第二十一話 演劇いびり
いびられもせず一人前になったヤツがどこにいるものか!と両手を広げながら主張されそうな、キュアリィのノマールいびり。
今回は、文化祭の出し物にまつわるやり取りに目をつけました。
果たしてどんないびりの幕が上がるのか?
どうぞお楽しみください。
学園が終わる夕方。
キュアリィはヴィリアンヌの部屋を訪れました。
「失礼いたしますヴィリアンヌ様」
「キュアリィ。今日はどんな風にあの平民をいびったのか、報告なさい」
「はいっ」
ヴィリアンヌの言葉に、キュアリィは元気よく答えます。
「今日はホームルームで秋の文化祭での出し物を演劇に決めたのですが、遠慮するノマールさんを主役に推薦しました!」
「……ほう」
ヴィリアンヌは満足そうに頷きました。
(全校生徒の前で辱め、いられなくしようという算段ね。ふふふ、見たいわ! 私もその醜態を!)
「よくやりました。文化祭での成功に向けて、容赦なくいびりなさい」
「かしこまりました」
キュアリィは一礼をして、部屋を出て行きました。
時は遡ってその日のホームルーム。
各クラスでの出し物で、キュアリィ達のクラスは演劇と決まりました。
「何のお話にしましょうか?」
「この思い合うが故にすれ違う、二人の剣士の悲恋の物語はいかがでしょう?」
「いえいえ! 死後も夫を想い、幽霊として新たな恋を後押しする話が良いと思いますわ!」
「みなさんが知っている御伽話をアレンジすれば親しみやすいのでは?」
様々な意見が飛び交う中、ノマールがおずおずと手を上げました。
「……あの、私、書いてみたい、です……」
「!」
これまで遠慮しかしてこなかったノマールの言葉に、キュアリィが、ウォミーが、ソフィティアが、飛び上がらんばかりに喜びました。
「どんなお話をお考えですの?」
「……引っ込み思案で、勉強しかできなかった女の子が、優しい友達に触れて幸せになる、そんな友情のお話です……」
「〜〜〜っ!」
感極まる三人。
自惚れではなく、ノマールと自分達の事だと分かったからです。
クラスから沸き起こる拍手がなければ、号泣していたかもしれません。
「では決まりですわね! ノマールさん、よろしくお願いいたします!」
「あ、ありがとうございます! 頑張ります!」
「! そうですわ! でしたら主役の女の子もノマールさんがやるべきでは?」
「え、そ、そんな、それは、ちょっと……」
「いかがですか皆さん!」
キュアリィの言葉に、先程を上回る拍手が巻き起こります。
ノマールだけがその歓迎の渦の中で戸惑っていました。
「あ、あの、私、お芝居なんて……」
「大丈夫ですわ。ノマールさんが思うまま振る舞えば、それが正解ですわ! だってこれはノマールさんの物語なんですもの!」
「……! はい! では皆さん! よろしくお願いいたします!」
三度拍手に包まれるノマールを見て、キュアリィは高揚を抑えられませんでした。
(この文化祭はきっと、ノマールさんにとって大きな変化のきっかけになりますわ! つまりいびりの総仕上げ! ヴィリアンヌ様にも見ていただきたいですわ!)
読了ありがとうございます!
文化祭の当日、ヴィリアンヌはキュアリィのいびりの成果を見る事になります。
想像と真逆の結末に、ヴィリアンヌは激怒。
キュアリィ、ノマール、二人の運命は!?
などと煽りましたが、不安に思ってる方はいないと思います。
徹頭徹尾ハピハピな物語、最後までお楽しみください。