雪山の遠足と雪だるまのお化け
怪談、ホラージャンルになります。少しでも怖いのが苦手な方は、ブラウザバックをお願いします。
「わたしにからだをちょうだい!」
どこからかだろうか。女の子の甲高い声が聞こえた気がした――――
――――あれは急に冷え込んで来た冬のはじまり、雪の降り出した日の夜だったと思う。
私の住む町は雪山に近い。だから比較的雪には慣れている地域だと思う。
今年は夏が長くて、冬の準備が遅れた。いつもなら、雪山が雪化粧を始めてからが冬本番だったのに。
会社も学校も休みとなれば、たまの大雪でやることは一つ。
童心にかえって雪かきがてら、雪だるまを作る。
そういえば、いつ頃から雪だるまを作らなくなったのだろう……。
……思い出した。ずっと昔に姉が亡くなった事件の後からだ。
「身体の欲しい子がいたから、雪だるまを作ってあげようと思ったんだ」
たしか姉はそう言っていた。地元の小学校で雪山に冬期遠足で遊びに行った時だと思う。
雪山で雪だるまを作ったと言っていた。雪が解け暖かくなった頃に、姉は原因不明の病にかかった。
手足が霜焼けになったように腫れあがった。そして全身が凍傷にかっかったように冷たくなり、息を引き取ったのだ。
姉はきっと雪だるまのお化けに会ったのだ。
姉が亡くなった年の五年前、雪山の遠足で事件があった。
子供たちは遊びのつもりで、一人の女の子を雪で固め、人間雪だるまを作ったのだ。
無邪気な、しかし残酷な遊びで女の子は凍えて亡くなった。雪だるまのように剥き出しの手は霜焼けになっていたという。
子供達に悪意があったかどうかはわからない。ただ遠足は毎年行われた。
私は雪山が怖かった。子供ながらに、姉が亡くなったのが雪だるまを作ったせいだとわかっていたから。
「わたしにからだをちょうだい!」
私は姉と同じ小学四年生の時に、遠足でその声を聞くことになった。
私は姉の言葉を思い出していた。
「作ってあげようと思ったんだ」
――――姉は確かそう言っていた。
あの時の姉は雪だるまを作れなかったんじゃないか、私はそう思った。
だから雪だるまのお化けは、代わりの身体を貰いに来たんだ。
――――私は小さいけれど雪だるまを作った。
最初に亡くなった女の子は置いていかれた。
姉が雪だるまを作れなかったのは、きっと時間がなかったからだ。
私は雪だるまを作り、拾った石や枝で顔を作った。
腕の変わりに差した枝に手袋を着けた。
私はそれ以降、雪だるまのお化けには会っていない。
久しぶりの雪だるま。私はなんとなく雪山へ向けて顔を作り、手には手袋を、頭に帽子を被せたのだった。
お読みいただきありがとうございました。ラジオ大賞の企画作品となっています。
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