第七話 お菓子いびり
このいびりを作ったのは誰だあっ!!と言われそうなキュアリィのノマールいびり。
今回はノマールから贈られた手作りお菓子に目をつけました。
果たしてどんないびりが誕生するのか……。
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日は手作りのお菓子を贈られたので、そういう事は控えるようにお話しましたわ」
「……ほう」
ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。
(平民の必死のご機嫌取りだったでしょうに、それを一蹴するとは……。私の卒業後、この学園を平民の侵略から守れるのは、この娘かもしれないわね……)
「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時間は遡って昼食の時間。
お弁当を食べ終わったのを見計らって、ノマールが小さな袋を差し出しました。
「キュアリィ様、今日は、その、お、お菓子を作って参りました」
「まぁ! ノマールさんがお作りになったの!?」
「はい、あの、お口に合えば、なのですが……」
「もちろんいただきますわ」
ノマールが緊張の面持ちで見つめる中、キュアリィは満月のようなクッキーを手に取りました。
さくり。ほろり。
軽い歯応えと共に砕けたクッキーは、甘い味と香りを花開かせながらキュアリィの口の中を満たします。
「まぁ! 何て美味しいのでしょう!」
「キュアリィ様、美味しそうなものを召し上がられてますわね」
「どちらのお店で買われましたの?」
キュアリィの感嘆に、同じクラスのウォミーとソフィティアが集まってきました。
「ノマールさんの手作りでしてよ。お店のものより美味しいですの。ノマールさん、ウォミーさんとソフィティアさんにもお分けしてよろしいかしら?」
「は、はい!」
「ありがとうございます。いただきますわ」
「いただきます。……まぁ! 何て軽くて美味しいのかしら!」
「えぇ! えぇ! 我が家の職人が作るクッキーはどっしり食べ応えがあって、一つ二つで結構となりますけど、これでしたらいくらでも食べられそうですね!」
「仰る通りですわ!」
三人から絶賛されて、ノマールは恥ずかしそうに、しかしとても嬉しそうに微笑みました。
「ありがとうございます! でしたら毎日でもお作りしてお待ちいたしますわ!」
「えぇ? よろしいのですか!?」
「嬉しいですわ!」
「これが毎日食べられたら、学園がもっと楽しくなりますわ!」
盛り上がる三人。
しかしウォミーがふと我に返りました。
「あの、でもこれをお作りになるのは大変なのでは……?」
「え、あ、そ、そんなには……」
ソフィティアも心配そうな表情を浮かべます。
「ノマールさんは、身の回りの事を全て自分でされているのですよね。その上毎日お菓子を作るとなると、お勉強に影響が出てしまうのでは……」
「だ、大丈夫です! その分夜に勉強をしますから……」
「いけませんわ!」
キュアリィが無理をしようとするノマールを制します。
「このお菓子はとても美味しいですわ。毎日でも食べたいくらい。でもそれでお友達に無理をさせては、心から喜んで食べられませんわ」
「キュアリィ様……」
「ですからお休みの日に予定のない時でしたり、お勉強の息抜きなどで作ってくださったら嬉しいですわ」
「……はいっ! ありがとうございます!」
自分を思う三人の言葉に、涙を浮かべながら微笑むノマール。
それを見ながらキュアリィは胸を撫で下ろしました。
(過ちを正すいびりを知らないままでしたら、ノマールさんに無理を強いてしまうところでした……。やはりいびり続けていて良かったですわ!)
読了ありがとうございます。
貴族の家では、バターや砂糖をふんだんに使うので、しっかりした仕上がりになります。
ノマールはあまりお金をかけられないので、シンプルな材料で作った結果、あっさりした仕上がりになりました。
平民の料理、貴族に有効説。
次話もよろしくお願いいたします。