第十四話 ラグナロク守り神になる
「主にはああ焚き付けられたが、どうするか。」
主の言う通り、ここで北海道の地を救えば儂は守り神として崇められるかもしれん。だが、儂は邪神だ。
主は、過去のことだからとその事に触れることはない。嬉しいし、有難いが、邪神として人間達を散々に殺してきた過去は払拭できるものではない。
主に出会った頃の儂は荒んでおった。出会うものであれば、同族以外は皆殺しにしておった。だが、主はそんな俺を諌めて、力づくで抑えてくれた。そして、当時異世界人として異例の聖騎士であった主は、儂をただのフェンリルに戻してくれた。
そんな主のため、儂は命をかけて尽くしてきた。主はそんな俺に報いようと創造神様に掛け合い、風神手してくださった。面と向かっていうことはできんが、正直あの方には感謝しかない。
そんな主から、この国の守り神になればと勧められた。この国は、魔法という概念がない。技術力も現在の帝国と比べれば、大したことはない。
だが、だからこそ儂はこの国を守りたい。強いものが弱いものを喰うのは、自然の摂理であるが、違う世界があっても良いではないか。
それに主に言われてこの山に来たのが、3日前。
敵はうざかったから早々に倒してしまった。それから帰るのが億劫になり、山の中腹を削り寝床を作り、休んでおる。だが、どういうわけだか、麓の子供らが儂のもとにきては、一緒に昼寝をしておる。最初は煩わしかったが、時間が経つに連れ、可愛く思えてきた。
子供らの親御は、迎えに来る時に貢ぎ物として、作物や酒などを奉納してくれる。これがうまいのだ。だから、この子らを守ってやるくらいのことはしよう。
聞くところによれば、ネーレウスは南の海に落ち着くことにしたようだ。
ならば、北の地は儂のテリトリーにするとしよう。
さて、そらそろ子供らを起こすとするか。