第四話 お弁当いびり
いびるという言葉の意味がわからなくなる、キュアリィのノマールいびり。
今回はノマールのお弁当に目をつけました。
果たしてどんないびりが降臨するのか……。
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日は、昨日昼食に持ってきたお弁当があまりに質素でしたので、朝我が家に呼び出して、厨房でお弁当作りをさせましたわ」
「ほう、成程……」
ヴィリアンヌは満足げに頷きました。
(厨房に入るなんて使用人のような扱い、さぞ屈辱だった事でしょう……。更には食材の差を見せつけて、身分の差を感じさせる……。これなら学園から去るのも時間の問題ね……)
「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時間は遡ってその日の朝。
「お、おはようございますキュアリィ様。今朝はお招きくださって、ありがとうございます……」
「朝早くからごめんなさい。でもノマールさんのあのお食事はどうしても見逃せなかったんですもの」
「すみません……、お恥ずかしい食事を……」
「あぁ違いますのよ。お肉やお魚を食べない生活だと身体がぼろぼろになると、うちの料理長がしつこく言っているから気になってしまいまして……」
言いながらキュアリィは、ノマールを厨房に案内します。
「食材は言われた通り、うちで使ったものの余りを用意させましたから、好きに使ってくださいね」
「わがままを言って申し訳ありません……」
「良いのですわ。もらってばかりでは気が引けるというのもわかりますから。でもこんなばらばらの食材でお料理できますの?」
「はい。家では無駄なく料理をするのが当たり前でしたから」
そう言うと、ノマールは手際良く調理を始めました。
じきに厨房には良い匂いが漂い始めました。
「まぁ、美味しそうなお料理ね。炒め物に、こちらは煮物かしら? サラダもあって素敵ねぇ」
「ありがとうございます! ……あの、よろしければですけど、お味見いかがですか……?」
「よろしいの? ではいただきますわ」
言われて一口口にしたキュアリィは驚きました。
日頃は素材の味を生かす薄い味付けしか食べた事がなかったので、平民のいわゆるジャンクな味付けには慣れていなかったからです。
「これは美味しいですわ! ノマールさんはお料理がお上手なのね」
「お口に合って良かったです」
「……あの、もしよろしければですけど、私にもこの料理を教えてくださらないかしら?」
「え、でもそれは……」
「お願いしますわ。今度両親にも振る舞ってみたいんですの」
「わ、わかりました。では次のお休みの日に……」
「ありがとうございます!」
新たな約束に喜びながら、キュアリィはヴィリアンヌに感謝しました。
(いびるという事は、私にも学びがあるのですね! ありがとうございますヴィリアンヌ様!)
読了ありがとうございます。
ちなみにノマールの昼食は、野菜を挟んだだけのパンでした。
たんぱく質は大事。
次話もよろしくお願いいたします。