおおおおお」」」


 出来るだけ大袈裟に大声を出して侵入する。勿論こっちに注目させる為だ。

 門をくぐると早速目の前には、大勢の兵士が待ち構えていた。


 「ヒャッホー!」

 俺は水を得た魚のように次々に兵士を斬り倒していく。


 相手の兵士達も対抗してくる。奥からゾロゾロと次々に兵士が集まってくるのが見えた。

 「とにかく暴れろ!!」


 目の前にいるの敵をひたすら斬り倒している時だった。

 何やら空中で光りながら俺達に向かって、飛んでくる何かが見えた。

 近づいて来るとそれはどうやら魔法による攻撃で、光の矢が無数飛んできた。


 「相手からの攻撃魔法だーーー!!! そなえろーーー!!!」

 ジェイドが叫ぶ。


 突然、俺達を守るかのように目の前に大きな土の壁が地面から出現した。

 その壁に魔法が当たる音が聞こえ、壁が崩れていく。俺達は突然現れた壁のおかげで助かった


 「おいおい今の誰だ!?」

 (ユウタ左見て、左)


 ジャンに言われて左を見ると、地面に両手を付いているテディの姿が。

 「いやいや、まさか!」

 (でも魔力が出てるよ)


 テディは立ち上がると、突然踊りだした。

 「ドドンがドンッ! ドドンがドンッ!」

 

 盆踊りのように手をパパンッ! と叩いてポーズを取る。

 テディがそうすると、地面から巨大なゴーレムが二体現れた。

 2階建ての家の屋根に届きそうな規模のゴーレムだった。


 「オイラが守るんだぞー!」

 テディがそう叫びながら再び踊り始めると、二体のゴーレムはバーリ城の兵士達を襲い始めた。


 「あいつ魔法使えるのかよ!!」

 (ゴーレムなんて土魔法でも上位の魔法だよ)


 「おもしれー! おい野郎共! テディに続けー!」

 「「「おおおおおおおお」」」


 ゴーレムが出現したからか、さらに注目を浴びて兵士が続々と集まってきた。

 俺達はとにかく目の前の敵を倒していくのに精一杯だった。


 「「「おおおおおお」」」

 しばらく戦っていると、遠くの方で歓声が上がる。その歓声は波のようにすぐにこっちに流れてきて、歓声を上がった。


 相手の兵士達は、その歓声と同時に武器を手放していく。

 見ると城のあちこち、そして城の中央にロア王国の旗が立てられていた。


 ドガル子爵の軍が、上手くバーリ城を攻略した証だった。そう、戦いに決着がついたのだ。

 戦いが終わり、俺達は子爵の待つバーリ城の中へ。


 「ドガル子爵、見事な制圧でした」

 城主の椅子に座っているドガル子爵をジャンは褒める。


 「ジャン男爵の戦いっぷりのおかげで簡単に城をとる事が出来ました」

 「ありがとうございます」


 「この後の予定としては、我々はどうしていけばいいのでしょうか?」

 「私はこの戦の詳細と結果を中央に報告しなければいけないので、領地に戻らせてもらいますね。中央からの指示があるまでジャン男爵はこのバーリ城を守ってもらえますか?」


 「分かりました」

 「そうそう、ここにいるリリア隊長も残ります。ジャン男爵の兵の数では心許こころもとないと言ってましてね、私の兵とリリアを残していくのでよろしく頼みますよ」


 「お任せください」

 ジャンは立ち上がりその場から立ち去ると、用意された部屋に入る。


 そのまま倒れ込むようにベットに横になった。

 (あのヒゲドガル、マジでムカつくよな!)


 「まあ、いいよ。もうあの顔見なくて済むし、リリア隊長が残ってくれるならこの城を守るのもそんなに難しくないだろうからね」

 (ジャンが望むなら、すぐにでもやっちゃうぜ?)


