第八話 ダンスいびり
このいびりは出来そこないだ 怒りがないよと言われたいキュアリィのノマールいびり。
今回はノマールの苦手なダンス目をつけました。
果たしてどんないびりが発生するのか……。
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日はクラスの友人二人とダンスを教えて差し上げましたわ」
「……ほう」
ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。
(三人がかりで休む暇もなくダンスを教え込まれたら、さぞや疲弊したでしょうね……。しかも教える行為そのものは純粋な厚意に映る……。この娘、天才……?)
「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時間は遡ってダンスの時間。
「ではまず私とウォミーさんが踊りますから、よくご覧になってくださいね」
「はい!」
ノマールの隣で叩くソフィティアの手拍子に合わせて、キュアリィとウォミーが踊ります。
「いかがでした?」
「む、難しいです……!」
「では次は少しずつ止めながら踊って見せますわ。ソフィティアさん、ポイントで解説をお願いします」
「かしこまりました」
キュアリィはそういうと、またウォミーと踊り始めました。
「はい、ここです。ここで左足を出しているから、次のステップで体を入れ替えられるのです」
「な、成程……!」
ソフィティアの解説に、ノマールは目を皿のようにして、二人の動きに注目します。
「ふう、こんな感じですわ。お分かりになりまして?」
「は、はい! あ、いえ、まだ……」
「でしたらソフィティアさんとおさらいをしてみましょう。我々のクラスで一番ダンスがお上手なのはソフィティアさんですから」
「恐れ入ります」
「よろしくお願いいたします!」
ノマールはソフィティアに手を取られて、おぼつかないながらもステップを踏みます。
「そうですわ! その左足! そこから体を入れ替えて……! そう! 素晴らしいですわ!」
「キュアリィ様、ノマールさんは勉強だけでなくダンスの才能もおありになるようですわね」
「本当ですわ! さぁその流れで、次の動きもやってみましょう!」
「は、はい、えっと、ここで一旦離れてすぐ戻る……!」
「そうですわ! もっと私の懐に飛び込む勢いで!」
「はい!」
ソフィティアと踊る中で、めきめきと上達するノマールを見ながら、キュアリィは満足げな表情を浮かべました。
(苦手なダンス特訓の申し出……。今までの私なら『ダンスなどできなくても良い』と聞こえの良い事を言ってしまっていたでしょう……。でもいびりのお陰で、ノマールさんの真剣な思いに向き合えましたわ!)
読了ありがとうございます!
やはりウォミーとソフィティアがいると、いびりにも幅が出ますね。
さすがは暖かさと柔らかさを名に持つ者達……!
平民出身でダンスに縁のなかったノマールも、無事ひと通り踊れるようになりました。
次話もよろしくお願いいたします。