第六話 香水いびり
いびりとはいったい…… うごごご!!となりそうなキュアリィのノマールいびり。
今回はノマールの香水への反応に目をつけました。
果たしてどんないびりが顕現するのか……。
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日は香水を贈って差し上げました」
「香水……?」
ヴィリアンヌは一瞬怪訝な表情をしましたが、すぐに納得しました。
(自分の匂いとは自分ではわからないもの……。そこに香水を贈る事で『貴女の匂いは不快だ』と暗に伝えるなんて……。この娘は敵に回さない方が良さそうね……)
「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時間は遡って昼食の時間。
キュアリィとノマールは隣に座り、お弁当のおかずを交換しながら食事をしていました。
その時窓から爽やかな風が吹き込み、キュアリィの髪を撫でていきました。
「わ、キュアリィ様、いい香りがいたしますね……」
「え? あ、今日はお天気が良くて暑くなりそうでしたので、香水を付けて来ましたの」
「これが香水の香り……。素敵な香りですね……」
うっとりするノマールに、キュアリィはある事に気が付きました。
「もしかしてノマールさん、香水を付けた事がないのかしら?」
「は、はい、あの、高級品ですので……。なのでこういう日の午後は、なるべく人に近付かないようにしています……」
「いけませんわ! それではこれから暑くなる季節、どんどん人から遠ざかってしまうではありませんか! ならば私の使い古しで失礼かもしれませんが……」
言いながらキュアリィは香水の小瓶を渡しました。
「この香水、使っていただけないかしら」
「え、でもそんな……」
「お気になさらないで。うちにはまだ同じものがありますし、こんな事でノマールさんに避けられるのは悲しいですわ」
「……! あ、ありがとうございます……! 大事に使います……」
キュアリィに教わりながら香水を付けると、柑橘系の爽やかな香りが広がりました。
「この香水、すっきりする良い香りです……」
「『太陽の季節』という、夏の果物の香りを混ぜたものだそうですわ。……うん、これで大丈夫ですわね」
「はい! 私、暑い季節があまり好きではなかったのですが、キュアリィ様のお陰で好きになれそうです!」
「まぁ……!」
頬を押さえながら、キュアリィは込み上げる嬉しさを噛み締めました。
(いびらなければ、ノマールさんは一人悩みを抱えたままでしたわ……。やはり今後も積極的にいびりましょう!)
読了ありがとうございます。
ヴィリアンヌの曲解を考えるのが楽しくなってきました。
悪辣なキャラのつもりがどんどんポンコツになっていきますね……。
だ が そ れ が い い 。
同じように考えてくださる方がいらっしゃいましたら、今後ともよろしくお願いいたします。