 「そんな事をしたら恨みを買って、僕なんかすぐに処刑――」

 会話している途中で意識がなくなった。


 次の日からリリア隊長と組んで城を守っていく事に。

 捕えた捕虜に関してはリリア隊長に任せた。


 しかし数十人ばかり、俺のおもちゃ……実験台として融通してもらった。


 捕虜の中から優秀そうな人を見つけては引き抜くこともしていくジャン。

 バーリ城から近い場所で盗賊などが現れると、一目散に駆けつけて俺達アウル軍が対処した。


 その盗賊達を拷問にかけ、服従させて部下にしていく。

 半月が経った頃、やっと中央から部隊がやってきて城を明け渡す事が決定した。


 やっとダラムに戻ることが出来るようになった。

 リリア隊長と最後の挨拶を交わす。


 「リリア隊長今回は助かりました。あなたが居なかったらきっと戦も長引いて沢山の犠牲者が出ていたと思います」

 「いえ、私は何もしていません。ジャン男爵のおかげです」


 「これを……一人でいる時に読んで頂けたらと」

 ジャンはリリア隊長に手紙を渡す。


 「では、僕達はダラムに戻ります。またお会いしましょうリリア隊長」

 そう言ってバーリ城を後にし、ダラムへと戻った。


 それから一ヶ月の月日が流れる。

 「ジャン様、お客様がお見えになりましたよ」

 「誰?」

 「ちょっと私には見覚えがありませんでした。ただアウル家の紋章が入った手紙を持っていたので、ジャン様に報告をしています」


 「ベイル、その人って女性?」

 「その通りでございます」

 「分かった、今すぐ行くよ」


 書類の山に囲まれたジャンは立ち上がり、一階に降りて屋敷の玄関を開けた。

 そのお客様とはあの女騎士のリリア隊長だった。


 「やあ、やっぱり来てくれたんだねリリア隊長」

 「ジャン男爵からもらった手紙を見て考えましたが、私は男爵のお世話になる事を決めました」

 「ドガル子爵は平気だった?」

 「引き止められましたが、強引に出てきました」

 「そっか、それじゃあまずは治療からだね」

 「男爵、お願いします」


 (おいジャン、なんでこいつがダラムに来てんだ? どういう事?)

 (とりあえずユウタ、回復魔法を使ってもらえる? 怪我人を治して欲しいんだ)

 (怪我人って……)


 リリア隊長の乗ってきた馬車の中には、幼い男の子と女の子が。

 男の子の方はリリア隊長が抱っこして、馬車から降ろしている。


 男の子の方は片足がなく、女の子の方は片目と片腕がなかった。

 「この子達を治せばいいのかな?」

 「是非お願いします」

 リリア隊長は深々と頭を下げた。


 屋敷の部屋に案内し、椅子に座らせる。

 (ユウタこの子達に回復魔法をかけてあげてくれないかな?)

 (ふぅ〜。仕方ないな、ジャンが言うならやるよ)


 「疲れだんだよなぁ〜本当に」

 俺は文句を言いながら、怪我した箇所に両手をかざして魔法をかけ始める。


 すると、みるみるうちに男の子の足が戻っていく。怪我する前の状態に戻っていく。

 そして次は女の子の番。目を治し、無くなった腕が元通りの形を取り戻す。


 二人は元に戻った腕と脚をゆっくり動かしている。

 リリア隊長の元へと泣きながら駆け寄り、抱き合う。

 「「うわぁぁぁぁん!!」」


 (あぁ〜。疲れたー!)

 (ありがとうユウタ)


 「ジャン男爵、弟と妹を治してくれて本当にありがとうございます。私は本日を持ってジャン・アウルに仕え忠誠を誓うと約束します」


 「王都に行けば、もしくは他の貴族に仕えた方が良い待遇の給金をもらえるかもしれない。それでもいいの?」

 「はい! 全力を尽くします」

 「それじゃあ今日からよろしく頼むよリリア」

 「はっ!!」


 「ほら二人共、お礼を言いなさい」

 泣きじゃくる妹と弟は涙を拭ってこちらを見る。


 「「お兄ちゃんありがとう!」」

 「こら! ジャン様だ! お兄ちゃんじゃない!」

 二人は再びお礼を言った。


 (なあジャン。いつからリリアを引き抜こうとしてたんだよ)

 (ん〜どうだろう。割と最初の方からかな)


 (お前なんか……いやらしい感じに成長してきたな)

 (適材適所ってやつなんでしょ)

 こうして可憐な女騎士リリアは、新たな部下となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