第二十一話 デート④
点線以降で、視点が変更されます。
「それじゃあ、キスシーンはやるってことでいいの?」
「はい!」
おいおい、随分と変わったな。目をキラキラと輝かせ
ちゃってさ。確かにこれこそテレビやライブで見てきたひかるちゃんの良さだけど。ここまで変わるかね。
「じゃあ、このあとはどうする?アラジンとアリエルだったらどっちがいい?どっちもアトラクションというより観るタイプだから。本当に好みなんだけど。」
「「アラジン!」」
「しゃあ、アラビアンコーストに向かうけど。逆に聞きたいんだけど、マーメイドラグーンが嫌な理由は?」
「アリエルも確かにプリンセスだけど、私達は泳げないので。」
「泳げないの?」
「泳げないは言いすぎですけど、泳ぎが苦手なので。」
「そうなんだ。まぁ、いいや。」
俺達は、ボッブゴーンを食べながらのんびりとあるいていった。正面から明らかにスタッフと思われる一行が歩いてきたが、少なくとも俺は無視した。
ただ、性格の良いふたりはお辞儀をしてしまい、向こうがこちらを認識してしまった。まぁ、さっきあれだけはっきりと伝えたから流石にしつこくはしてこないだろう。これ以上するなら、強制的に帰宅させるけど。
俺は、嫌な予感がしたため、ふたりに伝えて少し離れた。
彼らはズンズンと近づき彼女たちの前に立ちふさがった。
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鳥居坂side
「やっと見つけた!森川、れなぁ。…工藤さんは?」
「さっきまでいましたよ。澤野さんと下田さんたちが見えたので、少し離れるって言ってました。」
「そうか…。何か拙かったのか?」
「大貴さんは、あくまでもこのデート企画は、私達アイドルとのプライベート空間を楽しむ事を重要視しているんだそうです。なので、状況確認で皆さんに囲まれることに忌避感をいだいたみたいです。」
「そうなのか…。でも、これも番組上仕方ないからな…。」
あれ?プロデューサーさんが悩んでる?
「…仕方ないでしょう。お二人共、少し大変かもしれなないけど自撮り棒で、撮影お願いできる?モバイルバッテリーと容量が足りないかもしれないから追加のスマホも渡しておくから。」
「それで撮影して、もう来ないってことですか?」
「工藤さんが出ることを望まないならそれしかないでしょ?」
「じゃあ、夜のショーだけはメディテレーニアンハーバーを特等席で撮影できるようにそれだけは準備しておいた方が良いです。」
「例のサプライズの件?」
「はい!内容は言えないですけど、撮れ高凄い事になると思うので、覚えといてください!」
「なら…運営側と調整することにしようか。ふたりとも、これさっき言ってたスマホとバッテリー。自撮り棒は持ってると思うからそれ使ってね。」
「わかりました。」
「それじゃあ、工藤さんによろしく。」
そう言って、プロデューサーさん達は散っていった。エントランスの方に向かったから、○リエンタルランドにいくのかな?
「話し終わった?」
スタッフさん達が離れていったら、逆に大貴さんがこっちに歩いてきた。
「はい。今後は、自撮り棒を使って撮影してほしいとのことです。」
「じゃあ、あの面倒な連中はもう来ないわけだ。」
「そうなりますね。」
「なら、そのスマホちょっと貸して。」
うん?スマホどうするんだろ?
『浮かび上がれ、浮遊』
大貴さんがそうつぶやくとスマホが浮かび上がった。大貴
さんは、動画アプリを再生させると、こっちを振り向いて
「じゃあ、行こうか。」
「自撮り棒ありますよ?」
「それじゃ、ふたりとも疲れちゃうでしょ?良いんだよ。
魔法は戦うためだけにあるわけじゃないんだ。元々、生活を便利にするために作られたんだから。」
そう言って、大貴さんは私達の手を握るとあるき出した。
玲奈にも指摘されたけど、 やっぱり、この思いを隠すなんてできない。でも、アイドルも辞めたくない。大貴さんは、
私を待ってくれるだろうか。
夜のショーの前に思い伝えよう。例え、断られたとしてもそれで自分が納得できるなら、その方がいい。