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婚約破棄の教室

作者: へんりん

さて、今日は「仕方がない婚約破棄」について取り上げていくわよ。

教室のみんなは婚約破棄についてどう思う?まあたぶん大多数の人がいけないことだと思っているわよね。

家同士の繋がりを私的な感情で断ち切っちゃうなんて、愚の骨頂だものね。

でもね、世の中には仕方がない婚約破棄もあるの。今回はそれについて説明していくわ。

……ああ、教科書は出さなくて結構よ。このお話しは教科書には載っていませんからね。


昔……ではなく結構最近のこと、ここから離れた遠い国で愛し合っている男女がいました。

男は伯爵家の長男で、それはとても賢い人でした。王立学校での成績一位は当たり前、それどころか教師すら驚かせる発想力を持っていました。深い青色をした瞳がとても綺麗な方でした。

女は公爵家の長女で、とても美しい人でした。それはそれはとても美しく、女神とも呼ばれていました。ここ、重要よ。しっかり覚えておきなさい。


ゴホン、始めに好きになったのは女性の方からでした。成績で常にトップを取っている彼の事が気になって毎日目で追ってしまい……まあいつ好きになったかは覚えていませんが、いつの間にやら彼の虜になっていました。それから毎日のように男と偶然を装って遭遇し、お話しをしましたね。

……ストーカーじゃないかって?いやいや、純愛ですよ?まあお子ちゃまな皆様には分からないかも知れませんがね。

男性の方もその女性との会話を通じて、どんどんと女性のことを好きになっていったそうです。


そうして、お互い好意を寄せ会う間柄になっていき、最終的に家同士の話し合いの末、婚約することができました。本来であれば女性は第一王子と婚約をすることになっていたのですけど、「第一王子と婚約するなら首をつりますわ!!」と親に啖呵を切って、半ば無理矢理に婚約しました。

今考えればとんでもない暴挙ですよね。若さって恐ろしいわ……


まあ、それはおいといて。その男女はめでたく婚約することができ、始めのうちは幸せに暮らしていました。

男の天才的な頭脳を生かした領地経営と商売活動によって、伯爵家は大きく成長していきました。そして、彼の発言力は公爵家に匹敵するほどのものにまでなりました。


全てが順風満帆に見えてました。あの時は本当に幸せでした……


しかし、女性は突然婚約破棄を言い渡されるのです。


始めは何が何やら分からなくなって、ベッドでわんわん泣きじゃくりました。あまりにも突然のことで、朝起きたら幸せな世界に戻っているんじゃないかと、何度も何度も期待して、何度も何度も絶望しました。

男を憎もうと思っても、青い瞳をくりくりさせながら笑っている表情を思い出すと、憎むことすらできませんでした。

真っ暗な穴のなかに一人閉じ込められたように感じました。


まあ今考えると彼も同じ気持ちだったのでしょう。いや、それ以上だったかも知れません。何せ愛する女性を守るために、愛する女性に婚約破棄をしたのですから。


この婚約破棄は彼の意思ではなかったのです。


では誰の意思なのか。もしかしたら察しの良い学生は気がついているかも知れません。そう、その時の国王です。

公爵家の長女、公爵家に並ぶほどの発言力を持つ伯爵家の長男。この二つの家が完全にくっついてしまえば、王の立場が危うくなると考えたのです。全くもって忌々しい話です。


それで男は脅されたわけです。女性の命が惜しければ婚約破棄をしろと。

そのため、男は泣く泣く婚約破棄をするはめになりました。


……こんな具合で世の中には「仕方がない婚約破棄」もあるのです。ですから婚約破棄という物を一概に否定するのではなく、一度どういう状況か考えるのが大事ですよ、というお話しでした。


え?その後二人がどうなったかって?

男は婚約破棄したことによって心が壊れていき首吊り自殺を、女はそれを知って服毒自殺をしたそうですよ。胸の痛い話ですね。

まあ、遺体は密かに埋葬されたらしいので、本当に死んだか分からないのが救いですね。もしかしたら、どこか別の国で生き延びているかも知れません。


さあ、この話はここで終わりです。では皆教科書を開いて!ほらそこ、嫌がらない!次嫌がったら私の夫に怒ってもらいますからね!


え?私の夫?それはもう素敵な男性ですよ。頭脳明晰で発想力も豊富、それに美しい青い瞳。彼ほど素晴らしい人はいないわよ!

夫の魅力を語ると今日は学校に泊まることになるけど、どうする?授業を受けるのと、夫の魅力を1日聞き続けるのどっちがいい?


……そう、授業が良いのね。残念だわ。

最後まで読んでいただきありがとうございます!少しでも面白いと思ってくださったら、ブックマークと下の☆で評価をしてくださると嬉しいです!

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[一言] 先生! 国王へのざまぁがありません!
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