第四話 召喚魔法
魔法が使えると分かった俺は、親に勉強してくると嘘をついて北海道に来ている。
『天より降り落ちるモノよその御顔を仰ぎ見ん』
という詠唱の空間移動(所謂、ワープ)でくれば本当に一瞬だった。
で、何をするかというと最初は海を凍らせて、自転車でその上を走るアニメみたいなことやってやろうかと思ったけど、みつかったら面倒だし。
そんなとき、あることを思いついた。
とんでもないことだし、それが発見されればとんでもないニュースにはなるけど、俺自身には被害がないこと。
そう考えた俺は、海岸に近づくと魔法を唱えた。
『海の覇者よその身を我もとに示せ 空泳巨大鮫』
そうすると俺の前に30メートル近いサメが現れた。
こいつの名前は、メガロドン。地球の太古から生きてきた
サメで事実上絶滅した種だ。
理由としては、頬白鮫との生存競争に破れたこと。
こいつはデカくて凶暴なものの、大きすぎる為に
俊敏な動きが取れないのだ。
ただ、俺が召喚したやつは、魔力を栄養としているため、
食事を必要としない。
「…ご主人。」
「どうした?ネーレウス。」
「ここどこ?」
「俺の生まれた国だ。」
「…帝国と違うの?」
「俺は勇者だったからな。」
「…そっか。」
ただ、こいつは向こうの世界で一人ぼっちで泳いでいた子で可愛そうだったから俺が捕まえて、育てた。
元々の気性がとっても穏やかな子で滅多なことがなければ怒らない子。一度怒ったときは、港街が壊滅したっけか。
この子も魔獣だから、魔法が使える。
一撃で街が消し飛ぶ威力の攻撃魔法を持っている。
「それで…なんか用?」
「いや、特には。久しぶりに顔を見たくなったから。」
「…そっか。」
「俺の異空間とこの海、どっちが過ごしやすい?」
「…こっち?」
「なら、戻さずにこのまま海にいるか?」
「…いいの?」
「この島の周りの近海に居てくれるならいいよ。」
「…わかった。」
「じゃあ、またな。」
「うん…ありがと。…それと、ご主人。」
「ん?」
「他の子たちも呼んであげて。皆会いたがってるから。」
「わかった。」
「…じゃね。」
そう言うとネーレウスは、ゆっくりと海に消えていった。
それを見送ると俺は、街に戻り美味しい海鮮料理を食べて、帰路についた。
ただ、後日、ニュース速報で日本近海にメガロドンが発見されたとの報道があった。それもダイバーが見つけたとのこと。凶暴で知られたメガロドンのため、決死の覚悟で撮影に臨んだダイバーたちであったが、ダイバー達を背に乗せたまま海面に浮上したり、船の周りを遊泳したりと人懐っこい仕草を見せたという。
それから数日後には、
噂を聞きつけた観光業者が遊覧船ツアーを開催。日本全国から観光客が押し寄せているとのこと。その中でもアイドルや女優など綺麗な女性は、その背になることができ、
船の科学館に戻る際も可愛らしい鳴き声を発したという。
その為、そのツアーは既に数ヶ月先まで予約で埋まったそうな。
「あいつ、女性好きだからな。性別、女だけど。」