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猫の社交場

ピン

作者: タチアオイ

春ですね。

恋するにゃんこ達の声につられて

書いてみました。

タンポポと同じ世界観です。

R15は念のためです。

よろしくお願いします。


「あんたってばさぁ、黙って立ってたらホントに良いオンナに見えるよね。頭がちっちゃくて、足長くて、目鼻立ちもスッキリしててさ。ホント羨ましー。ま、動いて喋っちゃうと全部台無しになるのが謎だけどねぇ」


半笑いでこっちを見上げるツレからいつもの口癖が飛び出した。


ホントに羨ましいと思ってる?


だってツレって可愛い顔をしていると思うし。

ちょっと潤んだタレ目をいつも表情豊かに動かして、身体つきは小柄だけどふっくらして柔らかそうで、オンナの子らしいオンナの子って感じで。


なおもつらつらとあたしの容姿を自分と比較して批評していくツレの言葉に、まったく誉められてる気がしなくて顰めっ面で聞き流す。


「ところでさぁ、昨夜あれからどうだった?」

と、弾んだ声は話題を変えていく。

「私ちょっとカッコいい子見つけちゃったんだぁ」

と、こっちが聞きもしないのにツレはいつになく甘ったるい声で、出会いから始まって詳細に報告してくれていた。


ツレのことを煩いからやだとか言う奴らも居るけど、放って置いても勝手にニコニコ喋って勝手に楽しそうにしているからあたしはへーき。ていうか結構楽。

オンナの子同士ってべたべた引っ付いていつも一緒に居るイメージだけど、ツレは見た目と違って意外とさっぱりしてるんだよね。

あでも行動は割と一緒してるか。

でも距離感が意外としっくりくるから、まぁ、友達ってんだろうなと思う。


暖かくなって過ごしやすくなったなーとか思っていたら、何だか最近落ち着かなくなって。

ツレも同じこと言って、二人で取っ組み合って転げ回ったりバタバタ走り回ったりしてたんだけど。


身体がウズウズして、何だか叫び出したくなって、ついに堪りかねて二人で夜の街へ繰り出した。


いつものコースなのに夜の街の顔はいつもと全然違っててドキドキする。

チカチカする明かりと、扉の向こうから時折聞こえてくる音楽。向こうから大声で騒ぎながらふらふら歩いてくる足元に、蹴られないよう慎重に距離をとって路地を進んで行く。

姐さん達がカレシとデートしてるのを覗いてみたり、美味しいものを探してみたり。

そうこうしてるうちに、ツレとはぐれていることに気がついた。


キョロキョロと辺りを見回してみたけど姿は無く、まぁ良いかと再び歩み始めたところで、路地の右手の暗闇から揶揄うような声がかかった。


足を止めて街灯の下に現れた姿をチラリと見遣る。

あたしより少し年上かな?綺麗なストライプの上には精悍な顔がのっていて。しっかりした身体つきに異性を感じてちょっと腰が引ける。


でも。

ナンパなんてお断りだし。


あんたなんて怖くないからってツンとすまして素通りしてやった。


だってあいつったら

「お姉さんかと思ったらお嬢さんだったね」

だって。

ちょっと圧強めのガタイの割には優しそうな目をきゅっと細めてついて来る。


ついて来ないでって言っても「こんな綺麗で小さなレディが一人で歩いてたら心配するだろ」なんて調子の良い事ばっかりで。


あたし小さくなんてないし。


こっちがふんと鼻を鳴らしてあしらってるのに、嬉しそうな顔をして並んで歩きながらペラペラ喋ってる。

ここのご飯美味しいよとか、あそこの店員感じ悪いとか、何でもない話の合間に、ちょいちょいあたしの顔を細めた目で覗き込んで、歯の浮くようなセリフを混ぜてくるから調子がくるっちゃう。


まったくもってチャラいとしか言い様がない。


勝手にニコニコと喋って、明日も会おうねなんて勝手に決めて、あたし返事なんかしてないのに

「来るまで待ってるね」

なんて本気かな?


でも強引そうでいて指一本触られなかったし、さりげなくエスコートしてくれてるのは気がついてた。

ガツガツしてないのは遊び慣れてるから?

余裕があるように見えるのは良いとこの坊っちゃんだからなのかな?

こっちが子供だと思って揶揄ってたのかなぁー…


「それで今夜はどーする?」ってツレの言葉で我に返った。


どこぞの姐さんみたいに遊ばれて泣くのは御免だ。

でも、ちょっと、ねぇ?


「どーしょっか」

あたしは眉尻を下げてツレをじっと見る。

ツレの大きなタレ目の奥には期待と不安がゆらゆら入り交じっている。

ツレも私の目の奥にある何かを察したらしく、二人見詰め合って苦笑した。


おんなじ気持ちなんだよね。


とりあえず相談して思いつく限りの対策を練って。


大人振った顔をして格好つけて、ツンとすまして歩いてみようか。

格好良い女の子が大好きです。

読んでいただきありがとうございました。

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