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犯人はこの中にいます

作者: 雉白書屋

『犯人はこの中にいます』


 夜。会社から家に帰ってきた俺は、いつもの習慣でテレビを点けた。

 が、今日は特に疲れた。これ以上、何もする気が起きない。いや、できる気がしない。今、リモコンのボタンを押したのが振り絞った最後の一滴。ああ眠い。このまま床の上で寝てしまおうか。

 ……ああ、でも失敗だ。やかましいバラエティ番組だったら邪魔。消すか。いや、今の口振りは推理ドラマか何かだろうか。小難しかったり、つまらないやつだったら眠気を誘っていいが、いやしかし、もう解決編か……?


『テレビの前の皆さんの中に』


 ……ほう、視聴者参加型というやつか。クイズ番組とかに多いな。テレビのリモコンのボタンを押してクイズに参加。見事、正解したら豪華プレゼントが抽選で、と。そんなの本当にもらえるかどうかは知らないが。


『そう、地球人の中にね』


 ……んん? わざわざ、そんなこと言う必要があるか? そんなの当たり前と、ああ、そういう設定か。宇宙人が出すクイズ的な、陳腐な番組だ。そうだな、クイズ番組と言っても、最近はガヤガヤギャハギャハうるさいものばかりだものなぁ。


『我々は非常に怒っています。我が国の王子であられるドゥールンヒッヒ第九十六王子が、あなた方地球人の手により殺されたのですから』


 どぅーんひっひ? まあ、どうでも……いいか……。つまらん。このまま点けっぱなしでもいいかな。眠れそ……うだ……。


『先程、説明した通り、この放送は我々が電波ジャックし、全世界で同時翻訳の上で、と、なんだ?

ほーう、そうかそうか。朗報です。皆さんにとってもね。

今、犯人の情報が入りました。先程申し上げたように、王子はお忍びでの惑星訪問が趣味でね。

我々もほとほと困り、苦肉の策で体内に発信機を埋め込んでいたのですよ。

加え、小型監視衛星もね。尤も、王子はこんな星の連中に捕まるようなノロマなお方ではないので不要だと思って……いたのですが……くぅぅ、ああ、大丈夫だ。悲しむのは仇を討ってからにしよう……』


 何やら……悲し気なムードだ……。やはりドラマだったのかな……いや、ドラマ仕立てなだけか……それも、やすっぽいやつな……。


『……ああ、ご安心を。我々は地球人を根絶やしにしようなどと野蛮なことは考えておりませんからね。

ただ一人……王子を殺した者だけは惨たらしく殺すがねぇ……。

抵抗はするなよ。すれば全面戦争だ。大人しく殺されろ殺されろ。ああ、逃げても無駄だぞ。もう捕捉してあるからなぁ。そうら、見ているぞ。お前を、お前をお前をお前を』


 おお……それとも……ホラー映画……だったの……か?  


『ひひひひひ。では発表します……仇がいるのは……』


 いや……やはりクイズ番組か……。いや……年に何回か……ある……お祭り番組……か? 当選者……発表……か……。


『日本の』


 そりゃ……そうだろう……あぁ、ねむい……。


『――県の』


 あ……うちの……県だ……。


『――市の』


 へぇ……すごい……な。


『――町の』


 おお……うちの駅名と……同じ……。


『――以上の番地の』


 ……え? 今……読み上げられた……住所は……。


『その名は…………』


「貴様だよ……あっ」



 ……と、今の、ああなんだ、夢か……かゆっ。蚊かな。ああ、まだいるな。まったく、寝るのは全部退治してからだな。皆殺しだ。

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