第三話 服いびり
いびるようでいびってない、キュアリィのノマールいびり。
今回はノマールの服に目をつけました。
果たしてどんないびりが炸裂するのか……。
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日は同じ服を着ているのはよろしくないと教えて差し上げました」
「ほう、成程……」
ヴィリアンヌは満足げに頷きました。
(この学園の格に合う服は高価。指摘されたところで平民にはおいそれと買えはしない。そこを指摘されたら、学園にいづらくなるわ。……良い手ね)
「よくやりました。これからもその調子でどんどんいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時間は遡ってその日の午後。
「ノマールさん、この後図書館で勉強をするのだけど、ノマールさんもいかがかしら?」
「あ、お、お誘いありがとうございますキュアリィ様。でも私、放課後はすぐ洗濯をしなくてはならなくて……」
そこでキュアリィは、ノマールがいつも同じ服という事に気が付きました。
「あら、ノマールさん。貴女まさか毎日同じ服を洗濯なさって着ているの?」
「……はい、洗い替えがないので……」
「まぁ! それで乾くのかしら?」
「生地が薄いので、朝までには何とか……」
「いけませんわ!」
キュアリィは勢い込んで言いました。
「勉強以外に毎日こんな事をしていたら、倒れてしまいますわ!」
「ご、ご心配ありがとうございます。でも替えの服がないので……」
「私のお古でよろしければ十着ほど差し上げますわ! そうすれば週末のお休みにゆっくり洗濯できますでしょう?」
「そ、そんな……! 申し訳ないです!」
「お気になさらないで。クラスメイトですもの。助け合うのが当たり前ですわ」
「キュアリィ様……!」
使用人になるべく新しいものから十着、ノマールの部屋に届けるよう指示を出しながら、キュアリィは満足そうに微笑みました。
(あぁ、いびるって何て心があたたかくなるのかしら! これからもどんどんいびらなくては!)
読了ありがとうございます。
ヴィリアンヌ様は学年が違うので、ノマールの服が増えた事には気が付きません。
ノマールは毎日の洗濯から解放されるだけじゃなく、服を選ぶ楽しさも味わえて大喜びです。
ちなみに登場人物の名前ですが、キュアリィは『癒し』のcureから。
ヴィリアンヌは『悪役』のVillainから。
ノマールは『普通』のnormalから。
ド直球です。
次話もよろしくお願いいたします。