第八話 要請②
「この条件を飲むなら、協力するのか…?」
「えぇ。もし、レクサスLs.日産GT-R,ホンダNSXの新車を2台ずつ用意した上、100億円を税金を今後も税金をかけないことを約束した上で、24時間以内に用意頂けるのであれば、今回の被害で亡くなった方と行方不明の方、そして倒潰し流された街を復旧すると約束しましょう。」
「な…」
「まぁ、市内だけですが。」
「そんなこと可能なのか…。死んだ人間を蘇らせるなど。」
「市内だけなら、さほど多くありません。全員で一万人程でしょうか。一人に付き100万で助けようと言ってんですから、とんでもないですよ。まぁ、24時間以内にすべて揃えられたらの話ですがね。」
…結局、24時間以内に求めていたものは揃えられ、
車は自宅周辺の駐車場を政府が買い取り、俺専用にした。そして今後、防犯システムも揃えるとのことだ。
100億もきっちり揃えて、税金をかけないことも約束してきた。契約書も交わした。しかも、交わした相手は、西山総理と来たものだから驚きだ。
国民が助かるなら100億も安いものだということだ。
俺は別に彼の理念はどうでもいい。一万人を蘇らせても魔力は尽きることはないので、痛くも痒くもない。
ただ、俺がここで助けると後々面倒なことになっても困るから、あいつにやってもらうか。魔力だけ渡して。
俺は家族全員と総理一行、特殊作戦群一行を連れて、港まで来た。
『海の覇者よその身を我もとに示せ 空泳巨大鮫』
俺たちの前にネーレウスが現れた。随分と眠そうだが。
「…あるじ〜。この人たち誰〜。」
「どうして、北海道のメガロドンがここに!?そもそも、どうしてクジラが喋っているんだ。」
俺は興奮する一行を無視した。
「悪いな、ネーレウス。少し手伝ってくれ。」
「いいよ〜。なにするの〜?」
「ここ見てわかるだろ?」
「ん〜。なんにもないね〜。」
「朝の攻撃で大津波が起きてな。皆流されちゃったんだ。」
「そうなの〜。」
「それでな、彼らを呼び戻そうと思うんだ。街と一緒に。」
「ああ〜。だからボクをよんだの〜。」
「ああ。魔力は渡すから手伝ってくれるかい?」
「いいよ〜。主のためだもんね〜。ちょっとまっててね〜。向こうから必要なもの取ってくるから〜」
そう言ってネーレウスは、異世界に戻っていった。
蘇りの魔法には触媒がいる。まぁ、魔法石なんだが。
それも向こうの世界の海中にあるもので、それはあの子
じゃないと見つけることができない。
「おい、大貴くん。こちらの質問にも答えてもらえるか?」
「あぁ…すみません。聞いてませんでした。質問ってなんです?」
「あの鮫は、北海道の近海に現れたというメガロドンだろう?」
「ええ、そうですね。」
「それがどうしてここにいる?」
「そりゃ、私が呼んだからですね。」
「いやいや、どうして君が呼んだら来るんだ?」
「そりゃ、私が魔法で異世界からよびだしたからですね。」
「い…異世界?」
「ええ。」
「つまり君は、異世界に行ったことがあり、あの鮫を手なづけていると?」
「まぁ、そうなります。」
「し…しんじられんが、信じるほかあるまい。まぁ、それはいい。では、どうしてあの鮫はしゃべっているんだ?」
「そりゃ、魔物ですからね。」
「済まない。君には当然かもしれんが、異世界を見たことがない我々からしたらありえんのだ。」
「多くの魔力を持つものは、相手の言語を理解し、喋れるんですよ。それにあの子は神獣ですしね。」
「え!?」
「あの子は神の使徒なんですよ。だから、人間の言葉も流暢に喋れるし、こちらの言葉も完璧に理解できる。そして、水関係で亡くなった者、亡くなった物質を元通りに直す力も持つ。そんな存在なんですよ。まぁ、私以外がお願いするともれなく殺されますが。」
「…もう何を言えばいいのかわからん。」
「では、静かにしていてください。」
そうこうしていると、ネーレウスが戻ってきた。
彼の口には人間サイズの魔法石が咥えられている。
彼はそれを海面にに浮かべると、吠えた。
だが、その声は美しい音色となった。これは、海の歌とも呼ばれ、向こうの世界では幸せを呼ぶ歌とされている。彼らがこの歌を歌う時、その歌を聞き願いを願ったものには、祝福が齎されると呼ばれている。
それを特大の魔力を含んだ魔法石を使うことで、市内全域を再生させるというわけだ。この子の声に呼応して次々と再生されていく。まるで、何もなかったかのように。ただ、記憶までは消すことはできない。それは、契約に含まれていないのでそれはがんばってほしい。
ネーレウスが歌い終えたとき俺は声をかけた。
「なぁ、ネーレウス。おれ、魔力あげてなくない?」
「いいよ〜。なんか、ご主人に召喚されると魔力が満たされた状態になるから、大丈夫だよ〜。それにこれから北の海でゆっくりするから〜。」
「ああ、ありがとな。こっちでも対応はするけど、今度は北の地も狙われるかもしれんから、気をつけてな。」
「攻撃してきたら倒してもいい?」
「良いけど、海に落としたらこことおんなじになるぞ?」
「海面に落ちる前に異空間にとばせばいいでしょ〜?」
「それがわかってるならいいよ。」
「わかった〜。じゃあね〜。」
ネーレウスは、ゆっくりと海に戻っていった。